リードの基礎知識 Chapter-1 リード基礎講座

リード基礎講座〜7つの基本的知識と3つの取扱法

おなじみクラリネット仕掛人こと木村健雄氏にご登場いただき、「リードとはなんぞや?」から始まる7つの基礎知識、そしてリードの育成・保管に関わる3つの手法について指南していただく。
※2013年9月10日発売「The Clarinet vol.48」に掲載された内容です
Text by 木村健雄

01リードとは?



 
最もポピュラーなバンドーレン・ トラディショナルの素材はケーン(葦)
合成樹脂製のレジェールリードは近年愛用者を増やしている
 

よくリードというのはケーンという植物からできている、と言われるが、リード(reed)という言葉自体が本来「葦」という意味であり、ケーン(cane)とはその植物の俗称で、元は杖やステッキなどの細身で軽いものを指す単語である。和名をダンチク(暖竹)、学名をArundo Donax、そして英名はGiant Reedという。
リードの産地は南フランスや南米(アルゼンチンなど)で、刈り取られた後で自然乾燥させ、それをリードの形に成型してでき上がる。また、近年ではプラスチック(ポリプロピレン)のような合成樹脂製のものもよく知られている。

 

02リードの形状

リードの形状は国によって多少異なり、フレンチカット、ジャーマンカット、ウィーンカットなどがある。日本国内で使われているクラリネットのほとんどはベーム式(フランス管)なので、フレンチカット。それ以外のエーラー式(ドイツ管)にはジャーマンカット、ウィーンアカデミー式のクラリネットにはウィーンカットのリードが使われる。

 

03リードの各部名称

各部の名称は下の図の通り。リード先端部の厚さはほぼ0.01mmで統一されている。 リードには、ファイルドカット(左)とアンファイルドカット(右)の2種類がある。それぞれが音質や抵抗感、音の立ち上がりなどに特徴があり、吹奏感が異なる。

ティップ……リードの先端部分
ハート……ヴァンプの中心部分
ヴァンプ……カット部分
ヒール……リードのかかと部分

 

※ファイルド・カットとアンファイルド・カット
リードはケーンの表皮をU字にカットして作られているが、カット部周囲の表皮をストレートにカットしたものをファイルド・カットといい、削らずに残したものをアンファイルド・カットという。一般に、ファイルドは音色が明るく、アンファイルドはダークで深みのある音とされるが、マウスピースのセッティングなどでもサウンドが大きく変わる。

 

04リードの番手の選び方

リードの番手はマウスピースとの相性によって決まる。マウスピースの開き(ティップオープニング)の大きいタイプには柔らかめ、開きの狭いタイプには硬めのリードが合うと言われている。このことをリードとマウスピースのマッチングといい、一覧表がリードの箱に入っていたり、各メーカーのホームページでも確認できる。また、楽器を構える角度やくわえ方でも使いやすい番手は変わってくる。口腔の広さ、また体力差でも異なるので一概には言えないが、浅めにマウスピースをくわえ、口腔も狭い人は柔らかめ、その逆の人は硬めのリードを好むようだ。さらに使っている楽器の機種とのマッチング、鳴らし方の好みまで考えると千差万別で複雑すぎるため、迷ったら話のわかるプロに相談することをお勧めする。

 

05リードとマウスピースのマッチング

クラリネットのマウスピースとしてごく一般的なバンドーレン社の5RVライヤーでは、同じメーカーのリードであるV.12(通称:銀箱)の3½から4、同B40なら3か3½がベストマッチングとなるが、トラディショナル(通称:青箱)ならそれよりも若干硬めのほうがいい。また、バンドーレン以外のメーカーでは、バンドーレンの番手の硬さの数字を基準にしているが、多少前後するリードもあるので確認しよう。

 
クラリネット用マウスピースの中では人気の高い、バンドーレン5RVライヤーとB40
 

06自分に合ったリードとは

筆者がリードを選ぶ基準は、見た目ではまったく分からないし、自分が使用しているマウスピースとの相性も吹いてみないと分からないので音を出してみる。まずレジスターキィを押さない下管の音が若干の抵抗感はあったとしてもストレスにはなっていないことを確認。次にレジスターを押さない上管の音に雑音がなく柔らかい音色が出ること。そして最後は開放のG(実音F)からB♭の中音域、ネックの部分の音がちゃんと鳴るかをチェックする。これらがOKであればレジスターキィを押したそれより高い音はまったく問題なく、低音から高音までが一体感のある吹奏感で均一な音質が出るはず。

 

07リードの正しい取り付け方

まずマウスピースにリードではなくリガチャーを付ける。この時、相当気をつけないとマウスピースの先端にリガチャーを軽くぶつけただけで変形してしまうし、先にリードを付けているとリードも簡単に割れてしまうので注意

 

リードを上部から入れる。まさか下から入れる方はいないと思われるが、リードの先端をぶつけないように気をつけよう

 

リードの先端をマウスピース先端部のアーチに合わせる。合っているかは横からも見て確かめよう。ほぼ同じ高さか、わずかにリードを下げて付けるのが標準。柔らかすぎるリードの場合はリードをマウスピースよりわずかに上に出し、硬すぎる場合は逆にリードを下げて付ける

 

マウスピースのテーブル(平らな部分)の中央にリードがくるように尻部(最下部)の場所を確認。リードの最上部(先端)と最下部(一番下)の場所を確かめ、マウスピースの中央に付ける

 

リガチャーがマウスピースに付いている線(溝)と線の間にあるかをチェック。いつも同じ場所に付けるようにしよう。上に寄せて付けるのと下に寄せて付けるのとでは音質や吹奏感が変わってしまうので、いろいろと試してみて、自分好みの位置を探してみては?

 

ネジを緩める。思いっきり強く締めると響きが止まってしまうし、緩すぎれば演奏中にリードが動いて音が出なくなることもある。ネジが2ヶ所あるタイプのリガチャーの場合、上のネジを強めに、下のネジを緩めにしめるのと、その逆だと鳴り方はまったく違ってくる。リードの調子によってここで調整することもできる

 

COLUMN

リードの育て方

まず水を入れたコップにリードの上半分をジャブッと浸けたら、すぐに取り出して放置します。1〜2分放置したところで5〜10秒くらい吹いたらマウスピースから外して乾かします。完全に乾いたら同じ作業を濡らすところからもう一度、最低4、5回は繰り返し、徐々に音を出す時間を長くしていきます。そして吹奏感の良いもの、音色が良いもの、少し硬く(柔らかく)感じるものなど、いろいろなリードがあるので気に入った順番に並べます。ただ、この「育て方」が人によってあまりにもやり方が異なるというのは、正解がないからではないでしょうか。集中力を持ってリードの変化に細心の注意を払い、マニュアルをあてにし過ぎないようにしましょう。

 

リードの保存法

吹き終わったリードは部分的に水分を含み膨張もしているので、よく水分を拭き取りリードケースに保存します。そのリードケースですが、なかにガラス板があり、その上に並べて置くだけのタイプのものがオススメです。フタを閉じるとリードをガラス板に押さえつけてくれるので変形を防ぎ、通気性もとても良いです。リードを差し込むガード付きのものは、入れる時にリードの先端を引っ掛けやすいのであまり感心できません。また外国製のリードケースは保湿に力を入れていることが多く、プラスチック製で内部を密閉してしまうものなど、高温多湿の日本の気候には合わないと思います。一部のリードにはプラスチックのリードガードが付いていますが、出し入れを繰り返すとリードを損傷することが多く、なかには裏表を間違えて使っていた事例もありました。あまりオススメできるものではありません。

 

長期保存するには

日本では梅雨の時期などはセロファンの封を開けなくても、なかのリードにカビが生えてしまうことがあります。楽器のケースカバーに入れっぱなしにしておくとカビが生えるだけでなく、それをエサに生きている小さな虫たちもやってきます。筆者は、桐や杉などでできた木箱に保管しています。木の防湿、抗菌効果がカビや害虫から守ってくれているようです。 新しいリードをそのまま使わず、数ヶ月から数年、寝かせてから使う人もいます。やってみると材質が安定して使えるリードが確かに多くなります……ということは、新製品には乾燥が充分でないものも含まれているということ。ただ、この場合も湿度対策が重要で、どれくらい寝かせるかと言うと10年が限度のようです。

 

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