フルート記事
THE FLUTE vol.191 Special Interview

恩師ベネット先生への思い。私は「その瞬間」の音に集中し、息で歌い、語る。

コロナ禍の影響で2度延期となった、待望の日本ツアーが昨年末に開催され、多くの聴衆を魅了したローナ・マギー氏。
2021年には日本国内レーベル初のニュー・アルバムをリリースした。
2014年にインタビューしてから約8年。
現在ソロはもちろんのこと、ピッツバーグ交響楽団首席フルート奏者としても活躍する彼女に、東京公演翌日にお話を伺うことができた。
取材協力:株式会社グローバル 通訳:百目鬼英弘

2度の延期を経ての日本公演

昨日はコンサートお疲れ様でした。コロナの延期もあって約3年ぶりの日本でのリサイタルとなりました。まずコンサートのご感想をお聞かせください。
ローナ・マギー
(以下L)
本当に楽しみました。日本に帰ることができて良かったです。もちろん仕事としての責任というプレッシャーはありますけれど、それよりも3年ぶりに帰ってこられた、そして演奏を披露できるという喜びのほうが大きかったです。
プログラムを組むときには亡くなったベネット先生のことを思い出しました。先生はバッハが好きでしたし、メロディにすごく重きを置いていた方だったので。先生の演奏自体も楽しかったし、人柄も楽しいものでした。なのでそういった先生の人柄や、どんなものを好まれていたかを加味しながら、今回のプログラムは組ませていただきました。今言ったように先生に捧げる、トリビュートという色が強く出たプログラムかなと思います。誰かのために、先生のために演奏するという意識がすごく強かったので、今回は今までのコンサートと違って、プレッシャーみたいなものがありました。ベネット先生は、いつも演奏のときにご自身の持っているエネルギーを観客に届けるように演奏されるので、自分もそれを意識して演奏に臨みました。
今回のツアーでは、京都公演で伊藤公一さん(名古屋芸術大学名誉教授)・中務晴之さん(大阪教育大学教授)と共演されましたが、お二人と共演された感想も聞かせてください。
L
とても特別な経験でした。お二人と知り合ってもう数年になりますが、とても尊敬しています。私たち全員に共通することはベネット先生の門下だということなので、一緒に演奏することはもちろん、ベネット先生のお話で盛り上がることが、それ以上にすごく楽しかったです。
あとは、同じベネット先生から教えを受けているので、音楽に対する考え方や姿勢にやはり共通するものがあり、そういったところもシェアできました。

次のページへ続く
・ベネット先生との時間
・「歌」がテーマのニュー・アルバム
・首席フルート奏者の役目とは
・良い音楽を作るために

Profile
ローナ・マギー Lorna McGhee
スコットランド生まれ。英国王立音楽院では美知恵・ベネット、ウィリアム・ベネットの各氏にフルートを師事し、卒院時には最優秀成績者を彰する「女王賞」を授与される。卒院後まもなく英国BBC交響楽団首席フルート奏者に就任し音楽活動を始めるが、1998年北米に移住し、2012年よりピッツバーグ交響楽団首席フルート奏者に就任。
協奏曲のソリストとしてもロンドン交響楽団をはじめ世界中のオーケストラと共演。ソロや室内楽でもヨーロッパや北米各地で演奏活動を行なっている。
教育者としての活動も盛んで、ミシガン大学、ブリティッシュコロンビア大学の教授を経て、現在はカーネギーメロン大学で後進の指導にあたっている。
現在ピッツバーグ交響楽団首席フルート奏者、英国王立音楽院名誉会員(FRAM)。
 
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