サックス記事 vol.3「スガワ流 リードの育て方」
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THE SAX vol.25(2007年9月25日発刊)

vol.3「スガワ流 リードの育て方」

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THE SAX vol.23から全50回に渡って連載された、須川展也の「Shall We SAX!」がSAX ONLINEで全文掲載!
第一線で活躍を続ける須川展也のトークを毎週更新します!

最近のスガワ

THE SAX 読者の皆さん、こんにちは。

今年の夏は猛暑日続きでしたね! 皆さんそれぞれの夏を楽しまれたことと思います。僕はというと、8月中旬に金聖響氏指揮 東京交響楽団との共演で、オペラアリアを中心に歌もののレコーディングをしました。泣ける曲あり、テクニカルな曲あり、盛りだくさんの内容で、気持ちよく演奏できました。このアルバムの発売は年明けごろになりそうなので、内容など詳しくはまたこのページでごも紹介しますね。

今年はあと2回、海外でのレコーディングを控えています。例年にくらべてコンサートの回数を押さえ、僕なりの新しいステップを世界に向けて発信するための準備として、様々な企画を立ててレコーディングに取り組んでいるんです。言ってみれば“メイキング・スガワ”の年。この“種まき期間”が終われば、皆さんに新しいスガワのステージをご紹介していけると思います。楽しみにしていてくださいね。

もちろん、ソロ、トルヴェール・クヮルテット、東京佼成ウインドオーケストラなど、レギュラーのコンサートもたくさんありますので、ぜひ聴きにきてください!

 

 

お悩み相談 Play編

スガワ流リードの育て方、ご紹介

連載第3回目にして早くも、リードの話題をお届けします。やはり、サックス愛好家にとって一番の悩みどころなんですね。この件に関するたくさんのご要望、お悩み相談、ありがとうございました。

リードの選び方は、消去法でいくしかないと思います。良く鳴る、ノイズが少ない、反応が良い、などのことがバランス良くそろっているものが望ましいですね。鳴りのことだけを考えて、少々反応が悪くても使えるリードに分類してしまったとしたら、それで曲を吹くとどういう結果になるかお判りですよね。反対も言えます。反応は良くても音色のバリエーションが少なければ直接音楽に響いてきます。

また、どういう曲を吹くかによって、選ぶ基準は変わってくるかもしれません。綺麗なメロディをたくさん吹かなければならないときは、比較的ノイズが少なくて鳴りのいいものだったら、多少反応が悪くても対応できますが、ピアニッシモを多用するときは反応の良さを優先したほうが良いでしょう。また複雑なリズムやタンギングが多くなれば音の立ち上がりがいいものを、というような感じ。このように選ぶ基準は、ある程度自分でその都度設定していけばいいと思います。

すべてを兼ね備えたリードに出会うのは大変なことです。僕もそんな優等生に出会った経験はありません! なので、いつも満足度80%くらいのリードで吹いています。リードもイキモノですから日々変化するし、自分の状態だってそうです。今日良かったものが明日良いとは限らない、不安定な世界なんですね。それを踏まえて選び、そして育てていかなければなりません。そう、リードは育てるものなんです。

 

では、僕のやり方をご紹介しましょう。リードは、本番などの目的日の3日前くらいから育てていくのがいいと思います。例えば、コンサートを控えた9月25日からリードを育て始めるとします。一気に2箱くらいあけて、吹く前にまず直接リードに鉛筆で「9/25-1」から「9/25-20」まで番号を打ち、順番に吹いていって、受けたフィーリングをメモしていきます。硬いなと感じたらH(ハード)、中間だと思うとM(ミディアム)、やわらかいと感じたらS(ソフト)というマークを使います。硬いけど反応がいいときはMH、中庸なんだけどちょっと柔らかいほうかなと思ったらMSというような感じで。リードはだいたい、吹いているうちに抵抗が出てくることが多く、ある程度のポイントを越えると急にダメになってしまいます。なので僕は、吹いた瞬間にMSS(ミディアムソフトよりももうちょっとソフト)くらいのものからスタートして、リードの湿度を良い状態でキープできる専用のケース(商品名:リードヴァイタライザー)に保存して日々少しずつ吹いていき、本番で使えるリードを育てています。1枚だけを選ぶというのではなく、何枚か候補を見つけてとっかえひっかえ使いながら育てていくんです。ターゲットは本番ですから、気圧・湿度などによって同じリードでも重く感じたり軽く感じたりするし、自分の体調もあるから、何枚かを選んでおく必要があるんです。

これはゆとりのある時の理想論で、僕の場合、毎日本番が続いたりすると、リードを育てるのが間に合わないことがあり、当日箱を開けて全部吹いてみた中から一枚選んですぐに使うこともしばしば。こうするとリード側の負担も相当なものなので、いきなり水分を含んだことで、その日限りで力尽きてしまったかのようになってしまいます。普通はそこでダメになったと諦めてしまうんですが、ここで登場するのが僕の「リード即席復活術」。小さなドライヤーでリードを乾かすんです! 湿ったリードをすぐに乾かすと、育て始めた2日目のような感じになるんですよ。もちろん本当は、自然に水分を含ませて、乾かして……の繰り返しがいいと思います。でも僕はこの「リード即席復活術」を見出したおかげで、良い状態が自分でわかってくるようになりました。以前よりもリードの消費量が減ったのは、リードヴァイタライザーとドライヤーの組み合わせで、リードにとっての良い湿度を自分で作り出せるようになったからだと思います。

この他、“リードのカカト部分”を細かいヤスリで少し削るなどの丸秘テクニックはありますが……これはあくまで僕のやり方で、万人にとっていいとは限りません。僕なりのリードとの接し方として、ご紹介しました。

リードに完璧なものはないと思って接することで、気持ちも楽になると思います。皆さんも、ナーバスになりすぎず、自分なりのリード管理・育成法を見つけてくださいね。

※このコーナーは、「THE SAX」で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

次回のテーマは「あこがれの気持ちを持って練習しよう」。
目標を持って練習することこそ、上達の近道。エチュードのレコーディングに注いだ須川さんの思いとは。お楽しみに!

登場するアーティスト
画像

須川展也
Nobuya Sugawa

日本が世界に誇るクラシカル・サクソフォン奏者。長きにわたり、現代の名だたる作曲家への委嘱を継続し、クラシカル・サクソフォンのレパートリーを開拓し続けている。国際的に広まっている楽曲が多くあり、クラシカル・サクソフォンの領域への貢献は計り知れない。国内外の著名オーケストラと多数共演。ウィーンのムジークフェラインをはじめ30ヶ国以上で公演やマスタークラスを行なう。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。02年NHK連続テレビ小説「さくら」テーマ曲演奏。最新CDは自身初の無伴奏作品となる「バッハ・シークェンス」(令和2年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞受賞)。そのほか数多くのCDを録音して世界に発信。東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスター(89〜10年)、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者(07〜20年)を歴任。マリナート・ウインズ、長野市芸術館、イイヅカブラスフェスティバル、東広島くららホールにて参加型吹奏楽のプロデュースを行ない地域と結びついた音楽体験を推進。東京藝大招聘教授、京都市立芸大客員教授。トルヴェール・クヮルテットのメンバー。
[使用楽器]ヤマハYAS-875EXG / ヤマハ YSS-875EXG
(2025.11)



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