Study of PARKER’S “BEBOP”

チャーリー・パーカーに学ぶ ビバップ奏法研究

チャーリー・パーカー発! 定番フレーズ

チャーリー・パーカーの定番フレーズを集めるにあたり、今回はその題材として比較的入手しやすい、Savoy、Dial、Verveというレーベルから 発表されたアルバムを中心に選曲をしました。そしてあえて、なるべく少ない曲目の中で話を進めて行くことにします。 たった一曲の短いソロの中からでも、たくさんのことを学ぶことができるのです。(解説:池田 篤)

01『Billie’s Bounce』(from「On Savoy」take5) 2コーラス目 9〜11小節目(1’11”) 

Key of D(in E♭)のⅡm7→Ⅴ7→Ⅰ、つまりEm7→A7→DM7のコード進行時に使用される、最も有名なパーカー・フレーズです。他のキーの曲でも部分的にEm7→A7が出て来る時にはさりげなく顔を出します。

このフレーズの他の曲での引用は挙げればきりがありません。

ex1.『Night in Tunisia』(from「Jazz at Massey Hall」)テーマ冒頭から21〜23小節目(ブリッジの5〜7小節目)(0’47”)

ex2.『Embraceable You』(from「On Dial」takeA/「Bird Symbols」) イントロ後、コーラス頭から16〜17小節目 (1’09”)

ex3.『Kim』(from「Now’s the Time」Alternate take) 21〜23小節目(ブリッジの4〜6小節目)(0’20”)

ex4.『Lester Leaps in』(from「Bird is Free」/「Live at the Rockland Palace」)6コーラス目(テーマ含む)の21〜22小節目(ブリッジの5〜6小節目)(2’18”)

ex5.『Ornithology』(from「Bird at St.Nick’s」)ソロ1コーラス目の3〜4小節目 (0’37”)

ex6.『Bird Get The Worm』(from「On Savoy」)1コーラス目の3〜6小節目 (0’02”)

ex1〜6はEm7→A7のコード進行内に収まっていますが、ex7については、フレーズがA7とAm7にまたがっています。

ex7.『KoKo』(from「On Savoy」) 2コーラス目 46〜47小節目(ブリッジの14〜15小節目)(1’00”)

 

1945年、サヴォイ・レーベルでの初レコーディングで残された最も有名なブルースの出だしのフレーズです。この時の録音では楽器の調子が悪くリードミスに悩まされ5回もテイクを重ねていますが、それらのテイクどれもが独立した素晴らしい内容となっています。録音の途中でタクシーを走らせ楽器屋に行きアルトの修理をして心機一転挑んだ結果、この歴史的なtake5冒頭の閃きのフレーズが生まれたようです。

02『Billie’s Bounce』(from「On Savoy」take5) 1コーラス目 1〜3小節目 (0’42”)

その8年後の1953年、ヴァーヴ・レーベルのレコーディングでは、同じくブルースの『Now’s The Time』冒頭部分で、その2小節そっくりそのまま引用しています。彼らしい品のあるユーモアのひとつです。

Now’s the Time』(from「Now’s The Time」) 1コーラス目 1〜3小節目 (0’34”)

形式としてのブルースと同じように、ジャズにはリズム・チェンジという頻繁に演奏される形式があります。これはジョージ・ガーシュウィン作曲の『I Got Rhythm』のコード進行をもとにしたAABA形式32小節からなるものです。次のフレーズは、パーカーの指癖になっているような2つのリック①と②を組み合わせたものです。

03『Kim』(from「Now’s the Time」Alternate take) 13〜15小節目 (0’15”)

※この曲にはテーマが存在しません。冒頭からソロ(インプロヴィゼーション)が始まります。

パーカーが残したリズム・チェンジの曲は多数存在しますので、同じようなフレーズが随所に顔を出すと思います。パーカー自身の作曲したリズム・チェンジの代表曲としては、『Anthropology』や『Dexterity』などがあります。

リズム・チェンジ以外の曲でも、『Cherokee』のコード進行を借用した『Ko Ko』などに、①と同じフレーズが出てきます。

 

ex1.『KoKo』(from「On Savoy」) 1コーラス目15〜16小節目 (0’36”)

パーカー自身の作品の中でも名曲中の名曲とされる『Confirmation』で、共通するモチーフを持つ二つのフレーズを聴いてみましょう。フレーズを始める位置により譜割りが変化します。(※1 共通する箇所)

04『Confirmation』(from「Now’s the Time」) まず、1コーラス目の21〜23小節目(ブリッジの5〜7小節目)(1’08”)

次に、2コーラス目の21〜24小節目(ブリッジの5〜8小節目)(1’45”)

L :左手High D keyを使います。音程は低めにとり、ほんの少し下に向けてベンドします。それに伴いHigh D keyもわずかに開きます。うまく感じが掴めない場合は、※2のように思っても良いでしょう。ちょっと気だるいような、このキー(この3小節間だけ部分的にB♭メジャーに転調していると考える)だからこそ表現できる独特なフレーズです。

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