Study of PARKER’S “BEBOP”

チャーリー・パーカーに学ぶ ビバップ奏法研究

パーカーに学ぶモチーフの発展

パーカーのプレイには抜群の反射神経を感じますが、瞬間的にモチーフを掴み取り、それを次々と発展させていく柔軟な思考と それを即座に表現することのできる技術には本当に驚かされます。まるでスリル満点の短編小節を読んでいるかのごとくです。(解説:池田 篤)

早速、簡単な例を挙げてみましょう。同じ音形をコード・チェンジ(C6→F7)に沿って一音だけ(E→E♭)入れ替えています。

01『KoKo』(from「On Savoy」take5) 1コーラス目 5〜8小節目 (0’29”)

次に同曲の中からもう少し高度なものを挙げてみましょう。単なるコードトーンの下降(♭7-5-♭3-1)をモチーフとして、見事に音楽を広げていっています。

02『KoKo』(from「On Savoy」take5) 2コーラス目 33〜40小節目(ブリッジの1〜8小節目)(1’41”)

①→②→③のように、最初に提示された型①を守りそれぞれのコードの構成音に合わせて変化させていきます。

パーカーの洒落ているところは、この4小節+4小節が、ただのフレーズの繰り返しにならないように、7〜8小節目(F♯M7)でそれまでのモチーフを捨て、異なるフレーズに繋いでいるところです。1コーラス目の同じ箇所でも同様な方法をとっています。

韻を踏んだセリフのように、モチーフが見事に展開されていきます。

03『Groovin’ High』(from「The Complete Savoy Live Recording」) 2コーラス目 1〜9小節目 (1’30”)

ここでは、以下のリズムをモチーフとして、3パターンのフレーズが連なっています。

それぞれのフレーズの始めと終わりをわずかに変化させているところがまたセンスの光るところです。そしてここでもモチーフを3回繰り返した後は、まるで別のフレーズへと話を変えています。音楽を先へ繋ぐために、一つの話題で完結させず、次々と新しい言葉を提示していく技術と言えましょう。

最後に究極的なモチーフの発展例です。まるで鼻歌でも歌っているかのような自然体で自由で且つ緻密な音楽の見事さは、まるで鳥の舞を眺めているかのごとくです。

04『Out Of Nowhere』(from「On Dial」takeB/「Bird Symbols」)

チャーリー・パーカーの残した様々な音源の数々は、これからもジャズという音楽の根底を支えていってくれる偉大なる遺産と言えましょう。このようなフレーズがふと楽器から出てきた時、私は天に向かってこう思いながら吹いています。「パーカーさん、ありがとう!」

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