イベント・レポート

BUFFET CRAMPON 新製品発表会 2023

2023年11月某日、都内にある株式会社ビュッフェ・クランポン・ジャパンにて新製品発表会が開催され、ショールーム内には多くの楽器店関係者らが詰めかけた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて2019年春以降は見送られており、開催は実に4年半ぶりである。今回取り上げられたのは、アルトサクソフォーン Prodige、クラリネット BCXXI in A、そしてポケットクラリネット Prodigeの3点だ。

“BCXXI”左がin B♭、右がin A
アルトサックス“PRODIGE”
ポケットクラリネット“PRODIGE”

まず紹介されたのはアルトサクソフォーン“Prodige”(プロディージュ)。プロディージュとはフランス語で「神童、天才、非凡な人」という意味であり、同じモデル名を冠したオーボエがすでに発売されている。総重量2,400gと同社の現行モデル“Senzo”より100g軽いことや、手が小さい人でも演奏しやすい新設計のキー・ワークを導入するなど、特に子どもや若い世代が手にしやすい造りとなっている。デモンストレーションには東京佼成ウインドオーケストラの松井宏幸氏が登場し、ヴィードフ『Sax-O-Phun』など3曲を演奏。名器“PRESTIGE”を想起させる鮮やかで明るい音色が会場に響き渡った。

松井宏幸氏によるデモ演奏

続いて紹介されたのはクラリネット“BCXXI in A”。すでにin B♭が発売されているモデルだが、プロ奏者からの強い要望を受け、この度A管クラリネットの開発に至ったという。同モデルの特徴である新内径や最低音を延伸するE♭キーを搭載しており、B♭管と同じような取り回しが可能となっている。デモンストレーターは、テスターとして開発に携わったポール・メイエ氏と、すでにBCXXI in B♭を愛用している亀井良信氏の二人。メイエ氏はオネゲル『クラリネットとピアノのためのソナチネ』とシューマン『幻想小曲集 Op.73』を、亀井氏はハーマン『クラリネット・オン・ザ・タウン』とミヨー『協奏的二重奏曲 Op.351』を演奏。さらに二人でプーランク『二本のクラリネットのためのソナタ』を披露した。これはなんと当日、メイエ氏の提案により急きょ実現したステージだそうで、亀井氏曰く「(この曲は)10年来吹いていない」。それでも完璧に曲を成立させるのだから、彼らの秀逸な演奏に感服せざるを得ない。A管らしい落ち着いた響きを持ち、吹き手の要望にしっかり応えられる印象を受けるBCXXI in Aは、ビュッフェ・クランポンのハイエンド・モデルとしてのオーラを放つ仕上がりになっている。

急きょ実現した豪華デュエット

最後に紹介されたのはポケットクラリネット“Prodige”だ。先のアルトサクソフォーンと同じモデル名を持つこの楽器は、コンセプトも同じく若い世代向けに設計されている。見た目からコンパクトなこの楽器は、体の小さい子どもでも無理なく演奏することができるサイズ感と軽量化を実現している。若い世代であるからこそ音色・音程への妥協はせず、すでにThe Clarinet ONLINEでもその音を紹介している通り、初めて手にした子どもたちが「これが本物の音だ」と理解できる逸品だ。デモンストレーションとして亀井氏が再び登場し『アメイジング・グレイス』を演奏したが、やはりその音色は通常のクラリネットと比べても遜色のない豊かなものであった。

ポケットクラリネットのサイズ感がわかるだろうか

キーを排しトーンホールのみで構成されたシンプルなボディはさながら古楽器「シャリュモー」のようであり、そこに現代の発達したマウスピースなどの仕掛けを合わせられる本楽器はいわば「現代版シャリュモー」であると、ビュッフェ・クランポンは語る。

さらに、問い合わせの多かった事項について、Q&A形式で紹介されていた。以下に掲載する。

Q.なぜD管なのか?

B♭クラリネットの第1音域と同じ指使いで、本物のクラリネットの音を目指しました。
B♭クラリネットの第1音域と同じ指使いであること。
Dキーは、良い〈ビュッフェ・クランポン〉サウンドのための最良の妥協点でした。

Q.なぜ1オクターブ+1音しか音域がないのか?

それは、このような短い楽器でバランスのとれた音程を保つためです。
指を交差させる作業は、自然音の音階が損なわれてしまいます。

Q.なぜサムレストをつけたのか?

若い音楽家が練習を始めたらすぐに、クラリネットのバランスを感じながら練習してほしいからです。

Q.ポケットクラリネットはどこで作られている?

ドイツのマルクノイキルヒェンにある、〈ビュッフェ・クランポン〉ドイツ工場で製造。
100%ドイツ製です。

Q.どのマウスピースが使用できる?

どのメーカーのB♭クラリネット用マウスピースでも使用できます。
ポケットクラリネットに付属しているマウスピースは、B♭クラリネット用のものです。

以上3機種が今回紹介されたアイテムである。子どもや若い世代に向けた楽器が2点、プロユースのハイエンド・モデルが1点と両極的なラインナップであるが、いずれにもビュッフェ・クランポン社の高度な技術と、すべての音楽家へ捧げられる深いリスペクトが詰まっていると言えるだろう。


各楽器の詳しい仕様などは下記を参照ください。

⚫︎“PRODIGE” SAXOPHONE
仕様 : 管体、キー: 真鍮/ライトゴールドラッカー塗装/精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね/調節可能指かけ
カタログNo. : BC8301-1-0J
付属品 : マウスピース/リガチャー/キャップ/リード/ストラップ/スワブ/クリーニングクロス/コルクグリス/ナイロン外装バックパックケース
URL:https://www.buffet-crampon.com/ja/instruments/saxophones-jp/prodige-2/

 

⚫︎CLARINET “BCXXI in A” 
ピッチ : 442Hz
管体 : アフリカ産最上質グレナディラ材使用、上管の一部のトーンホールに“グリーンライン”を採用、カーボンファイバー製接合部リング、バレル2本(64mmおよび65mm)
キー : ベームシステム、19キー、6リング、調整可能指かけ、Esレバー、低音Es/Bbキー、銀めっきキー、キーポストおよび接合部リングはピンクゴールドめっき、洋銀製、冷間鍛造、手工仕上げ、“BCXXI”専用キーデザイン、金属ピトン、精密特殊加工スチール針ばねおよび板ばね
カタログNo. :BC1258L-2-3J
付属品 : 〈HB〉ピンクゴールドリガチャー(銀めっきネジ)、〈BC〉マウスピースキャップ、スワブ
ケース : “BCXXI” B♭/A専用ダブルケース/“BCXXI”ダブルケース専用ケースカバー(ショルダーストラップつき)
マウスピースは付属しておりません。
URL:https://www.buffet-crampon.com/ja/instruments/clarinets-jp/bcxxi-2/

⚫︎POCKET CLARINET “PRODIGE”
調子 : D
管体 : アフリカ産グレナディラ材使用
ベル : アフリカ産グレナディラ材およびソフトラバー使用
指かけ : 調節可能、銀めっき仕上げ
ケース : “ポケットクラリネット”専用ナイロン製ケース(内装:綿)
付属品 : マウスピース、キャップ、リガチャー、リード1枚、スワブ、コルクグリス、“ポケットクラリネット”専用運指表、〈BC〉オリジナル鉛筆
URL:https://www.buffet-crampon.com/ja/instruments/clarinets-jp/pocket-clarinet/


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