クラリネット記事 イタリアの音楽に敬意を表し、聴衆に届けるコンサートを─
  クラリネット記事 イタリアの音楽に敬意を表し、聴衆に届けるコンサートを─
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リッカルド・クロッシーラ氏 インタビュー

イタリアの音楽に敬意を表し、聴衆に届けるコンサートを─

クラシックのみならずクレズマー音楽でも活躍し、さらに第一線で活躍するクラリネット奏者を指導してきたリッカルド・クロッシーラ氏が、この3月に来日しコンサートを開催する。ヤマハホールでの共演は愛弟子である東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者のアレッサンドロ・ベヴェラリ氏との待望の共演だ。

翻訳:村井 睛

 

 

リッカルド・クロッシーラ
Riccardo Crocilla

1967年パレルモ生まれ。ジェノヴァのパガニーニ音楽院でG.ラルッチャに師事。若くして優秀な成績で卒業後、G.ガルバリーノやT.フリードリと共に活動。カリアリ、ジェノヴァ、トリエステ、ローザンヌのオーケストラやオペラ劇場で第1クラリネット奏者を務め、1996年以降、指揮者Z.メータの率いるフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団で首席クラリネット奏者を務める。また、チョン・ミュンフン、L.マゼール、R.ムーティ、W.サヴァリッシュ、G.シノーポリ、小澤征爾ら世界的指揮者や、イタリア国営放送(RAI)交響楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座管弦楽団、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団など世界の一流オーケストラと共演。室内楽奏者としても、トリオ・ディ・パルマ、アンドラーシュ・シフ率いるカペラ・アンドレア・バルカなど、著名な国際的アーティストと共演し、世界中でツアーを行っている。さらにシエナのギジアーナ音楽院、ヴェルビエ音楽祭、ルツェルン音楽祭、ザルツブルグ・モーツァルト・ウィーク、ウィーン楽友協会、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ヴェネチア・フェニーチェ劇場などの権威ある音楽祭や世界の主要なコンサートホールでの公演に出演してきた。ソリストとしても、フィレンツェのヴェッキオ宮殿でのZ.メータ指揮によるモーツァルトのクラリネット協奏曲や、エミリア・ロマーニャ音楽祭、ミッテル・フェスト、リュブリャーナ音楽祭に出演するなど精力的に活動している。傑出した若きイタリア人演奏家として、ガリレオ2000賞を受賞。これまでにアーツ・レコード、コロムナ・ムシカ、NBBレコード、イディリウムでレコーディングを行っている。

 

■CONCERT INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
リッカルド・クロッシーラ&アレッサンドロ・ベヴェラリ クラリネットデュオ・リサイタル

[日時]3/24(月)18:30開場 19:00開演
[会場]ヤマハホール(東京)
[出演]リッカルド・クロッシーラ/アレッサンドロ・ベヴェラリ(Cl)、小澤佳永(Pf)
[曲目]G.ヴェルディ=L.バッシ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」の主題によるディヴェルティメント(クロッシーラ、小澤)/E.カヴァッリーニ:アダージョとタランテラ(ベヴェラリ、小澤)/B.クルーセル:2つのクラリネットとピアノのためのアンダンテとアレグロ・ヴィヴァーチェ(全員)/C.d.ジャコマ:トスカ幻想曲 Op.171(ベヴェラリ、小澤)/F.メンデルスゾーン:演奏会用小品 第2番 ニ短調 Op.114(全員)/F.ブゾーニ:クラリネットとピアノのためのエレジー(クロッシーラ、小澤)/F.ブゾーニ:組曲 BV88(ベヴェラリ、小澤)/N.ロータ:クラリネット・ソナタ ニ長調(クロッシーラ、小澤)/A.ポンキエッリ:イル・コンヴェーニョ(全員)
[料金]全席指定 一般¥4,000 学生¥3,000
[問合せ]ヤマハ銀座店 インフォメーション03-3572-3171

 

師匠と並んで演奏できた貴重な経験

クロッシーラさんがクラリネットを始めたきっかけを教えてください。
クロッシーラ
(以下 C)
9歳のとき、私は町の楽団でサクソフォンを演奏し始めました。その後、音楽院に入学しましたが、サクソフォンはそこで教えられていなかったため、楽器を変えなければなりませんでした。こうして名残惜しくも、大好きだったサクソフォンを手放し、クラリネットを始めることになりました。
クラリネット奏者を目指したターニングポイントはありますか?
C
11歳でクラリネット科に入学したとき、この楽器の勉強に熱中するようになりました。主に演奏技術を重視する師匠のもと、初歩的な練習を終えるなり私はすぐに上達しました。数か月のうちに、上級クラスの高度な課題練習に取り組むようになり、そのとき私は間違いなくクラリネット奏者になりたいと決心したのです。
私の第二の故郷ジェノヴァで、パガニーニ音楽院での学業を修了した後、19歳の時に初めてカリアリ管弦楽団の首席クラリネット奏者の座を勝ち取りました。

ズービン・メータとの共演

1996年からズービン・メータ率いるフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団の首席を務めるなど、多くのオーケストラで演奏、協演されています。オーケストラで演奏して得たことや、思い出などを教えてください。
C
カリアリで過ごした日々で経験をさらに深めました。E♭クラリネットと2ndクラリネットのポジションが空いたジェノヴァに戻り、オーディションを勝ち抜き、私は自分の元師匠(首席クラリネット奏者)と共に演奏することになりました。彼のクラスで生徒だった私が、なおも彼の隣で直接学べた重要な経験でした。
その時から、私は第1クラリネット奏者のポジションをずっと探していました。他のコンクールにも挑戦し、ローザンヌ室内管弦楽団でのポジションを勝ち取りました。そこで、私のもう一人の師であるトーマス・フリードリ氏(世界的に有名なソリスト)と共に演奏しました。再び、貴重なレッスンで経験を豊かにしました。
1996年、私はズービン・メータ氏が指揮するフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団のオーディションに参加しました。29歳の音楽家にとって、これはイタリアの音楽界においてまたとない貴重な機会でした。
フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団は、著名な指揮者と共演し、世界各地を巡る伝統を持つ楽団です。入団するとすぐに、ジョルジュ・プレートル、ジュゼッペ・シノーポリ、セミヨン・ビシュコフ、チョン・ミョンフン、ロリン・マゼール、リッカルド・ムーティ、ヴォルフガング・サヴァリッシュ、小澤征爾、そしてもちろんズービン・メータなど、当時最高の国際的な指揮者たちと共演する機会に恵まれ、アジア、ヨーロッパ、南米各地へのツアーにも参加しました。その後、ミラノ・スカラ座管弦楽団、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団でも第1クラリネット奏者奏者として招待されました。

表現や即興の自由度が非常に高いクレズマー音楽

現在はカペラ・アンドレア・バルカでも活動されています。日本ツアーもされていますが、どのようなオーケストラでしょうか。
C
2004年、私はアンドラーシュ・シフ先生の個人的な招待を受け、カペラ・アンドレア・バルカに加入しました。
カペラ・アンドレア・バルカは、シフ先生自身が厳選したヨーロッパ屈指のオーケストラの楽団員で構成された室内管弦楽団です。このアンサンブルは年間3~4回のプロジェクトのために集まり、シフ先生の指揮のもと演奏します。
レパートリーは主にモーツァルト、ベートーヴェン、ハイドンといった古典派の作曲家の作品ですが、ブラームス、ドヴォルザーク、バルトークなどの楽曲も含まれます。また、アンドラーシュ・シフをソリストとするピアノ協奏曲を頻繁に演奏するほか、トリオ、カルテット、クインテット、ウィンド・アンサンブルなどの室内楽の演奏も団員で行なっています。
クロッシーラさんは、クレズマー音楽を演奏するバンドにも入っています。クレズマー音楽との出会いと、魅力を教えてください。
C
私の音楽キャリアのもう一つの側面は、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団内で結成されたグループで、クレズマー・クラリネット奏者として演奏していることです。このアンサンブルは“Klezmerata Fiorentina”と名付けられ、ヴァイオリン、アコーディオン、コントラバスの同僚たちと共に活動しています。これはオーケストラでの演奏とはまったく異なる経験ですが、この活動を通じて、より幅広い音楽的視野を持つ演奏家へと成長することができました。
私が初めてクレズマー音楽に触れたのは、このグループのヴァイオリニストであり、創設者であり、またグループの精神的支柱でもある イゴール・ポレシツキー氏を通じてでした。彼はクレズマー音楽に関する深い知識を持ち、このジャンルの魅力を私に教えてくれました。クレズマー音楽の演奏は、表現や即興の自由度が非常に高い——深い悲しみから溢れる喜びに至るまで、幅広い感情を表現できる音楽スタイルです。

3月に開催されるリサイタルへの思い

今月お弟子さんで東京フィルハーモニー交響楽団の首席奏者のアレッサンドロ・ベヴェラリさんと共演されますね。ベヴェラリさんはどのようなお弟子さんでしたか?
C
はい。3月に東京のヤマハホールで共演する予定です。アレッサンドロは、幼い頃からイタリアで私が教えた数多くのマスタークラスに参加していました。彼は、クラリネット奏者になるという強い決意を常に持ち続けていました。不屈の努力が遥々彼を東京まで導き、現在は東京フィルハーモニー交響楽団の首席クラリネット奏者です。
今回のプログラムは歌劇をモチーフにしたものからクラリネットのオリジナル作品までレパートリーに富んだものになっています。選曲にはどんな思いを込めましたか?
C
コンサートのプログラムは、イタリアの音楽に敬意を表し、オペラをはじめ、クラリネットのレパートリーからの重要な作品を取り上げます。異なる時代の音楽を選曲しようと、私たちの間で話し合いました。ジュゼッペ・ヴェルディ、フェルッチョ・ブゾーニ、フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディの作品と、フェデリコ・フェリーニ監督の映画音楽で有名な作曲家ニーノ・ロータの作品も演奏します。クラリネット二重奏とピアノのためのレパートリーは多くはありませんが、演奏できる作品の中から最も華やかで素晴らしいものを選びました。例えば、ポンキエッリ作曲の『イル・コンヴェーニョ(出会い)Op.76』や、クルーセル作曲の三重奏などです。
今回のコンサートの聴きどころやメッセージをお願いします。
C
私は、聴衆の皆さんがカルロ・デッラ・ジャコーマ作曲の『トスカ幻想曲』や、ジョゼッペ・ヴェルディ作曲のなかなか演奏されることのない歌劇『「イル・トロヴァトーレ」の主題によるディヴェルティメント』と出会い、興奮してくれると考えています。プログラムの大部分は、クラリネットのレパートリーとしてはあまり演奏されないイタリアの作曲家たちの作品で構成しています。ポンキエッリ作曲の『イル・コンヴェーニョ(出会い)Op.76』は、おそらくコンサートの締めの曲となり、卓越した技巧を披露できるでしょう。私たちの選曲は珍しくユニークであるため、日本の聴衆の皆さんに気に入っていただけると確信しています。
ヤマハのクラリネットを愛用されていますね。ヤマハクラリネットの魅力は何でしょうか。
W
私はヤマハ Custom YCL-CSGIII のクラリネットを演奏しています。 私はヤマハのクラリネットを20年以上演奏しており、その卓越した作り、正確な音程、そして音の出しやすさに今も感銘を受け続けています。

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