トランペット記事 聴いておきたいCD10選 & Event Report
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ラインホルト・フリードリヒの魅力解剖

聴いておきたいCD10選 & Event Report

MUSIC

ラインホルト・フリードリヒ(RF)を深く知るためのディスクを編集部と相談して独断と偏見により厳選(従って苦情などは編集部にお願いしますね)。まずは、これら歴史的な録音から、その魅力に触れてみては!?
(文:榎本孝一郎)

[Event Report]浜松ブラスフェスティバル

[曲目&出演者]
第1部 R.フリードリヒと日本の弟子たちによるソロ、アンサンブル
♫ 9本のトランペットのためのファンファーレ 作曲:岩田 恵子
♫ ナクシェ・ジャハーン 作曲:F・バーラミ
♫ 花の章 作曲:G. マーラー
♫ 美しいトランペットが鳴り響くところ 作曲:G. マーラー 
♫ 日本歌曲集より さくら、荒城の月 編曲:T. ドクシツェル
♫ 新しい劇場のためのファンファーレ 作曲:I. ストラヴィンスキー
♫ 2本のトランペットのための協奏曲 作曲:A. ヴィヴァルディ
♫ 聖エドモンド墓地のためのファンファーレ 作曲:B. ブリテン
♫ 新ヴェニスの謝肉祭 作曲:T. スティーブンス
[出演]ラインホルト・フリードリヒ/大西敏幸/中澤孝之/菊本和昭/高野楓/川上友貴乃/川田修一/矢野瑞希/岩田恵子(Tp)、竹沢絵里子(Pf)

第2部 3人のジャズトランペッター達による競演
♫ 聖者の行進 ♫ Over The Rainbow ♫ On The Sunny Of The Street ♫ Stardust ♫ Lotus Blossom
[出演]小松悠人/中村恵介/長瀬良司(Tp)、小関信也(Pf)、奥村貴宏(Bass)、日内地貴則(Ds)

第3部 R.フリードリヒと日本の弟子たち & フィル浜金管・打楽器セクションによる金管大合奏
♫ 展覧会の絵 作曲:M. ムソルグスキー/編曲:岩田 恵子
[出演]岡本篤彦(指揮)、ラインホルト・フリードリヒ/岩田恵子/菊本和昭/川上友貴乃/川田修一/矢野瑞希/大西敏幸/高野楓(Tp)、齋藤磨理子/森田めぐみ(Hn)、塚本修也/濵口祐輔/小野和将(Tb)、吉田志津代(B.Tb)、山崎由貴/小久保まい(Euph)、栗原良紘/山本和邦(Tuba)、青島未知/平松浩一郎/野々村俊輔(打楽器)

第4部 R.フリードリヒのソロ with 浜松ブラスバンド
♫ ラプソディー・イン・ブルー 作曲:G. ガーシュウィン
[出演]水越真樹/駒井宏光/市東大知/村上純也/亀山敏昭/高村佳寿美/和田幸平/木本麻衣子(Cor)、末永司(Flh)、他

美音全開〜「浜松ブラスフェスティバル」でのフリードリヒ
「浜松トランペットフェスティバル」10周年を迎えて改称

浜松といえば「うなぎ!」と即答するのは一般ピープル。本誌読者なら迷わず「ラッパの街!」と答えていただきたい。なぜなら、ここはおそらく日本で唯一、信号ラッパをお祭りに使う街であり、言わずと知れた世界最大の楽器メーカー「ヤマハ」や、ユニークな楽器やアクセサリーを生み出す「ベストブラス」の本拠地であり、そして今回素晴らしいフェスティバルを開催した「浜松トランペットサークル」(HTC)の活動拠点なのである。
亀山さんの記事にあるように、HTCは浜松伝統の信号ラッパ文化と、現代日本の音楽文化のなかでもはや除外できないくらいのパワー(良きにつけ悪しきにつけ)を内包する吹奏楽文化との融合を目指したサークル活動、という点で、全国には類例を見ないものだ。毎年5月に開催される「浜松まつり」と並び、HTCが開催する「例会」(彼らはそういう呼び方はしていないが)「浜松トランペットフェスティバル」は、全国のトランペット愛好家から熱い視線を浴びてきた。10周年を迎える今年、彼らはトランペットのみならず金管楽器全体にまで裾野を広げて「浜松ブラスフェスティバル」と銘打って、周年企画にふさわしい意欲に溢れた挑戦を試みた。まずは、ヨーロッパでいま最大の注目を集めていると言っても過言ではない希代の名手、ラインホルト・フリードリヒをゲストに招いたこと。次に、浜松にゆかりのある優れた音楽家たちが結成した「フィルハーモニックウインズ浜松」(PWH)ならびに「浜松ブラスバンド」(HBC)を中心に、画期的な四部構成のプログラムを組み、それを大成功させたこと。この二点は、大袈裟な言い方に聞こえるかもしれないが、日本の金管楽器の歴史に記念すべき1ページを加えた、と言って過言ではない。ラインホルト・フリードリヒという当代きっての手練れの独奏、そして彼が育てた3人の弟子たち(いずれも在京のプロオケを背負って立つ逸材だ)による独奏やアンサンブル、そして彼らを重要なポストに配置した金管合奏など、開幕から終演まで1秒たりともステージから目や耳が離せないという、実に充実した数時間を彼らHTCは醸成することに成功した。

午前中から、続々と集結するアマチュア参加者の皆さん

トランペットとピアノだけで描かれる西洋と東洋を繋ぐ奥深い世界

概要は別掲に譲り本文では特筆すべき点を述べるにとどめるが、ラインホルトと竹沢絵里子(Pf)による演奏では特に、ジョージ・アンタイルの『ソナタ』に代わり初披露されたナクシェ・ジャハーンNaqsh-e Jahan作曲『フェレイドウン・バーラミ』(Fereydoun Bahrami)という作品だった。イランの作曲家がラインホルト・フリードリヒと竹沢絵里子のデュオのために書いたというこの作品のタイトルは「世界の縮図」というような意味を持つイランの名所(イスファファーンに存在する)に由来し、音楽的には西洋と東洋の中間を揺蕩(たゆと)うような、不思議な響きに溢れたもの。わずか10分に満たない小品ながら、トランペットとピアノだけで描かれる奥の深い世界に強く感銘を受けた。ご本人はバロックから現代曲までという レパートリーの広さに定評があるが、唯一「ジャズに関しては残念ながら門外漢」と本誌取材に対して本音を語ってくれたが、本作の演奏は中東の音階と思しき独特の世界観を見事に伝えてくれて、そしてそれは時にある種のジャズ……もしくは民族音楽的なサムシングエルスを感じさせてくれたのである(特殊な形状を持つミュートも非常に効果的だったと愚考するが、それが作曲家の指定なのかラインホルト自身の選択なのかは現時点では不明。11月の来日時に再取材ができたなら報告できるかもしれない)。
コルネットの名手である岡本篤彦指揮の浜松ブラスバンドとは、ドクシツェル編曲をベースにした『ラプソディ・イン・ブルー』で、悠然かつ闊達なるソロで観客を圧倒した。さらに驚いたのは、金管アンサンブルによる『展覧会の絵』。大西の堂々たる独奏で始まるラヴェルをベースにしたと思しきアレンジ(担当は岩田恵子)は、時にはラインホルトを含むピッコロトランペット4本が絶妙なアンサンブルで魅了するなど、トランペット愛好家には聴きどころ満載の洒落た(演奏する方はさぞかし大変だったとは思うが)演奏で、すっかりお腹いっぱい。不思議なことに、ところどころで管弦楽の、特にストリングスの響きが聴こえてきたのには驚いた。ラインホルト以下、編曲者の岩田を含む手練れたち4本のピッコロの効用か?また、吹浜松出身の世界的ユーフォニアミスト小久保まい、そして、彼女に次ぐ次世代の名手である山崎由貴の演奏(ヴィドロは山崎のソロ)という素晴らしいユーフォニアムセクションにも心惹かれた。

「展覧会の絵」で大活躍したトランペット陣
ピンクの髪がオシャレな岩田恵子さん。今回の『展覧会の絵』のもとになった金管合奏の譜面はネクサス音楽出版から発売中。かなり歯応えありそうだが、挑戦する価値あり!
 
最後の大合奏では、2階席から朗々と!

日本金管楽器の歴史にしっかりとその功績を刻まれるべき企画に

トランペットといえば忘れてはならないのが、ジャズの分野。静岡が誇る俊英、小松悠人と長瀬良司に加え、NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」でも活躍した中村恵介も加わり、トラッドからモダンまでジャズの名曲を楽しませてくれた。
コンサートの最後は歌劇『アイーダ』から「大行進曲」。指揮は浜松ブラスバンド同様、現在、浜松学芸高等学校芸術科音楽課程教諭である鈴木彰久。演奏にはラインホルト以下、本日参加したプロを始め、静岡県内並びに全国各地からやってきたアマチュアも参加。また、ヤマハの協力によりカラヤンの依頼で作られた3本のアイーダトランペットも登場して華を添えたあたりは、楽器の街浜松ならでは。
これだけの規模のイベントが開催できたのは、「周年記念企画」だから……という側面はあっただろうけれど、今回の企画は大袈裟ではなく日本金管楽器の歴史にしっかりとその功績を刻まれるべきものだ、と拝察する。願わくば来年以降もこの勢いで、なんだかパッとしない話ばかりの令和の日本に元気を与え続けていただきたいものである。(本文中敬称略)

ヤマハ秘蔵のアイーダトランペットが3本勢揃い!
打ち上げにて。「バロックから現代作品まで演奏するけど、残念ながらジャズまでは無理だった。ジャズマンには憧れてるんだ」と語るラインホルトさん(左)と、照れる中村恵介さん

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