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ジャンルも時代も超えた、“旬”の音楽 有田正広

THE FLUTE vol.173 close up

モダンフルートと古楽器のトラヴェルソ、その両方でテレマンの『無伴奏フルートのための12のファンタジー』全曲を収録、この11月に2枚組のアルバムとしてリリースした有田正広氏。今年古希を迎えるも、ますますその音楽性を深め、「いつも今が旬」だと語る。
取材協力: 株式会社キングインターナショナル

 

2つの楽器で時代を超える

テレマンの『無伴奏フルートのための12のファンタジー』を、トラヴェルソとモダンフルートの2バージョンで録音しようと思ったきっかけは何でしたか?
有田
僕は“古楽器奏者”と言われることが多いんですが……自分自身はそうは思っていないんです。現代フルートもバロックフルートも、すべて僕が演奏する楽器はルネッサンスから現代まで、長き歴史のつながりだと思っていて。1975年くらいに、ドイツの古楽器オーケストラが日本公演をしたときにソリストとして出演したんだけれど――トラヴェルソでバッハの管弦楽組曲の第2番を演奏して。それがテレビで放映されたときに「トラヴェルソ奏者」って紹介されて、それから古楽器奏者と言われるようになったんですね。
大学ではモダンフルートを勉強して、その後トラヴェルソで留学してから日本に戻ってきて。その頃、桐朋学園に古楽器科ができて、そこで教員として働くようになった。当時、全世界的に古楽器の演奏が非常に注目されてたんです。僕の演奏会は古楽器でというリクエストが多くて、ほとんど古楽器で出てたんですね。そこで、いつのまにかそのジャンルの中心的な存在になっていた、という感じです。
前置きが長くなりましたね(笑)。テレマンの音楽を表現するのに、その時代の楽器を使えばこれに勝るものはないわけです。でも、じゃあモダンフルートで吹いたら、その音楽は良くないものになるのか? バロック音楽を吹くのに、モダンフルートは“使えない楽器”なのか? 侃々諤々、いろんなところでいろんな議論がある。
今回の試みは、どっちもこんなにいい音楽なんだよっていう、テレマンはそんなことにかかわらず素晴らしい音楽を書いてますよっていう……そんなメッセージが、僕の音楽を通じて伝わればいいと思ったところから始まったんです。
30年前にも一度、この曲を収録されているそうですね。30年を経て、再度録音するに至ったのはどんな経緯からなのでしょうか。
有田
30年前の録音というのは、ほとんど最近忘れていて。過去の録音は、だいたい後になると聴かないんですよ。ところがあるイベントで、その30年前の音源を聴く機会があって――あの頃はこんな解釈なんだ、と。30年分の経験を積むうちに自分の中でいろんなものが凌駕されて、ここ最近でもまた30年前とは違う見方が出てきて、だから30年前の演奏っていうのは、ある意味1つのプロセスですよね。 その変化していった感覚の裏付けとなるいろんな資料の研究、それが今回収録に使った楽譜 (音楽之友社版 <2018年、有田正広校訂> ) につながるんですよね。そしてそんなタイミングでレコーディングの話が持ち上がって、だったら今のテレマンをやりたいと。30年前のものと聴き比べはしてないけれど、おそらく相当違うと思います。しかしもちろん、どちらもそのときどきの私自身を反映していることに間違いはありません。

 

( 次のページへ続く )
・古楽器の楽しさ
・グラーフの言葉に…

 

Profile
有田正広
有田 正広
Masahiro Arita
1972年、桐朋学園音楽大学を首席で卒業。同年、第40回NHK・毎日音楽コンクール(現・日本音楽コンクール)で第1位を獲得。翌年、ベルギーのブリュッセル王立音楽院に留学。74年からはコレギウム・アウレウムのメンバーとして、ヨーロッパ、日本などで活動。75年、王立音楽院をプルミエ・プリで卒業。同年、ブルージュ国際音楽コンクールのフラウト・トラヴェルソ部門で第1位となる。77年、オランダのデン・ハーグ王立音楽院に入学、半年で最高栄誉賞つきソリスト・ディプロマを得て卒業。帰国後も、フランス・ブリュッヘン指揮「18世紀オーケストラ」、クイケン兄弟、トレヴァー・ピノック指揮「イングリッシュ・コンサート」など、内外の名手たちとも盛んに共演。89年には「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」を結成。指揮者として結成記念公演を行なう。2006年にはモーツァルト生誕250年を記念し、モーツァルトのフルートとオーケストラのための作品全5曲を自身の指揮と演奏により一晩で演奏し、話題を呼んだ。09年にはロマン派をレパートリーとする日本初のオリジナル楽器によるオーケストラ「クラシカル・プレイヤーズ東京」を結成。さらに活動の場を広げている。現在、昭和音楽大学客員名誉教授、桐朋学園大学特任教授。

 

Concert information

Concert information
有田正弘・有田千代子 ジョイントコンサート
有田正広・有田千代子 ジョイントコンサート
[日時]2020年3月13日(金) 19:00開演 (18:30開場)
[出演者]有田正広(バロック・フルート)、有田千代子(チェンバロ)
[会場]日本基督教会 神戸聖愛教会
[料金]4,500円 (全席自由)
 [曲目]G.Fr.ヘンデル:フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 HWV375、J.P.スウェーリンク:「ライン川に漕ぎ出でて」、M.ブラヴェ:フルートと通奏低音のためのソナタ ニ短調 作品2-2、G.Ph.テレマン:無伴奏フルートのためのファンタジー 第9番 ホ長調 TWV40:10、C.Ph.E.バッハ:チェンバロ・ソロのためのヴュルテンベルク・ソナタ 第1番 イ短調 Wotq.49、J.S.バッハ:オブリガート・チェンバロとフルートのためのソナタ ロ短調 BWV1030

音楽講座『ルイロット工房について』
日時:2020年3月15日(日) 19:00~20:30
聴講料:3,500円
会場:LA FLUTE ENCHANTEE
 

CD information
好評発売中!

CD information
好評発売中!
「テレマン:無伴奏フルートのための12のファンタジー」
「テレマン:無伴奏フルートのための12のファンタジー」
<2枚組CD>
[CD1]
(1) 古楽器による全曲演奏
(2)【ボーナストラック】クヴァンツ: メヌエットと変奏 ホ短調

[CD2]
(3) 現代楽器による全曲演奏
(4)【ボーナストラック】クヴァンツ: アルマンド ホ短調
【演奏】有田正広( (1)(4) フラウト・トラヴェルソ、(2)(3) フルート)
【録音】(1)(2) 2019年4月27日~30日、 (3)(4) 2019年5月3日~5日/水戸奏楽堂
レーベル: ALTUS
品番: ALT415
価格: オープンプライス

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