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金澤恭悦のリペアマンへの道! -第9回- ネックコルク編

Wind-i mini 15号 -第9回-

第9回 ネックコルク編

代官山音楽院、管楽器リペア科で行なわれる実際の授業を追いながら、代官山音楽院主任講師の金澤恭悦先がリペアの基本、そして技術が現場にどのように活かされているかを解説してもらうこのコーナー。今回は「ネックコルクについて」です。

ネックコルクは唄口と楽器本体を繋ぐ役割をしています。ネックコルクの必要条件は、
①スムーズに唄口がジョイントできる。
②固定したい位置を保持できる。

この2点が大変重要です。この条件が満たされなくなった時にネックコルクの交換が必要となります。
交換に必要なコルク材は天然のものを使用します。楽器以外でもコルクはワインの栓や床や壁に貼る材料としてよく見かけます。これは材質がとても柔軟性に富んでいることが理由ですね。他には遮音、消音効果も大きな特徴です。床や壁に貼ることで効果を狙っています。

シート状のコルクに柔軟性をもたせ、ネックに巻きつけた時に割れにくくしますシート状のコルクに柔軟性をもたせ、ネックに巻きつけた時に割れにくくします

ネックコルクに消音効果が発揮されては困るのですが、コルクの材質の柔軟性と加工が比較的容易なことが楽器の開発以来使用され続けている理由でしょう。
授業ではネックコルクの貼り替え練習をしています。メーカーではコルクの加工を機械で行ないますが、我々リペアマンは自分の手でカミソリやヤスリを使用して機械で加工したような仕上がりにしなくてはなりません。手作業で機械のように仕上げるのがこだわりどころです。

筒状のコルクは管体にはめてから周りを削っていきます筒状のコルクは管体にはめてから周りを削っていきます

ネックコルクの交換で大事なポイントは楽器の鳴りの性能を落とさないことです。最初に述べた条件以外にも、ジョイントが硬すぎると響きはタイトになる傾向がありますし、柔らかすぎる場合や、コルク材の合わせ目の具合によっては息漏れを発生させる場合もあります。ネックコルクを交換するということは楽器の性能(響き)を戻す作業でもあるのです。コルクの貼り替えというのは実は難しい作業なのです。
ネックコルク交換に使用するコルクは板状に加工されたシートコルクを使用しています。以前は筒状のコルクを使用していた時期もありましたが、最近はシートコルクを巻き付ける方法が採用されています。
ネックコルクはシェラックでの接着が一般的でしたが、現在はゴム系の接着剤もよく使用されています。

学生たちが授業でコルクの巻き替えを行なったネックです。これから講師が採点を行ないます学生たちが授業でコルクの巻き替えを行なったネックです。これから講師が採点を行ないます

Profile|金澤恭悦

69年日本管楽器(株)入社。日本楽器製造(株)(現ヤマハ)と合併後、本社にてクラリネットの開発に携わる。77年に開設された「ヤマハアトリエ東京」の初代スタッフとして木管楽器の専門家対応を22年間担当。特にサックス奏者ソニー・ロリンズ氏からの信頼は厚い。更に北米の修理技術を視察、アジアにおいても技術指導を行うなど海外でも活躍。現在は代官山音楽院主任講師、リペア工房atelier kanazawa主宰。

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