オガケン先生の東洋医学で気楽に音楽

【第3回】ツボを使って“気”持ちのコントロール!

〜労宮・内関 編〜

みなさん、こんにちは! クラリネット奏者、鍼灸マッサージ臨床家のオガケンです。「東洋医学」の視点から、演奏家のカラダについて考えていく本企画。第3回の今回は、演奏家には切っても切れない精神・メンタル面のお話、「本番時の緊張、気持ちのコントロール、集中力」にまつわるツボについて話していきましょう!

緊張をやわらげ、集中力を高めるツボ2選〈労宮ろうきゅう〉と〈内関ないかん

演奏家にとって「本番」は、日ごろの精神状態とは違うテンションに切り替わるもの。 集中力がグッと高まり、音楽表現に没頭することもあれば、逆に緊張しすぎてパフォーマンスが低下してしまうことも。一般的にはそんな緊張との向き合い方として、「ルーティン動作や縁起をかつぐ、不安がなくなるまで徹底的に練習する、成功シーンをイメトレする」など、自分なりの方法で克服されている方もいると思います。そんな演奏家のみなさんに、「緊張」や「集中力」に効果があるとされるツボ〈労宮〉と〈内関〉をご紹介しましょう! ぜひカラダとココロのつながりを演奏に活かすきっかけにしてみてください。

呼吸を深くし、ドキドキを落ち着かせる〈労宮〉

まずご紹介するのが、〈労宮(ろうきゅう)〉というツボ。 ツボの名前にはそれぞれ意味や由来があるのですが、この〈労宮〉もその名のとおり“労”働をいたわる、重要な場所(お“宮”)なんです。わかりやすくいえば、疲れを癒す大切なポイントということですね。

東洋医学では、 身体には五臓六腑を軸としたエネルギーの通り道があるとしていて、これを『経絡(けいらく)』と言います。 わかりやすい言葉でイメージすれば、「血管・神経・リンパ管・筋肉の経路を総合的に大きくまとめた流れ」といった感じでしょうか。〈労宮〉のツボは、『厥陰心包経(けついんしんぽうけい)』という経絡に属しています。「心包」という名前のとお り、“心臓”や“ココロ”を取り巻く経路というわけです。

すぐできる!〈労宮〉のセルフケア

〈労宮〉の場所は、指を握ったときに中指 or 薬指の先端が手のひらにくっつく中心部分です。

第2回でお話した〈合谷〉のセルフケアと同じように、手のひらの真ん中で押すと「ズーンと響く」感じのするところを呼吸のリズムに合わせゆっくり押し戻してあげてください。昔からこの〈労宮〉を刺激すると、感情がひどく高ぶったり、胸がしめつけられるような気持ちのときに落ち着くと言われています。呼吸がゆったりし、気持ちも楽になり、集中モードに入りやすくなりますよ。

乗り物酔いにも使われる?〈内関〉

次に〈労宮〉と同じ『厥陰心包経』に所属する、集中や緊張に効果バツグンのツボ、〈内関(ないかん)〉をご紹介しましょう!
極度の緊張のあまり、苦しくて吐きそうになった体験はありませんか?「“吐き気”や“妊娠時のつわり”には内関を使うべし」と古くから言われています。実は現代でも、このツボの効能を利用した「酔い止めリストバンド」がグッズ化されていたりします。(検索すればたくさんヒットしますよ!)
以前、なんの気なしに乗った遊覧船が予想外に揺れ、「これはヤバイ…」と思った私は乗船中ずっと内関をグリグリ押していました。次の港までけっこう長かったのですが、無事乗り越えることができたので効果は折り紙つきです(笑)。

生活の知恵?身近なもので〈内関〉セルフケア

〈内関〉の場所は、腕の内側の真ん中のスジ沿い、手首のシワから指3本分のところ。位置が慣れると、手首からスジをたどり親指がスッと止まるかと思います。

セルフケアの方法は先ほどの〈労宮〉のように、反対側の親指でグーッと押してあげてください。刺激が物足りなければ、“つまようじ”や“芯を出していない状態のボールペンの先”で押してあげる、なんてこともできます。ただし、やりすぎにはくれぐれも注意してくださいね!
昔の妊婦さんやガタガタ道での乗り物移動の際には、生米を〈内関〉に貼り付けて吐き気止めにしていたとも言われています。現代のご家庭でも、お米の粒を絆創膏で固定すれば簡易の「酔い止めバンド」効果が得られますよ。一度お試しいただいて、効果のほどを体験されてみては?

コラム
深い集中力と呼吸をもたらす!? オガケン考案【綿棒セルフケア】

余談ですが、私は鍼灸マッサージの教員課程の卒業論文で、「演奏家の緊張緩和【綿棒セルフケア】」というテーマで研究発表をしました。セルフケアの方法は、さきほどの〈労宮〉と親指先にある肺のツボ〈少商〉を下図のように綿棒で挟み、綿棒の両端を両ツボに当てながら親指の力を使って刺激を与えるというものです。

どちらのツボも「心包=精神の安定」、「肺=深い呼吸」に作用するので、ステージ上の緊張状態がつづく管楽器奏者に役立つのでは!?と考えました。綿棒じゃなくてもいいのですが、綿棒ならタキシードのポケットや小物ポーチに入れても安全・清潔に使うことができますし、演奏旅行の多い方なら移動先のホテルでアメニティとしても手に入りやすいからという理由です。つまようじなどの細いものを使って、万が一にも指先のケガなどしたくないですしね。これならステージ上、吹奏楽やオケの「どソロ」の前でもこっそりココロと呼吸を整える、なんてことも!

私の実感では、クラリネット奏者泣かせのロングフレーズ、プーランク『クラリネットソナタ』2楽章の冒頭を綿棒セルフケアで深呼吸して実験演奏したところ、とっても息が深くなり楽に吹けたのです。その後、プロ奏者や音大生の方たちに被験者として実験いただいたのですが、全員からハッキリと効果が得られた結果ではなかったものの、一定の効果を感じた方もたくさんいらっしゃいました。
この【綿棒セルフケア】にご興味いたけた方、「やってみました!」という方、何かアイデアをお持ちの方など、ぜひぜひコメントお待ちしております!

本日のまとめ

東洋医学ならではのツボを使った演奏メンタルへのアプローチ、いかがでしたか?
鍼灸マッサージ治療は、カラダやココロの巡りをとってもよくします。本コラムの豆知識やセルフケアが、演奏するみなさんにとって“気”持ちを“楽”しんでもらう一助となれば幸いです。
他にも「こんなこと知りたい!」やご質問などありましたら、ぜひぜひアンケートフォームからお送りくださいね。(※無料のアカウント登録が必要になります)

次回はランキング第3位、管楽器奏者ならではの悩み「口バテ」に効くツボ〈巨髎こりょう〉と〈大迎だいげい〉をご紹介します! お楽しみに!

—本日のまとめ—

1. ツボは緊張緩和や集中力UPにも効果的
2. 疲れを癒す大切なポイント〈労宮〉
3. 心臓とココロを包みこむ経路『厥陰心包経』
4. 現代でも大活躍!吐き気には〈内関〉がバツグン
5. 綿棒でステージ上でもセルフケア?!

 

ベル・エール・トウキョウ
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現在移転のため、都内レンタルサロンまたはご自宅・オフィスへの出張にて施術対応しております。
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フランス語の「Bel-Air(ベル・エール)」とは、英語の「Beautiful-Air (ビューティフル・エアー)」、すなわち「美しい-空気」「澄んだ-気」の意味。 院長 小笠原賢二の人生とゆかりの深いパリ12区に、メトロ6番線「BEL-AIR(ベ ル・エール)」駅が存在します。「美しい空気、澄んだ気」という語意にちなみ、治療を受けにいらした患者様が素敵な空気の中で、身体だけでなく気持ちまで整っていただきたいといったコンセプトのもと名付けました。

 

 

小笠原 賢二 Kenji Ogasawara
クラリネット演奏家からメーカー社員、そして東洋医学の世界へ転身という異例の経歴!
国立音大、エリザベト音大大学院卒⇒フランス留学⇒ビュッフェ・クランポン・ジャパン⇒鍼師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師の国家資格および教員資格⇒現在は東京銀座 鍼灸マッサージサロン『ベル・エール・トウキョウ』で治療活動&教育活動を行う。
クラリネットを武田忠善(国立音大招聘教授)、ミシェル・アリニョン(元パリ音楽院教授)の各氏に師事。バスクラリネットをフィリップ=オリヴィエ・ドゥヴォー氏(元パリ管弦楽団奏者)に師事する。現代フランスの作曲家ジャン=ミシェル・フェラン氏からバスクラリネットとピアノの為の作品『Apostasis』(KLARTHE出版)の献呈を受ける。祖父は古代中国の東洋医学書『黄帝内経』を日本語意釈した先駆者、小曽戸丈夫。

 

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