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堀田敏男のリペアマンへの道!|パーツ交換編

Wind-i mini 30号 最終回

今年4月から「島村楽器テクニカルアカデミー」と改称した代官山音楽院は、本格的なリペア・メンテナンスだけでなく知識、社会性・音楽性をも身につけることができる音楽技術学校です。同校の管楽器リペア科で金管楽器を中心に修理技術を教えているのが堀田敏男先生。同先生による金管楽器編も今号で最終回。ご愛読ありがとうございました。

 

▶ 第1回|リペアマンに必要なこと編
▶ 第2回|クリーニング編

最終回 パーツ交換編

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金管楽器における軟物とは?
堀田
消耗部品のコルクとフェルト、そしてピストン楽器でいうところのピストンバネがそうです。トランペットはピストンの内部に入っている内バネ式になりますが、ユーフォニアムやチューバではケーシングの下側、つまりピストンの下にバネが付いています。これを下バネ式と言います。
軟物のコルク、ゴム、フェルト / 内バネ式のピストン

軟物のコルク、ゴム、フェルト / 内バネ式のピストン

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ピストン楽器でパーツ交換ができるものは?
堀田
ピストンフェルトと、笠フェルトです。みなさん金属の雑音を防ぐためにフェルトがあると思っていますけど、実はとても重要なパーツなんです。ピストン管には穴が開いており、ピストンを押した時、抜差管に息が通るように穴が調整されています。開放の時はピストンフェルト、押した時は笠フェルトでストローク調整をしているので、スムーズに息が通るわけです。フェルトが薄かったり、逆に厚かったりすると穴の位置がずれて息が通らなくなり、つまることがあります。だから、フェルトは金属同士の接触を防ぐというよりも穴の位置を決めるものなんです。息の抜けが良くないと感じた時はフェルトの状態も確認したほうがいいですね。
また、ウォーターキィでは楽器によってコルクとゴムが使い分けられていますが、音色的にはそれほど変わりません。ほかに、トロンボーンのスライドストップコルクがあります。その名のとおりスライドをストップさせるためのもので、管体の内部に付いているので外側から見ることはできません。
トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

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ロータリー楽器にはどんなものがありますか?
堀田
ロータリー楽器では、ピストン楽器のフェルトと同じ役割を果たすのがロータリーストッパーゴムです。このゴムが、薄くなると通常より多く回転してしまいますし、厚くなると途中で止まってしまって穴の位置がずれてきます。一部の楽器では、ゴムではなくコルクを使っていることもあります。
トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

トランペットのカットモデル。息の流れがわかる

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自分で交換できるものと、できないものは?
堀田
トランペットだったらフェルトとコルクだけなので、自分で交換できると思います。ロータリー楽器のロータリーゴムについては、外す時が面倒ですし、楽器を傷つけることもあるので楽器店にお願いしましょう。
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パーツ交換時の注意点、それぞれの交換時期は?
堀田
フェルトは重要なパーツなので定期的に交換しましょう。中・低音楽器なら半年に1回くらいは交換してほしいですね。フェルトは管体に発生した緑しょうを吸収して緑色に変化してきます。目安としては一部でも緑色に変色したら交換してください。
またウォーターキィは、接触部分の溝が深くなると息漏れが起こってしまうので、その時は交換してください。

 


堀田敏男

Profile|堀田敏男

1975年ヤマハ株式会社入社。84年ヤマハ北海道管楽器サービスセンター勤務。管楽器リペア・メンテナンス業務と、特約楽器店担当者の育成に尽力。95 年ヤマハ銀座店配属。セ一ルスエンジニアとして都内音大・陸上・海上自衛隊音楽隊の担当。99年ヤマハ管弦打学校営業部勤務。北海道・東北・東海・関東 地区のヤマハ特約店若手技術者のサポート育成。各地区トップ校ブラスバンドのメンテナンス同行訪問。吹奏楽指導者講習会のメンテナンス研修会を企画担当し 講師も務める。2013年ヤマハ株式会社を退社し現在に至る。

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