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金澤恭悦のリペアマンへの道! サクソフォンバランス調整編 その2

wind-i mini 10号 -第4回-

第4回 サクソフォンバランス調整編 その2

代官山音楽院、管楽器リペア科で行なわれる実際の授業を追いながら、代官山音楽院管楽器リペア科主任講師の金澤恭悦先生にリペアの基本、そしてその技術が現場にどのように活かされているかを解説してもらうこのコーナー。第3回からサクソフォンのバランス調整を勉強しています。第4回となる今回はバランス調整には欠かせないリークライトのことから教えてもらいましょう。

リークライトこれがリークライト

バランス調整に欠かせない道具のひとつに、リークライトというものがあります。管体の中にライトを入れ、内側からの光の漏れを見ることで、タンポとトーンホールの間に隙間がないかを確かめます。以前はナツメ球などで製作していましたが、今はより広い範囲を一度に調べられる蛍光灯や、発熱の少ないLEDを使用することが多くなりました。昔、あるプロ奏者がリークライトをケースの中に入れて持ち歩いているのを見て感心したことがあります。調子が悪い時に、自分が悪いのか楽器が悪いのかをはっきりさせるためでしょうね。

楽器のバランスがとれていると光が見えませんが、とれていないとこのように光が漏れます楽器のバランスがとれていると光が見えませんが、とれていないとこのように光が漏れます

そしてしっかりとバランス調整をできるようになるためには、ある程度リペアマン自身が楽器を吹けなければいけません。リークライトを使っても、視覚だけでは見きれない部分がどうしても出てくるので、実際に吹いてみて聴覚を使って判断することも必要になります。リペアマンはプレイヤーと同じくらい吹けるようにはなかなかなれませんが、少なくともプレイヤーと同じ感覚で音の違いを判断できるようにはなりたいですね。
そもそもバランス調整とは、離れた場所にある複数のタンポ同士が間違いなく同時に閉じるようにすることを指します。第2回の分解編でもお話しましたが、ベーム・システムを採用している木管楽器は、しっかりと然るべきキィが同時に閉じないと上手く音が出ないんですね。お客さんから楽器を預かる時、「外れてしまった、ここのコルクをつけてください」などと依頼されることが多いのですが、リペアマンから見るとその部分だけではなく、楽器全体のバランスが崩れていることも多いです。

紙ヤスリでコルクを削ることでバランスを調整します紙ヤスリでコルクを削ることでバランスを調整します

こまめに楽器をメンテナンスすることで、初めて楽器の性能が十分に発揮され、がんばって積み重ねてきた練習が報われます。捻挫した足ではいくら練習しても良い記録が出ないのと同じことです。コンクールなど大切な本番の直前に楽器屋さんに駆け込むことがないように、普段から楽器屋さんに通って定期的に楽器をメンテナンスに出すようにしましょう。楽器屋さんは楽器を吹く人にとっては遊園地です(笑)。新しい商品がどんどん入荷しますし、店員さんと仲良くなればここでは書けないような裏情報もきっと教えてくれますよ。

サックスリペア授業

 


Profile|金澤恭悦

69年日本管楽器(株)入社。日本管楽器製造(株)(現ヤマハ)と合併後、本社にてクラリネットの開発に携わる。77年に開設された「ヤマハアトリエ東京」の初代スタッフとして木管楽器の専門家対応を22年間担当。特にサックス奏者ソニー・ロリンズ氏からの信頼は厚い。更に北米の修理技術を視察、アジアにおいても技術指導を行うなど海外でも活躍。現在は代官山音楽院主任講師、リペア工房atelier kanazawa主宰。

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