Yany SIXS×亀居優斗さん、瀧本千晶さん 試奏リポート
音色・響きを追求した画期的な構造とハイスペック感漂うルックスで、発売以降クラリネット奏者の話題を集めている柳澤管楽器開発のリガチャー「Yany SIXS」。本誌前号では東京佼成ウインドオーケストラやThe Narmen Clarinet Ensembleのメンバーをはじめ、多岐にわたる活躍で注目を集める亀居優斗さんにYany SIXSの音色や吹奏感など、そのポテンシャルを解説してもらった。今回は、同じく東京佼成ウインドオーケストラのクラリネットセクションで、B♭クラリネット兼アルトクラリネットを担当する瀧本千晶さんにも参加いただき、亀居さんのB♭クラリネット、瀧本さんのアルトクラリネットで、Yany SIXSリガチャーを使ってDUO演奏を行なってもらった。
はたして重奏やアンサンブルでYany SIXSがどんな特性や可能性を発揮するのか?演奏をとおして実感することを訊いてみた。
自分が入れている息以上にワイドに音が広がっていく印象です。
マウスピースに対して接触面を少なくするというのは、リガチャーの造りという点で課題の一つだと思うのですが、その工夫が活きていて、リードの振動がしっかり伝わり豊かな鳴りに直結していることを感じます。響きを止めることのないスムーズな吹奏感は吹いていてとても気持ちが良いです。
マストに大事なのは息の流れだと思います。息の流れが詰まることを音のまとまりと勘違いしてしまうようなリガチャーもなくはないですが、それは好きではないですね。こもるようなタイプです。
アンサンブルは、いつも一緒にやっている人とも、また別の人とやる良さもあると思いますが、個性が際立ちすぎるような仕掛けを使っていると、かなりのポテンシャルを持った人でない限り、音を寄り添わせるのは難しくなります。
「調和しやすいリガチャーを使って、アンサンブルでは音色をブレンドさせて、曲中のソロや自分を目立たせたいフレージングのときにギアを入れる」。逆に、「常に際立ちやすいリガチャーを使って、アンサンブルや他の人と合わせることにエネルギーを使う」という2パターンがあると思いますが、Yany SIXSは前者のキャラクターだといえます。アンサンブルなどで、同じ仕掛けを使ったり、お互いがYany SIXSのような明るく響くタイプのリガチャーを使うと調和を感じやすいのではないでしょうか。
主張が強めの人は、仕掛けを重くして音を強調させたいという方が多いかもしれませんが、そういう主張したい方でも納得のいく抵抗感がYany SIXSにはあるので、体を脱力させるという意味でも使ってみるといいかと思います。普段ギュッと力を入れて吹いている人が、リラックスして吹いても鳴ってくれる。そんなリガチャーなので、いい脱力を学べれば、より楽器が自然に鳴り、個性の塊のようなスタイルから、アンサンブルでみんなと合わせて美しいハーモニーを楽しめるようなニュアンスを学ぶこともできるかと思います。
音に方向性を持っているけど、いい意味でクセのないリガチャーだと思います。無理なくスッと鳴らせて、倍音もしっかりあって口元で音が止まることがない。
特に男性では、ヘヴィーなリガチャーで抵抗をつけて、重心をしっかりして鳴らすという方もいますが、女性は体の馬力も男性ほどではないので、あんまり重いと吹きにくく感じます。Yany SIXSも見た目は重厚に見えますが、吹奏感も音色もちょうど程よいです。
アマチュアの楽団や中学校の吹奏楽部に教えに行くと、「こんな重いリガチャー、こんな重い仕掛けで吹いているの?」といった人もいますが、そういう人がYany SIXSを使うと「えっ!」ってなるかもしれません。
大きな規模でまとまるような、サウンドを安定に向かわせるキャラクターは、アンサンブルや吹奏楽の曲中のソロでも活きるのではないかと思います。ポップス系の曲ももちろんいいと思いますし、レガートで流れるようなフレーズでも、タンギングの粒立ちも良く、はっきり柔らかく発音できるので、合奏やアンサンブルでみんなとの足並みも合わせやすいでしょう。
中学校やアマチュアの方も定期演奏会などで、吹奏楽オリジナルの曲やポップスなど、いろんな曲を演奏されると思いますが、どんな曲にも柔軟に対応できるのではないでしょうか。
音色のレンジも広くてクセもないので、「こっちの楽器と合わないな」といったことがなさそうだなと感じました。
ヤナギサワ Yany SIXSリガチャー
B♭CL/A.Sax兼用、A.CL/T.Sax兼用
[素材]ブラス製 金メッキ仕上げ/エボナイト製スペーサー
[価格]各24,200円(税込)
◆製品に関するお問い合わせ◆
楽器・楽譜の総合卸商社 株式会社 プリマ楽器
TEL:03-3866-2215
https://www.prima-gakki.co.jp/
亀居優斗 Yuto Kamei(クラリネット)
1995年7月27日生まれ、愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、東京藝術大学を卒業。2017年度青山音楽財団奨学生、瀬木芸術財団短期海外研修奨学生。第15回クラリネット アンサンブルコンクール 一般部門 第1位併せてグランプリ。第87回日本音楽コンクール入選。第17回東京音楽コンクール第3位、併せて聴衆賞受賞。第30回日本木管コンクール第2位。第10回日本クラリネットコンクール第2位。第19回東京音楽コンクール第2位(最高位)、併せて聴衆賞受賞。第90回日本音楽コンクール第1位、併せて瀬木賞、E.ナカミチ賞受賞。読響、新日本フィル、名古屋フィルなど各オーケストラと共演を重ねる。これまでに浅井崇子、井上京、伊藤圭、亀井良信の各氏に師事。R.ギュイオのマスタークラスを受講。The Narmen Clarinet Ensemble メンバー。現在、東京佼成ウインドオーケストラ楽団員。
瀧本 千晶 Chiaki Takimoto(クラリネット)
栃木県宇都宮市出身。2017年小澤征爾音楽塾オーケストラに参加。第37回ヤマハ新人演奏会に出演。これまでにクラリネットを小倉清澄、伊藤圭の各氏に師事。作新学院高等学校英進部を経て東京藝術大学卒業。日本各地でオーケストラ、吹奏楽、ソロ、室内楽等プレイヤーとして幅広く活動。現在、東京佼成ウインドオーケストラB♭クラリネット兼アルトクラリネット奏者。
Information
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