フルート記事 第35回|「海の上のピアニスト」
  フルート記事 第35回|「海の上のピアニスト」
[1ページ目│記事トップ]
kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

第35回|「海の上のピアニスト」

LESSON

こんにちは!2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。このコーナーも8年目、そしてkokoro-Neも20年目を迎えました。来年の20周年コンサートに向けて、新しいレパートリー作りに邁進しております。今シーズンもよろしくお願いいたします。
2026-27シーズンも新体制、新プログラムが続々発表されています。どんな熱演を拝めるか楽しみな今シーズン。1曲目は、千葉百音選手の2023-24フリー『海の上のピアニスト』をご紹介します。

1

 

エンニオ・モリコーネ

言わずと知れた映画音楽の巨匠。第21回「ガブリエルのオーボエ」をご参照ください。

映画「海の上のピアニスト」

一度も船から降りたことのないピアニスト「1900」。物語の舞台は大西洋を往復する豪華客船ヴァージニアン号です。船員の機関士ダニーが船に置き去りにされた赤ちゃんを発見します。「1900」と名付けて育てますが、1900が8歳の時にダニーが事故死してしまいます。ダニーの死後、音楽に目覚めた1900は、船内でピアノを弾き始めます。大人になり、トランペット吹きとして乗船してきたマックスと親友になるなど、船の上で様々な出会いや出来事を経験していきます。やがてマックスも船を降り、ヴァージニアン号も戦争で病院船として使われることに。
月日は流れ、戦後。老朽化したヴァージニアン号を解体するために船にダイナマイトが仕掛けられたと聞いたマックスは……

「愛を奏でて(Playing Love)」

1900の評判を聞きつけたレコード会社が、彼の演奏を録音して広めようとヴァージニアン号にやってきます。演奏を始めた1900でしたが、その時に窓辺に見えた少女に一目惚れΣ―(〃°ω°〃)♡→というシーンの曲。
アレンジを変えてストーリー全体にたくさん登場する珠玉のメロディ。音楽が重要な場面でもあるし、曲次第で映画全体の出来栄えも左右されかねません。その圧に応えられるどころか、映画に留まらず、時代を超えて実際の世界で愛され続ける名曲を作ってしまう……改めて、モリコーネの偉大さを感じられる1曲です。

千葉百音選手「海の上のピアニスト」2023-24 FS

振り付けは鈴木明子さん。2024年四大陸選手権の構成とともに追っていきます。冒頭はサントラの「伝説のピアニスト」から始まります。伸びのあるスケーティングで加速して、3フリップ+3トゥループの着氷が合図になるかのように、『愛を奏でて〜Piano Version』に変わります。ピアノの即興を拾い上げるような振り付けとともに、再度加速してフレーズ終わりの落ち着いたところで2アクセル。衝撃を感じさせない美しい着氷が収まるフレーズにぴったりです。

次の3サルコウも♪ファ#ミレミ〜♪に着氷後の流れ溶け込むやいなや、そのまま足換えコンビネーションスピンへ。ブレない、ポジション・姿勢が美しい……その上、メロディの起伏に合わせてポジション変化していくのがたまりません!(なんならスピンに入るとこのエッジの倒し込みから惚れ込んでます♡)

Also35−2

美しいスピンの余韻に浸っているうちに、音源がYo-Yo Ma版の『愛を奏でて』に変わります。チェロ版も良いですよね。そして、ここの足元、あっこちゃんみ(※1)にもくすぐられます。
ヨーヨー・マの伸びやかな音色と、ふわりと跳ぶ3ループ→着氷もまた見事な融合。さらにスパイラルで畳み掛けてきます。1蹴りで伸び続けながら、Y字→ケリガンへの流れるようなポジションの変化も大好物です!

Also35−3

そのまま加速してチェロも山場に向かい、フレーズの落ち着くところでリズムよく3フリップ+2トゥループ+2ループ。メロディを拾い上げるような振り付けと共に再び加速して3ルッツ+2アクセルのシークエンス。チェロのフレーズの終わりからフライング足換えコンビネーションスピン。美しいドーナツの形や、低く沈み込んだ姿勢でも落ちない回転速度……。

既に「ご馳走様です」を連発している状態ですが、この間に曲はサントラの『Crisis』に変わります。「レミファ#ラ」という4分音符が和音を替えながら繰り返される曲です。映画「ミッション」の『滝』と同様に、作品にマイナスイオンの雰囲気が感じられます。

スピンが終わって加速しながら曲は再び『伝説のピアニスト』の中間部に変わります。細波やうねりのように弦楽器がザワザワと重なって、そこに管が加わって厚みを増していく壮大な部分です。「この編集、よく繋げたなぁ」と感心してしまいます。

そんないいとこ取りのトドメが『1900のテーマ』のサビ! メロディは『Playing Love』同じなのですが、こちらはもっと短くて派手なアレンジ。ここまでのジャンプは、フレーズの落ち着いた所に置かれていましたが、最後にきてメロディの盛り上がりに合わせて3ルッツ。煽るの上手い(*≧∇≦)ノ彡☆!! あっこちゃんの「オペラ座〜」の最後のジャンプ(※)も彷彿とさせます。
 
そしてここからのステップが……(@ ̄ρ ̄@)「海の上のピアニスト」と言えば!のスケールの大きな曲想とリンクするように、深いエッジで大きくカーブを描きながら進む様子は、大海原を行く豪華客船のようです。いつの間にかものすごい距離を移動しているリンクカバー率の高さも見応えがあります。そして、ピアノの即興風のフレーズが入るとそれに合わせて細かく刻んでいく足元の動きも粋!

Also35−4
最後は美しいビールマンスピンで締めくくられます。百音ちゃんの魅力を余すことなく詰め込んだ名プログラム。今シーズンの活躍も楽しみです。

※1 第19回でご紹介した鈴木明子さんの「オペラ座の怪人」の『Think of Me』です。
※2 同じく「オペラ座の怪人」の『Music of Night』です。

演奏動画

kokoro-Ne YouTubeチャンネル

サントラの『愛を奏でて(Playing Love)』を元にアレンジしました。これも『ガブリエルのオーボエ』同様に 、

①音数が少なめ
②ハモれない(無理にハモらせると残念になる)
③同じ構成の繰り返し(転調はあります)

3重苦で、サントラの中から抜き出して1曲として成立させるのが難しいパターンでした。ピアノとアルトフルートの役割を入れ替えてみたり、オケからハモりじゃないフレーズ見つけ出しては、残りの2人に割り振ったり……苦労はしましたが、フルート、アルト、それぞれの音色を活かせるアレンジにできたかなと思っています。

楽譜のご紹介

【フルート、アルトフルート(または2本のフルート)とピアノのための 『海の上のピアニスト』 より 「愛を奏でて」】
アルトフルートを使用せずフルート2本でも演奏できるオプション譜付きです。 是非、ご活用ください。ご紹介したkokoro-Neの楽譜はkokoroneshopでお求めいただけます。
kokoroneshop➡️https://kokoroneshop.thebase.in/items/160751843 

 

【アルソ出版刊】楽譜│演奏&ピアノ伴奏カラオケCD付
「FLUTE on ICE」
今回取り上げた『愛を奏でて』のほか、ドビュッシー『夢』、ピアフ『愛の讃歌』などフィギュアスケートで使用された楽曲を集めた曲集です。
お買い求め・詳しくはコチラから➡️ALSO ONLINE



 

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。

kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
(メルマガ会員募集中です。詳細はこちら)

 




フルート奏者カバーストーリー