フルート記事 恩師ベネット先生への思い。私は「その瞬間」の音に集中し、息で歌い、語る。
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THE FLUTE vol.192 Special Interview

恩師ベネット先生への思い。私は「その瞬間」の音に集中し、息で歌い、語る。

ARTIST

ベネット先生との時間

ベネットさんはローナさんにとってどんな先生でしたか?
L
まずは一緒に勉強できたことを、心から感謝しています。すべての楽器を総合してもトップの音楽家だと思います。フルートを吹くということを教えるのではなく、どういうふうに音楽を表現するか、その音楽を通してどんな気持ちだとか、どのようなことを観客に伝えるのかということに、とても重きをおいていた先生でした。先生は人生に向けて、すごく前向きな姿勢をいろんな場面で示されていました。教えていただいているときでも「なぜもっと音楽を楽しまないの? なぜそんなふうに閉じこもっちゃうの?」と。
先生ご自身、何に関しても好奇心旺盛でいたので、そういったことを通して「音楽ってこんなに素晴らしいものでしょう、なぜそれを表現しないの?」と伝えてくれました。
そしてサービス精神の豊かさ、人に対する優しさですね。慈しみや慈愛に満ちてるというんでしょうか、そういった気持ちに溢れていらっしゃる先生です。面白いことが好きで、ユニークな性格だということも印象に残っています。
音楽に戻って話をすると、どういうふうにその音楽の素晴らしさ・楽しさを表現するか、それは先生が一番強く伝えてくれた部分です。ここがダメというんじゃなくて、「この人の書いたこのフレーズが素晴らしい」と、そういう言い方をされる。
そして先生は特別な能力を持っていらっしゃって、生徒さんを音楽に没入させるのがとても上手です。生徒さんがもっと音楽自体に集中できるようにしてくれました。先生はそれにとても長けていらっしゃったなと思います。
 

「歌」がテーマのニュー・アルバム

昨年(2021年)にリリースされたアルバムのことについて聞かせてください。時代や国など、とてもバラエティに富んだ内容になっていますが、収録曲はどのように選ばれましたか?
L
今回のアルバムは、一つテーマが通っていて、すべての曲が「歌」に関係しています。シューベルトの曲は、彼が作曲したメロディの一部になっていて、そのメロディをヴァリエーションで聴かせていくものです。
バッハにしても原曲は鍵盤楽器の曲ですが、元になった曲はアリアがベース。プーランクのカンティレーナも元々は歌でした。『シシリエンヌ』は、直接歌作品に関係しているわけではないですが、メロディ自体のキャラクターがとても歌心に溢れていて綺麗なメロディを持っているのが、ほかの曲と共通しているところかなと思います。『シャコンヌ』と『クリスタルの時』に関していえば、歌に関係するということとはちょっと離れてしまうかもしれないですけれど、2曲ともなにか話をしているような、物語を聞かせるような曲なので、やっぱり言葉として伝えるようなことに関連しています。
そういう意味からすると「歌」ということに繋がってくるのかなというふうに思います。人の声で、言葉で伝えるということに関係している曲だと感じています。私はフルートという楽器にボーカル、歌の要素を感じています。フルートはリードもなく、息を吹き込みますよね。その息というのは歌とか言葉や喋ることで生まれるもので、それを通して楽器が音を奏でているところから、フルートっていうのはボーカル、歌、ひいては喋る、言葉......それらにとても親和性を感じています。そして今回のCDの重心になるような曲が、シューベルトの曲かと思います。すごく素晴らしい曲ですが、あまり演奏する機会がなくて、自分自身でもその曲にチャレンジすることはとても大変な作業でした。
この曲に対して2つのポイントがあって、うち一つは旅、冒険です。曲の初めはスローなムーヴメントでとても懐疑的なイメージから始まるように感じますが、そこから始まって紆余曲折を経て、いろいろな問題を解決して、最終的には長調になり、すごく喜びに満ちた終わりを迎えます。これは人生の旅を表しているように思います。この曲を書いたときに、彼自身が自分はもう老い先長くないと意識していたということがすごく興味深いです。自身が亡くなることを察したにもかかわらず、人生に対してものすごく前向きなエネルギーをあの曲から感じます。素晴らしいです。ヴィターリもそうですが、「人の一生」に対しての指針ではないですけれど、そういったことを音楽で語っているようです。
もちろん美しい音楽、メロディだということが第一です。それと同時にすべての曲から、いろいろな人生観などについて、メロディ自身が語っている。そう感じる曲を今回の CDのテーマにしました。芸術としての美しさと、それからやっぱり人間ドラマですね。
じっくりいろんな方に聴いてほしいCDですね。
 
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