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vol.16「合わせの醍醐味とは?」

THE SAX vol.38(2009年11月25日発刊)より転載

最近のスガワ

皆さんこんにちは。芸術の秋、今年も各地でたくさんの演奏会が行なわれましたが、その中で皆さんにとって、素晴らしい出会いはありましたか?
僕はこの時期、またたくさん演奏の機会をいただきました。珍しい企画としては、佼成の同僚サックス奏者である栃尾克樹くんと結成した“方南町バスカーズ”のサロンコンサート。笑えるステージになりましたので、ぜひレポートをご覧くださいね(THE SAX vol.38に掲載)。
今後もたくさんのステージに出演させていただく予定で、年明けにはヤマハ所沢店さんの企画で、たくさんのサックス愛好家とステージを共にする機会(みんなで創る音楽会/THE SAX vol.38参照)もいただき、ただいま準備中です。この他、いろんな会場で皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています。

 

 

合わせの醍醐味とは?

この時期、アンサンブルに挑戦する人も多いのではないでしょうか。僕も、ピアノとのアンサンブル、サックスとのアンサンブル、そして吹奏楽と、いろいろな編成でアンサンブルをしています。今回は、その「合わせの醍醐味」についてお話ししてみましょう。

基本的にオーケストラ、吹奏楽などは指揮者の合図で音の始まりやニュアンスを合わせていきますが、管楽器は、その合図に加えてブレスが大切な合図になります。そこを合わせることが、出だしを合わせるための極意であり、同じ感覚で音楽を創り上げていく、言わば「合わせの醍醐味」と言えるでしょう。

皆さんは初めて人と合わせたときに、「せーの」などの合図を出しても合わないという経験をたくさんしていませんか?それは目で見る合図だけで合わせる難しさを体験する最初の機会だと思います。音を出す前に少し動いて音を出す人もいますし、ほとんどわからないくらい少しの動きで合図を出す人もいます。「ここで音を出したい」と思っても、そのテンポで前の動きに合わせて全員が出ることは、やはり難しいものです。「せーの」「さん、はいっ」とやったときに、自分はそのテンポで動いているつもりでも他人にはその通りに動いているように見えなかったりする。それがズレる原因です。それでズレてしまうから、何とか伝わるように合図しようと思って大きく力を入れると、余計に体の動きが不自然になって合わなくなる。みなさん、そういう経験をされているでしょう。

でも、この「何で合わないんだろう?」という経験をすることが成長の一歩なんです。原因を考えてみると、体の動きで表そうということ自体、管楽器では難しいんですね。息の吸い方、楽器の大きさや形によっても体の動きが微妙に違ってくると思います。

ではどうすれば良いか。ここで出てくるのが「ブレス」の重要性です。ブレスの取り方も厳密に言えば一人一人違いますが、その曲のテンポに合わせて吸うという作業は、だれでも同じタイミングになると思います。

吹奏楽やオーケストラなど、指揮者がいる場合は、指揮者が予備の拍を出したときに一緒に息を吸って、その指揮者の棒が動くタイミングと同じイメージで息を吸えるといいですね。でも、そうやっているつもりでもなかなか合わないということがあるでしょう。その原因のほとんどは、曲の最初の音を出すとき、黙って体を止めて待っていて、指揮棒が上がった瞬間に息を吸って吹くからその前に体が固まってしまうんです。良いブレスも吸えず、その後も乱れてしまいます。

その場合、曲の出だしは、指揮者が合図するもう1拍前を感じてみてください。つまり、音が出る2拍前で息を吐いて、1拍前で指揮者と一緒に息を吸う。4拍子の曲ならば、「1〜2→準備、3→吐く、4→吸う」ということができれば、ほとんどの場合魔法のように音が合うんです。

息を止めて、体が固まっている状態で息を吸うということは、息が入ったつもりで実はうまく入っていないことが多い。特にコンサートの本番などは、緊張して体が硬くなり余計に息が入らないことが多いですね。そうすると乱れてしまいます。ですから指揮者がいる場合は「さん(吐く)、はいっ(吸う)」のタイミングで息を吐いて吸う。最初にそれができるといいですね。

その応用で、普段演奏や練習をするときに、最初は「息を出して吸う」ことをインテンポでやっておくと、直前で息を吸うポイントを自分で自然に身に付けることができます。テンポの中で音楽のニュアンスに合わせてブレスを吸うということが一番大事なことなんです。

また、音を出す2拍前で息を吐くと身体がリラックスしますよね。リラックスしたらその後、自然に息がたくさん入ります。そうすると人間の体は自然にそのまま、そのテンポでいいように跳ね返って息が出てくれる。ブレスで予備のリズムを作っておくことによって良いリズムができる。それは合奏の練習などでやってみるといいでしょう。絶対効果テキメンです。

1拍前で息を吸うという感覚を覚えると、フレーズの途中で息を吸うときもその吸い方ができるようになります。曲の最初や長い休みの後などは、2拍前で吐いて1拍前で吸うということを普段からやっておくと良くなります。

これは、合わせる人数が4人だろうが8人だろうが2人だろうが、実際は全部同じなんです。リーダーの人が一応体で合図を出しますが、やっぱりそのときに一緒に息を出して吸う。これが一番大切ですね。

ピアニストと演奏するときも同様です。ピアノは息を使わなくても弾けますが、良いピアニストは音楽の流れで常にブレスを取っています。一緒に息を出して吸うという動作をすると、今までよりも合いやすくなるでしょう。

 

次回のテーマは「合わせの醍醐味〜その2 ブレスの取り方とタイミング」。
曲中で良いブレスを取るためのコツについてお話しします。お楽しみに!

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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