中高生のための「クラリネット演奏法」

第21回 “ニュアンス”を知る その4 〜ディミヌエンドとクレッシェンド〜

ディミヌエンド(diminuendo)とクレッシェンド(crescendo)

今回は、だんだん音の強さを変えていくdiminuendocrescendoの練習に移ります。ここではさらに息のコントロールが必要になります。
横隔膜の支えを常に考えて、音が弱くなったときにお腹(横隔膜)がへこまないように注意しましょう。crescendoするときは、吐き出される息の速度が速くなればなるほど音量が増していきます。
逆に息の速度を遅くしていけば音量も減ってdiminuendoになります。これは息の量の増減にも関係があります。まず、fからpへのdiminuendoの練習(譜例①)です。

譜例①

一小節ごとに間を開けて十分に深い息を吸い、横隔膜で支え fで吹き始めます。出ている音をよく聴きながら少しずつ息の量を減らし、スピードを遅くしていく感じでdiminuendoします。
最初のラ(実音G)の音はソ(実音F)の音と同じように楽器が不安定です。音の響きも良くないので、右手の中指と薬指と小指、左手の薬指と中指などを押さえて楽器を安定させ、良い響きを作りましょう。音程の問題もあるので低い場合は指を離して、響きの良い運指を探してください。
次に ffから ppppから ffへのdiminuendocrescendoをそれぞれ練習します(譜例②)。

譜例②

メトロノームで四分音符が80〜100くらいのテンポで徐々に音を弱くしていきます。何度も言うように横隔膜の支えを実感しながら ppまでだんだん消えていく感じで柔らかくdiminuendoをしていきます。
逆に ppから始まるcrescendoはやや難しいです。息の速さを少しずつ増して ffの最後まで息を持続できるように、息を十分に吸い込み、息を支えて最初の ppを発音しましょう。これらの練習を一日15分から30分くらい続ければ、だんだん息の使い方が身についていきます。
ここで一つ問題があります。例えば ffの音はどの程度の強さを出せばいいのだろう、ということです。
クラリネットが鳴らせる強い音には限界があります。力任せのバカでかい音になって音楽の領域からはずれてしまっては何もなりません。また音の強さは演奏者の肉体的な条件や音楽的な感覚によってそれぞれ違います。大切なのは常によいソノリテでニュアンスを吹き分けることです。音が良くなっていれば、それほど強く吹かなくれもfに聴こえてくるはずです。練習するときはそのことを頭にいれてダイナミクスの設定をしてください。

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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