サックス記事

Pianists Insight 第6回 成田良子

ピアニストの目線で、クラシックサックスを鋭く斬る!

このコーナーでは、クラシックサックス奏者の一番近い存在として、サックスの伴奏を長年務める名ピアニストたちに、クラシックサックス習得の秘訣をご教授いただいてきたが、今号で最終回を迎える。最後を飾ってくれたのは、伴奏はもちろん様々なジャンルで活躍している成田良子氏だ。
text:佐藤淳一 企画:Turn Around Artists Org.

視野を広げて、いろんなことに目を向けてほしい

――
クラシックサックスとの出会いを教えてください。
成田
大学生の時、同じ体育の授業を取っていた作曲科の方に新曲発表の演奏を頼まれたんです。その曲がサックスとピアノのための曲で、その時に同級生と共演したのがきっかけです。その同級生のコンクールや試験も伴奏するようになり、サックス科の人たちが集まる部屋に入り浸るようになって、友だちが増えて、いろんな方と演奏をするようになりました。
――
成田さんにはクラシックサックスはどのように映っていますか?
成田
一般の方はサックスと聞くとだいたい「ジャズですよね」と言われますけど、クラシックサックスも今は知名度が上がり、認知されてきたと思うんです。ただ、まだ楽器が新しいですし、レパートリーも近現代のものが多いので豊富とは言えませんが、純粋に表現の幅が広く、なんでもできる楽器だなと思います。可能性が無限大です。
――
クラシックのサックスの作品に対しての印象は?
成田
サックスは機動力が高いのでジャズ風だったり、フランス風だったり。さらに技術的なこともありますし、内容的にも表面的にも複雑になってきていると思いますね。
――
サックスでバッハなどアレンジしたものを吹くことについてはどう思われますか。
成田
どんどんやったらいいと思います。そのかわり安易にやるのではなく、ちゃんとそのスタイルを勉強してその時代の背景とか、同じ作曲家でも違う作品を聴いたり、きちんと勉強するならどんどん謙虚にやるべきだと思います。
――
ピアノだったら最初バッハをやって、順序を踏んでから大学に入るような教育がされているのかと思います。
成田
そこがちょっと違いますよね。吹奏楽から始めてもちろんエチュードもやるでしょうけど、大学に入ってすぐにわりと立派なコンチェルトとか本当に音が多い複雑な曲をやるのが、ちょっと一足飛びな気がしています。でも憧れもあるでしょうし、素敵な曲もたくさんあるから背伸びをしてやる一方で、すごく初心者向けの教育カリキュラムがあればもっと深い内容で演奏できるのに、表面的な音を並べるのに執着してそれがゴールのようになってしまいがちなのはちょっと危険かなと思います。
――
一流の演奏家と学生の演奏とで決定的な違いは何だと思われますか。
成田
やっぱり曲そのものの理解度ですかね。パート譜だけをさらうのではなく曲全体を捉えて、もちろんスコアでピアノがやっていることもきちんと理解して合わせる前に臨んでいるかどうか。あとはアンサンブルでもやっぱりタイミングを合わせるのではなくて、音楽感、音色感、それに相手への思いやり、気配りが瞬時に察知できるのはプロだと思いますね。
――
その違いを埋めていくにはどのような勉強や教育が必要ですか?
成田
経験もあると思います。私も最初はなかなか相手のことまで気を配る余裕はなかったんですけど、まずは自分のパート譜をしっかりと仕上げてそれで相手のことを思いやる余裕を作る。まず自分のことをしっかりやってスコアをきちんと読むということですね。あとは音源に頼らないことも大切です。
――
学生にとってはコンクールでいかに結果を出すかが課題になっていると思いますが、限られた時間の中でそういう音楽ができるようになるには?
成田
悲しいことに先天的なものもあります。努力だけでは何ともしがたい部分、センスというのもあるとは思います。それにプラスしてがむしゃらにさらうことも才能の一部であって、要領だけではなんともいかないので、ひたすら長時間さらう才能ですかね。
――
クラシックサックスが他のオーケストラの楽器と比べて秀でているところ、またはそうではないと感じるところは?
成田
企画力があるというか、何かコンサートをやろうと積極的にイベントなど事を起こすのが上手いかもしれないですね。これも大事なのですが、もっと職人気質のようにひたすら技術を磨くとか基礎的な部分のトレーニングをストイックにやることが欠けていると思うこともあります。フィーリングでやってしまうというか。そういうことにこだわる姿勢は、フルートとかクラリネットとかオーボエなどはわりと内にこもって職人気質でひたすら追求するキャラクターかもしれないですね。
――
最後に学生にメッセージをお願いします。
成田
サックスに魅せられて選んだのは素晴らしいことですし、魅力を感じることができたという感性自体が、とても人として潤いのあることだと思います。ストレスや挫折などでよく心が折れたなんて言う子もたくさんいますけど、それは当たり前のことですし、どんなスターだってそういうことの連続なので、それすらもやっていることの喜びとして捉えて、とにかくやめないで続けていってほしいです。あとは音楽以外の例えばスポーツとか他の芸術などからいろんなインスピレーションを受けて、そこから得ることがすごくヒントになると思います。音楽も譜面だけにとらわれたり、先生と生徒というだけの関係でなく、視野を広げて幅広くいろんなことに目を向けてほしい。そうすれば音楽の良さもさらにわかると思います。
 
成田 良子 Ryoko Narita
東京都出身。4歳よりピアノを始める。東京芸術大学音楽学部器楽科卒業。在学中より声楽、管弦楽器とのアンサンブルピアニストとして活躍。レニングラード国立バレエ団来日公演でピアノを務める。NHK-FM「名曲リサイタル」に出演。加藤登紀子のバックミュージシャンとして全国ツアー、ロシア公演に出演し、レコーディングやTV収録にも参加。ホルン、フルート、サクソフォンの教則DVDの収録に参加。またTrio-SHIZUKUを結成し、94年と04年にリサイタルを開催。現在、室内楽や伴奏のほか、吹奏楽、オーケストラの鍵盤楽器奏者としても各地の演奏会に出演し、幅広く活躍中。ピアノを北村レイ子、故小林睦子の両氏に師事。尚美ミュージックカレッジディプロマ科講師。
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