中高生のための「クラリネット演奏法」

第13回 フレージングのために その2 〜良いフレーズは良いリードから〜

リードのしくみ

美しいフレーズを吹くためには、呼吸法あるいは息の柱(コロンデール)は管楽器奏者にとって基本的なことですが、これと並行して、リードのしくみを理解する必要があります。管楽器のリードは簡単に言うと、人間の血液を規則的に循環させる心臓の弁(バルヴ)のような働きをします。
クラリネットの場合は、息を吹き込むことによってマウスピースにつけられたリード(弁)が反応して、管の内部に空気を送り込んだり遮断したりします。ここで大切になるのは、リードが吹き込んだ息(空気)に規則的にうまく乗ること。言い換えると、吹き込んだ息がリードを良い状態で振動させることです。では、リードが息に上手く乗るというのはどういうことなのでしょう。

リードの運動

息を吹き込むと、リードは息の圧力に押されてピシッと閉まり空気を遮断しますが(図①)、すぐにリードのスプリング(弾力のあるリード)の力で元に戻ろうと反発します(図②)。吹いている間、息の圧力はそのままかかっているので、再び押され戻される同じ運動が連続的に繰り返されて周期(サイクル)を生み、これがリードの振動となって発音がなされるわけです。

図①
図②

ここで興味深い話をしましょう。息を吹き込むことによってリードが非常に速く開いたり閉じたりした場合、振動する運動の周期の中で息はだいたい20分の1程度しか入っていかないのです。つまりリードが閉まっている時間が長いわけです
こんなことを言われても実感としてピンときませんね。でも、クラリネットが閉管と言われている一つの理由がここにあります。リードの開閉が急速な運動の周期では、倍音(※)をたくさん含んでいて明るい豊かな響きがします。では、リードがゆっくり開閉する場合はどうでしょう。一つの周期の中で最大8分の1の割合で息が入っていくと言われ、倍音の響きの範囲は減少しますが、より柔らかい音になります。
リードの開閉の早い遅いという枠の間で、演奏者は自分の好みに合わせて音色やニュアンスなどを変えていきます。これは、技術的にアンブシュアを柔らかくしたり、リードやマウスピースの条件を変えたり、また息をコントロールすることによって可能になります。

◎倍音

一つの音の中には、基本になる音に対して高い音から低い音までたくさんの音が含まれています。
基本になる振動数から整数分の一の振動によって生じる音を倍音と言います。
音域やハーモニーは、この倍音によって生まれます。

参考文献「Clarinet」Jack Brymer      
    「クラリネットの本」Guy Dangain

マウスピースに合った弾力性のあるリードを選ぶ

以上のことから、良い状態で音を鳴らすためには、弾力性のあるリードが必要になってきます
リードは真ん中の縦の軸を中心にして、先端に行くに従って薄くなっていきます。特に先端からハートの部分は重要で、ここの厚さの度合いによって、芯のある音かどうかが決まってきます。
リードの先端はとくに0.085mm〜0.01mmくらいに薄く削ってあります(図③)。リードを透かしてみて、先端からハートの部分にかけて平らになっていたり腰の強さがないリードは、ちょっと吹きは良いけれど音がペラペラになって音程が不安定で丸い響きがしません(図④)。

図③
図④

もう一方で、マウスピースとの関係も考えなくてはなりません。一般的に、先端が開いていてリードとのカーブが長い(ロングカット)マウスピースにはやや薄めのリード、先端が狭くカーブが短い(ショートカット)マウスピースには、やや厚めのリードを選びます。これにはいろいろなサイズがあるので簡単には決められませんが、リードは厚い薄いではなく、吹きやすく弾力性のあるものを選ぶことが一つの重要なポイントです。

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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