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【新連載】田中覚のリペアマンへの道! ティンパニ編

Wind-i mini 22号 第1回

第1回 ティンパニ編

来年度4月から「島村楽器テクニカルアカデミー」と改称することに合わせ、日本で唯一「コンサートパーカッションリペア科」を新設する代官山音楽院。本格的なリペア・メンテナンスだけでなく知識、社会性・音楽性をも身につけることができる新学科の開講に先立ち、主任講師の田中覚先生に「楽器別リペア・メンテナンスについて」お話しいただきました! 記念すべき第1回目は「ティンパニ編」です。

チューニングについて教えてください。

ティンパニは大きい順に32”が「レ~シb」、29” が「ファ~レ」、26”が「ラ~ファ」、23”が「ド~ラ」と、それぞれのサイズで音域が決まっていますが、まずは一番低い音から合わせてください。同時に各チューニングボルトがすべて同じくらいの締め具合になっているかということを確認できると良いですね。
車で例えると、調子が悪いなと思った時、ほとんどの人がタイヤの空気圧を確認した上でサスペンションなどをチェックしますよね。ティンパニも一緒で、まずは最低音を合わせると何が不調なのかだいたい分かります。これを習慣づけてもらえると良いです。

破れていなくても定期的にヘッドの張替えは必要ですか?

田中覚

必要です。特に4台のうち真ん中の2台はよく使われる音域で、使用頻度が高く消耗が早いので、両端2つよりも張り替えるサイクルが短くなります。ヘッドを反転させ、打点を180度回転させる方法をたまに見かけますが、ティンパニは叩いた箇所の対角線上の場所が響きを出している(この場合は傷んだ箇所が響きを出している)ので音は良くありません(これがもし本皮ならケアすることである程度張りが回復します)。音程と響きがないとティンパニとは言えませんから、反転させることはプラスチックヘッドにはあまりお勧めできない方法です。
“どのくらいの期間で”という平均を出すのは難しいですが、ティンパニヘッドは各サイズの最低音から音が悪くなっていきますから、各サイズ共に低めの音(最低音付近)で演奏しなくてはならない時は、できれば新しく張り替えていただきたいです。2 ~ 3年に1回の交換をお勧めします。

片付けについて教えてください。

ヘッドはもちろんのこと、手が触れたフレーム部分もクロス等で拭いてください。楽器用のクロスがない場合は、普通のタオルで良いので拭きましょう。
楽器庫等にしまう時に毛布を掛けることは、毛布の繊維が油の付いたテンションボルト付近に付着して汚れてしまいますのであまりお勧めできません。だからと言って専用のカバー等がない場合は何も掛けないのではなく、せめて外からの埃からも避けられ、繊維質が出ないブルーシートなどをかけると良いでしょう。
各サイズ共に最低音にして張力を緩めておくとヘッドが長持ちしますが、運ぶときはペダルを踏んで張力を高くしておきましょう。運搬中に物が落ちてきた場合でも反発によってティンパニ本体の被害を最小限に抑えることができることと、転がして運んでいるときに振動で楽器の精度が悪くなるのを防ぐためです。

 


Profile|田中 覚

1993年4月から2007年9月まで株式会社コマキ楽器パーカッション・シティに勤務。この間、新日本フィルハーモニー交響楽団の近藤高顯氏にティンパニ演奏とティンパニマレット・リペア、作成を師事。2007年9月より打楽器リペア業務を主としたマチュア・パーカッションを立ち上げた。2008年~ 2014年の7年間、札幌で毎夏開催されているPMF 音楽祭で使用される全打楽器の保守管理やセッティングを担当。国内外の多くの奏者や専門家と交流を持つ。

 

INFORMATION

代官山音楽院のオープンキャンパスが2016年8月27(土)、28日(日)と開催予定です。
夏休み最後の土日で自分の将来を見つけるチャンス! お友だちを誘って見学へ行ってみよう♪

▶▷http://www.alsoj.net/wind-i/magazine/view/515/1486.html◁◀
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▶▷http://www.daikanyama-ongakuin.com/event/opc/◁◀

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