サックス記事

ジャズの方程式を見つけるために毎日の練習がある

小池修 インタビュー レッスン編 THE SAX#53
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ジャズは偶然の産物ではない

アドリブのインの歌い回しとそのアウトサイドの時のメカニカルなプレイとかの、バランス感覚が難しいと思います。そういった部分での練習法や心がけはありますか。

小池 僕の場合は、たとえばオーディエンスの人を置いてけぼりにすることも多々ありましたよね、昔は
でもどうやっても、カッコいい人はカッコいい。だから、そのカッコいい人をまず真似る。
ジャズのアドリブっていうのは、数学といっしょなんですよ。必ず方程式があって、その答えがある。ただその答えに行きつくまでが、数学と違って方程式がいくつかある。まずこれを勉強すると、どういうふうに使い分けしていいかっていうのがわかってくると思います。だからここ勉強しなきゃだめなんですよ。ジャズは偶然の産物なんてないんです。僕たちプロは、吹いてはいけないことを吹かないように習慣付けしているわけです。そのために毎日練習してるのです。
ただその方程式を見つけるっていうんですかね、ここで足止めくらっている人が結構多いと思いですね。それを乗り越えるには、もう聴くしかない。好きこそものの上手なれとは、良く言ったものです。

かっこいいサウンドをどう出すかということですね。

小池 まずは、真似できないと無理ですよね。僕は弟子にもよく言うんですよ。「高い月謝払って僕のところ来て、何を求めてきているのか?」って。ほとんどの生徒は突然変異を求めてきているんです。僕のレッスンを受けたら、突然上手くなれると思ってきている。そんなことは、ありえないわけです。音楽に突然変異なんて、絶対ないんです。

レッスンでは方向性は示すことはできますけど。
自分でやらないと、 そのやり方自体もジャズが生まれてきてからずっと変わらないですよ。日本には人の真似はするなって変な風潮がありますよね。それは単一テクニックを出してしまうから、人真似になるわけで、アベレージを上げればそんなことはないわけです。でも、アベレージを上げるためには、分析して模倣が必要ですよ。

楽器選びの基準を聴かせてください。

小池 いろんな選び方の人がいると思うんですけども、僕は音色は二の次なんですね。音色は、吹いていけば、自分の音って付いて行くと思う。最初から良いものっていうのはありえません。ただ経験をしている人ってというのは、どの楽器を吹いても良い音色を出せるんですよ。
それよりも、僕が一番重要視しているのは、やっぱり道具としていいかどうか。サックスは置きものでもなければ宝物でもないし、一番の道具です。だから、包丁だって研がなきゃいけないでしょう。
ただ、いい道具を選ぶためには、自分のアベレージを上げて、音程も良くしないといけない。サックスなんていうのは、不完全楽器ですから、おおよそ押えれば近い音は出ますけど、正確な音程なんて出ません。それを正確な音に出すためのリスクや吹いている本人にどのくらいウェイトがかかるか、コントロールしやすいか、が大事ですね。だから、ヴィンテージの良い楽器でも、音程が悪い楽器は僕は絶対に吹かないですよ。

音程と操作性が最優先で、音色は二の次ということですね。

小池 そうです。マッチすれば自分の言葉、つまり音色が出るようになりますよ。

ありがとうございました。




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