THE FLUTE 146号 Special Contents

フルートのための からだメソッド 〜食事編〜

演奏パフォーマンスUPのための“食”

演奏者にとっての“食”は、アスリートなどとは違ったアプローチが必要です。しかし、どんなシチュエーションでどんな食事のとり方をするのがいいのか……など、演奏者と食をつなげる情報は今まであまり目にすることがなかったものですよね。そこで、3号連続企画「フルートのための からだメソッド」最後のTHE FLUTE 146号では食事編をお届けします。演奏を含めた表現者=芸術家のためのヘルスケアを実践する「芸術家のくすり箱」などで、食事に関するアドバイスを行なっている二人の専門家に、フルート奏者のための食の知識について伺いました。

演奏パフォーマンスUPのための“食”岸昌代、吉田美代子

解説:岸昌代、吉田美代子

岸昌代(写真右)|《パフォーマンス 食サポート》主宰 管理栄養士/公認スポーツ栄養士 日本女子体育大学大学院スポーツ科学修士。日本ダンススポーツ連盟、東京都競技力向上テクニカルサポート事業栄養スタッフ。ビジネスマンをはじめ、選手や芸術家を対象にサポートを行なっている。東京栄養食糧専門学校教員。
吉田美代子(写真左)|管理栄養士、食&色コーディネーター/健康運動指導士。「健康で豊かな生活」「生涯現役」をテーマに、食生活の磨き方、楽しみ方を提案。食事相談、料理教室、セミナーなどで、食と色を通した健康サポートを行なっている。東京誠心調理師専門学校非常勤講師。Oboe愛好家

ここでは、本誌146号特集「フルートのためのからだメソッド」に掲載した記事をダイジェストで、また掲載しきれなかった情報などもまとめて紹介します。

フルート奏者にとっての食事とは

フルート奏者が知っておくべき、本番に向けた“コンディショニング”(=調子を整えること)を考えていきたいと思います。まず、日常的な食事では「主食・主菜・副菜」をそろえることを目指しましょう。そうすると、簡単にいろいろな栄養素をバランスよくとることができ、食事の「量」と「質」を整えることができます。この基本のイメージを覚えておくと、組み合わせ次第で、コンビニメニューでもバランスのよい食事にすることができます。

バランスの良い食事
主菜
パフォーマンスを生み出す筋肉や組織を構成するたんぱく質を多く含む食品(肉・魚・卵・大豆製品)を使った料理
主食
持久力・集中力UP! エネルギー源となる炭水化物(糖質)を多く含む食品(ごはん・パン・めん類など)を使った料理
副菜
ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、体調を整えてくれる食品(野菜・芋・きのこ・海藻類など)を使った料理
乳製品
骨格をつくるカルシウムを多く含む食品(牛乳やヨーグルトなど)
くだもの
 ビタミンCが多いキゥイフルーツ、オレンジ、イチゴなどがおすすめ

日々の栄養補給の積み重ねなくして、いきなり本番のパフォーマンス向上は期待できません。まずは、普段の食事をよりよいものにすることから考えていく必要があります。

本番期間でも上手にパワーを補給する食事のコツ

楽屋にキープしておきたいもの
落ち着いて食べられなかったり、まとまった時間がない、食欲が出ない……など、本番前の楽屋ではなかなか食環境を整えることが難しかったりしますよね。そんなときのために、ちょっとした食品や飲み物などをキープしておいて、空いた時間に食べられるようにしてみてはいかがでしょうか。
楽屋に冷蔵庫があれば冷たいものが保存できますし、電気ポットや電子レンジがあれば温かい飲み物も準備しやすくなります。飲料は、いろいろな形態のものを状況に応じて使い分けると便利です。楽屋に運ぶ荷物が多いときには、粉末のものを持参するとラクチンです。

「衣裳」や「メーク」に影響しない軽食

本番では、衣裳もパフォーマンスの一部。衣裳を汚してしまってはいけませんが、長時間衣裳を身につけている場合、衣裳を汚さない配慮をして「パワーだけは補給しておきたい!」……そこで、「料理・食品選びのポイント」「料理・食品の食べやすい形態」をご紹介します。

《料理・食品選びのポイント》

汁けがでない食品がよい。
◯ おにぎり
◯ チーズ
◯ チョコレート
◯ キャンディ
× オレンジ、いちご
× トマト

《料理・食品の食べやすい形態》

◼︎ 一口大にする
…おにぎり、キューブチーズ、キスチョコ、キャンディ、ドライフルーツ、ナッツ、鈴カステラ、せんべい、ようかん(おにぎりは、のりをつけないほうが、歯や口のまわりに残りません。)

◼︎ 個包装にする
……ラップ、串、楊枝の活用

◼︎ ストローを活用する
……ペットボトルにはストローを活用

リハーサルや本番に備えてトラブルを予防する食事

疲労がたまっているとき、緊張感が続くとき……など、いつもより免疫力が低下し、体調不良を起こすことがあります。そんなときでも本番では力を発揮できるよう、トラブルを予防する食事をご紹介します。

風邪・胃腸炎などの感染症を防ぐ
"手洗い・うがい"をこまめにしましょう。食事前には、石けんを使った手洗いを忘れずに。万が一に備えて、本番の数日前から終了までは、生の肉や魚介類(貝類などの刺身や酢の物)は、食べないようにしましょう。

食欲がなく、いつものように食べられない人は......
水分補給をするだけでも、リラックスやリフレッシュができます。いつもどおりに食べられなくても、大丈夫。無理せずに、食べたいもの、食べやすいものを選んで食べましょう。前述の「楽屋にキープしておきたいもの」なら、手軽に食べられてエネルギー補給もできます。

下痢しやすい人は......
食事は、ごはんなどの主食を中心に食べるとよいでしょう。揚げ物など油をたっぷり使った料理は、控えめに。水分補給は、牛乳やオレンジジュースよりも、水、お茶類、スポーツ飲料などが適しています。みかんなどのかんきつ類には下痢を助長する作用があるのに対して、りんごは下痢を抑えてくれる作用があるので、果物をとるのであれば、りんごのほうが向いています(人によります)。下痢が長引くようであれば、お粥(レトルトでもOK)、スポーツ飲料などを中心にとって、胃腸の負担を軽くしましょう。

便秘になりやすい人は......
なによりも定刻にトイレに行くことが大事。そのうえで、水分補給をこまめにしましょう。みかんなどのかんきつ類やジュースをとることをおすすめします。お腹にガスがたまっているようなときには、食物繊維の多いもの(玄米、豆類、いも類、バナナなど)は控えめにします。

 

ここで紹介した情報は、 NPO法人芸術家のくすり箱が運営するWEBサイト「芸術家のくすり箱」より抜粋(一部改変)させていただきました。
芸術家のくすり箱http://www.artists-care.com



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