サックス記事 音楽活動75周年を彩る ミディアム〜バラードに挑んだ 新作が完成!
  サックス記事 音楽活動75周年を彩る ミディアム〜バラードに挑んだ 新作が完成!
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THE SAX vol.125 Cover Story│渡辺貞夫

音楽活動75周年を彩る ミディアム〜バラードに挑んだ 新作が完成!

ARTIST

日本が世界に誇るジャズ巨人として前人未到の歩みを続ける渡辺貞夫が、今年で音楽生活75周年を迎えた。そのアニバーサリーイヤーに届けられたのが、スタジオ録音としては2年ぶりとなるニューアルバム「BUT BEAUTIFUL」だ。本作の題材はスタンダードと自身のオリジナルからチョイスされたミディアム〜バラード。ワン・アンド・オンリーの個性的なアルトサックスの音色と卓越した歌心を存分に堪能できる会心の仕上がりとなっている。新作完成の手応えを巨匠がいつもの自然体で率直に語ってくれた。
インタビュー・文:佐藤英輔/写真:井村重人(アーニーズ・スタジオ)/取材協力:ビクターエンタテインメント株式会社

前人未到の域に自然体で無理なく達しつつある巨匠の待望スタジオ新作

渡辺貞夫の新作が順調にリリースされる。表題は「BUT BEAUTIFUL」といい、昨年のツアー終了後の12月に、そのインターナショナルなバンドの面々たちとレコーディングされたスタジオ録音作だ。1ホーンのカルテットにて、バラード系の楽曲を悠然と奏でる。新作は端的に言うと、そんな説明ができるだろうか。しっとりしたスタンダードや自作曲を材料に歌心と広がりある吹き口を披露する様は、威風堂々にして悠然。そのブロウは、聴く者のなかにすうっと入り覚醒する。そして、それこそはジャズやアルトサックスの精髄を知り尽くした、選ばれた熟達者のなせる技と思わせる。全11曲、無駄な部分を削ぎ落としているためもあり各曲は長くなく、このアルバムはジャズの入門盤にも適していると、ぼくは判断した。ときに、今世界を見渡しても90代を過ぎてもばりばりレコーディングとツアーを謳歌している人は皆無。彼はまさに、前人未到の域に無理なく達しつつある。それを目の当たりにできるということは、なんと幸福なことか。新作「BUT BEAUTIFUL」について、率直で正直でもある自然体の大家に話を聞いた。

新作のジャケット・カヴァーの砂漠の写真は貞夫さんの写真ですよね。
渡辺
そう、サハラの写真。「BUT BEAUTIFUL」だから最初は、ホワイト・ジャケットにしようと思ったんです、ビートルズみたいな。でも、それじゃちょっと色気がなさすぎるなということで写真を使ったんだけど、タイトルは控えめに真ん中よりもちょっと下に入れました。
何年前ぐらいの写真ですか?
渡辺
何年前かな? 80年代だよね。
いい写真ですよねえ。
渡辺
これは、(あのとき撮った写真の)ほんの一部分だから。1ヶ月間、サハラを旅したんです。コンサートを五反田でやったときに、横田紀一郎さん(冒険家、ジャーナリスト)がコンサートに来てくれて、彼に砂漠を知らなかったらアフリカを知ってることになりませんよって言われたんです。彼は、(ラリーの)パリ・ダカールを8回チャレンジした人。それで、当時は肝臓をやって病み上がりだったんだけど、じゃあ行ってやろうじゃないかとなったわけです。
その旅には、当然サックスも持っていったんですよね。
渡辺
サックスももちろん持っていきました。だって、その後そのままロサンゼルスで日産のコマーシャル撮影をやりましたから。それで、「マイシャ」(1985年)というアルバムを作ったんですよね。
黒いヴェールをまとった現地の女性を撮った貞夫さんの写真がジャケット・カヴァーを飾ったアルバムですね(『デザート・ライド』なんていう曲も収録されている)。では、さっそく「BUT BEAUTIFUL」のことをお聞きしたと思います。
渡辺
ええ。ご感想はどうですか?
僕はいい感じで聞けました。アコースティックなジャズなんですけど優しくとっつきやすくもありますし、ジャズの知らない人にも推したいなとぼくは思いました。
渡辺
好みを聞かせて。いいか悪いか。
好き。
渡辺
あ、ほんと。ありがとう。
実は今作を聞いてインタビューをするに際して思ったのは、年齢のことを絡めて質問するのはやめようと思ったんです。今、93歳じゃないですか。ところが、成熟とかは存分にあるものの、闊達にジャズ演奏家であることをまっとうしていて、年齢のことをとっかかりに新作のことを尋ねるのは失礼にあたると思ってしまったんです。やはり、年齢のことを尋ねる人も多いと思いますし。「BUT BEAUTIFUL」は滋味ある風雅なジャズとして聴くに値する。それでいいじゃないかと思ったんです。
渡辺
いやね、このレコーディングについてはちょっと経緯があるんですよ。ツアーが終わって1日オフがあって、その翌日にこのレコーディングがあったんです。そのオフの日にベン(・ウィリアムズ Bass)とラッセル(・フェランテ Pf)と(竹村 )一哲(Ds)を誘って、恵比寿のレストランで食事をしようとしたんです。5時半の約束に30分あるので、自宅からゆっくり歩いて行ってしまったんです。広尾までだったらいつも散歩していて、広尾の交差点を曲がれば恵比寿だなと思いましたし。その後、暗くなって時計見たら15分前ぐらいになってきて、それで早めに歩き出したら止まんなくなっちゃったのね。
どんどんどんどん前のめりになって、ドーンと転んじゃった。それで、左の手から血が出てくるし、それであばらにもひびが入っちゃって。通りすがりの青年が助けてくれて、恵比寿の近くまで連れて行ってくれました。
とはいえ、レコーディングは予定通りなさったんですよね。
渡辺
そんなことがあって、レコーディングをしたんです。そしたら、やっぱりあばらが痛いんですよ。
あばらは折れても処方のしようがなく、時間に解決してもらうしかないんですよね。
渡辺
そうなんです。でも、その日にレコーディングやらないとみんな帰っちゃうからね。それでやったんだけど、後になるとやっぱり不本意なんです。それでリズムだけを残して1ヶ月後にもう一回録り直したんだけど、なんか不自然なんだ。そして、逆に前の録音に愛着が湧いてきた。それでそのまんま、出しました。

 

 

次ページにインタビュー続く
・スタンダードのバラードもテンポを変えて新たな解釈でプレイ
・C.ポーターの名曲はシンプルにメロディをストレートに歌うことにトライ
・楽な楽器やセッティングには走らず手応えを求める姿勢は健在

CD information
 


「BUT BEAUTIFUL」
渡辺貞夫

【VICJ-61798】¥3,520(税込) ビクターエンタテインメント
[演奏]渡辺貞夫(As)、ラッセル・フェランテ(Pf)、ベン・ウィリアムス(Bass)、竹村一哲(Ds)
[曲目]BUT BEAUTIFUL、EVERYTIME WE SAY GOODBYE、I’LL BE AROUND、REMEMBRANCE、SIMPATICO、MAIS UM ADEUS、FIREFLY、PAGLIACCI、YOU BETTER GO NOW、TILL WE MEET AGAIN、POR TODA A MINHA VIDA

Live Information

Sadao Watanabe Quartet 2026〜INTO TOMORROW〜
6月3日(水)東京 たましんRISURUホール 大ホール
6月5日(金)東京 第一生命ホール
6月6日(土)神奈川 鎌倉芸術館 小ホール
6月8日(月)大阪 Billboard Live OSAKA
6月9日(火)大阪 Billboard Live OSAKA
8月9日(日)埼玉 あげお富士住建ホール 大ホール
8月11日(火)静岡 沼津市民文化センター 大ホール
8月23日(日)千葉 東金文化会館 大ホール
8月26日(水)北海道 旭川市公会堂
8月27日(木)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
8月29日(土)北海道 NiCC芸術文化ホール(北見芸術文化ホール)音楽ホール
9月22日(火)山口 ドリームシップ 海のホール(下関市生涯学習プラザ)
9月23日(水)広島 三原市芸術文化センター ポポロ
9月26日(土)静岡 磐田市民文化会館 かたりあ

Sadao Watanabe Group 2026
5月30日(土)東京 日比谷音楽祭2026

Sadao Watanabe 〜BRAZILIAN LOUNGE〜
7月4日(土)埼玉 サンシティホール
7月5日(日)神奈川 相模原市民会館 ホール
7月7日(火)東京 Blue Note Tokyo
7月8日(水)東京 Blue Note Tokyo
7月11日(土)長野 八ヶ岳高原音楽堂
7月12日(日)長野 八ヶ岳高原音楽堂

 
登場するアーティスト
画像

渡辺貞夫
Sadao Watanabe

1933年宇都宮生まれ。高校卒業後に上京、秋吉敏子のコージー・カルテットをはじめ数々のバンドに参加。バークリー音楽大学への留学等を経て、日本を代表するトップミュージシャンとして、ジャズの枠に留まらない独自のスタイルで世界を舞台に活躍。2005年「愛知万博」では世界中から集まった子どもたち400人と、国境や文化を越えた歌とリズムの共演という長年の夢を実現させ、それらの活動は海外へ広がる。2016年4月、オバマ元アメリカ大統領夫妻がホストとなり、ホワイトハウスで開催された「International Jazz Day 2016」に日本を代表して参加。2019年3月、ラッセル・フェランテ(Pf)、ベン・ウィリアムス(Bass)、竹村一哲(Ds)を率い「Sadao Watanabe Quartet」でブルーノートNYに出演。連日満員の聴衆を魅了する。同年、スティーヴ・ガッド(Ds)、ジョン・パティトゥッチ(Bass)、ラッセル・フェランテ(Pf)と共に演奏した模様を収録したライブ盤「SADAO 2019 ライヴ・アット・ブルーノート・トーキョー」をリリースし、CDショップ大賞ジャズ賞(特別賞)を受賞。2020年12月、自身の選曲による2枚組の70周年記念コンピレーション・アルバム「ルック・フォー・ザ・ライト」をリリース。2024年、スタジオ・アルバム「PEACE」を発表、「MUSIC AWARD JAPAN 2025 Best Jazz Album」にノミネートされた。2025年、ライブ・レコーディング作「HOPE FOR TOMORROWをリリース。2026年に音楽活動75周年を迎えて最新スタジオ・レコーディング作「BUT BEAUTIFUL」を発表する。国内のみならず、海外に於いても精力的に演奏活動を行う生涯現役プレイヤーのその姿は、世界中の老若男女に勇気と感動を与えている。

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