田村真寛 サクソフォン・リサイタル「交錯する血、文化」

2020年12/18(金)横浜市青葉区文化センター フィリアホール
[演奏]田村真寛(Sax)、黒岩航紀(Pf)
[曲目]G.フィトキン:ゲート/佐藤聡明:ランサローテ/挾間美帆編:ジャズ・スタンダード集/A.デザンクロ:プレリュード、カダンスとフィナル/W.オルブライト:アルト・サクソフォンとピアノの為のソナタ

二度目の緊急事態宣言が出る少し前の、12月。隣との距離を置いて座る座席配置にもすっかり慣れたこの1年を振り返りつつ、席に着く。田村真寛氏のリサイタルのテーマは「交錯する血、文化」。現代の作品を集めた、しかし前衛的な現代音楽というよりはもっと情感に溢れる、まさに“血”や“文化”を感じさせる音楽の集大成である。
G.フィトキンの『ゲート』というミニマル・ミュージックで客席を圧倒するところからの幕開け。ピアニスト・黒岩航紀氏との絶妙のコンビネーションが、ソプラノサックスの演奏をよりテクニカルに聴かせる。演奏時間8分という小品ではあるものの、音楽の広がりと奥行きはその枠を超え、さらにその勢いのまま最後まで走り続ける……そんな疾走感のある演奏だった。
世界的な活躍を見せる作曲家・挟間美帆による『ジャズ・スタンダード集』やオルブライト『アルト・サクソフォンとピアノの為のソナタ』など、すべてが聞かせどころのプログラム。印象的だったのは、アンコール曲となった、坂本英城による『The Final Time Traveler』だ。もともとはゲーム音楽でありボーカル曲だが、アルトサックスとピアノバージョンにアレンジされ、エンディングにふさわしい美しいハーモニーとなった。
田村は、プログラムに寄せた文章の中で《作曲家がその耳の中にある音を変換して「楽譜」として生み落としたものを、演奏家が読み解き音として発していくわけですが、その瞬間まったく別の新たな命が生まれていくのです》と書いている。世界中が体験したことのない不安に覆われたこの年の暮れに、小さいけれど新たな命を感じさせる、そんなステージだった。