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金澤恭悦のリペアマンへの道! -番外編-その1 サクソフォン誕生の歴史

Wind-i mini 19号 -番外編-

番外編 その1 サクソフォン誕生の歴史

代官山音楽院、管楽器リペア科で行なわれる実際の授業を追いながら、代官山音楽院主任講師の金澤恭悦先がリペアの基本、そして技術が現場にどのように活かされているかを解説してもらうこのコーナー。今回からは番外編! 今までの連載で載せきれなかったこぼれ話を掲載していきます。今回はサクソフォン誕生の歴史についてまとめました。

サクソフォンという楽器は、アントワーヌ・ジョセフ・サックス(1814 ~ 1894:通称アドルフ・サックス)が作った楽器です。ベルギー生まれ楽器製作者で、サクソフォン以外にもサクソルンと呼ばれるE♭管とB♭管の二種類で統一された金管楽器群を開発しています。
サックスが生まれた年、日本で は滝沢馬琴作『南総里見八犬伝』の 刊行が開始されています。また、サックスがサクソフォンの特許を取った年、日本にはアメリカ使節のジェームズ・ビッドルが来ますが、 幕府が開国を拒否しています。このように日本の歴史と絡めながら見ていくと興味深いですよね。
サクソフォンは元になった楽器というものがほとんどありませんが、開発された当初からカルテットを演奏できたり、『アルルの女』を演奏できたりするほど完成度の高い楽器でした。もちろんサックスはオーボエなどさまざまな楽器やそのシステムを参考にしたと言われていますが、その中でもテオバルト・ベームが最初フルートに導入した「ベーム・システム」がサクソフォン、ひいては木管楽器全体に及ぼした影響はとても大きなものがあります。しかし、「ベーム・システム」とは何かと訊かれてぱっと答えられる人はなかなかいません。ここでは、ベームがフルートを主にどのように改良したかということをおさらいしておきましょう。

テオバルト・ベームの改良

トーンホールを大きくした

以前よりトーンホールを大きくすることで、奏でられる音量の幅を改善しました。

管体を金属製にした

フルートを金属で製作したことで、より大きな音を楽に出せるようになりました。

フルートの管体・頭部管の変更

円錐管だったフルートの管体を円筒管にし、円筒管だった頭部管を円錐管にした。この改良により、フルートの音程がより正確になりました。

 

フルートの管体・頭部管の変更
フルートの管体・頭部管の変更 フルートの管体・頭部管の変更

複数のキィを連動して動くようにした


複数のキィを連動して動くようにした

リングキィを採用し、一つのキィを押さえることで複数のキィが動くシステムを開発しました。この発明が特に画期的だったと思います。

他にも「D管が主流だったフルートをC管にした」など、ベームさんは1832年頃から革新的な発明を次々と発表したのです。キィのシステムや、金属製の管体はサクソフォンに大いに活かされていますよね。
サクソフォンが登場した当初から、ベルリオーズやマイヤベーア、 ロッシーニ、リストなど当時の作曲家が関心を示したようです。特にベルリオーズはさまざまな記事や論評で賞賛していたようです。
もちろん今の時代はネットで調べればこのあたりのことはすぐにわかりますが、授業で扱わなければ調べるきっかけができないですよね。どこかでその話を聞いたな、 ということが後々どこかで役に立つ、というふうに、必ず知識はつながっていくはずです。


Profile|金澤恭悦

69年日本管楽器(株)入社。日本楽器製造(株)(現ヤマハ)と合併後、本社にてクラリネットの開発に携わる。77年に開設された「ヤマハアトリエ東京」の初代スタッフとして木管楽器の専門家対応を22年間担当。特にサックス奏者ソニー・ロリンズ氏からの信頼は厚い。更に北米の修理技術を視察、アジアにおいても技術指導を行なうなど海外でも活躍。現在は代官山音楽院主任講師、リペア工房atelier kanazawa主宰。

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