クラリネット記事
【試奏動画あり】

Yany SIXS×亀居優斗さん、瀧本千晶さん 試奏リポート

音色・響きを追求した画期的な構造とハイスペック感漂うルックスで、発売以降クラリネット奏者の話題を集めている柳澤管楽器開発のリガチャー「Yany SIXS」。本誌前号では東京佼成ウインドオーケストラやThe Narmen Clarinet Ensembleのメンバーをはじめ、多岐にわたる活躍で注目を集める亀居優斗さんにYany SIXSの音色や吹奏感など、そのポテンシャルを解説してもらった。今回は、同じく東京佼成ウインドオーケストラのクラリネットセクションで、B♭クラリネット兼アルトクラリネットを担当する瀧本千晶さんにも参加いただき、亀居さんのB♭クラリネット、瀧本さんのアルトクラリネットで、Yany SIXSリガチャーを使ってDUO演奏を行なってもらった。
はたして重奏やアンサンブルでYany SIXSがどんな特性や可能性を発揮するのか?演奏をとおして実感することを訊いてみた。


 
Yany SIXSを吹いてみて印象はどうでしょうか?
亀居
これまでは、吹き込んだ息をリガチャーでまとめてもらう感覚だったんですが、最近は息をフォーカスさせて吹くように意識しているんです。そうするとこのYany SIXSの広がりのある音、響きの豊かさがより感じられました。広がった音がまとまるのではなくて、まとまった音が広がってくれる感覚です。
自分が入れている息以上にワイドに音が広がっていく印象です。
瀧本
金属製のリガチャーが好みで、B♭クラリネットのときも使っていますが、金属製だとキンキンしやすいということもあるんですが、Yany SIXSはマウスピースに金属が直接触れず、マウスピースと同じ材質のエボナイトが少ない面積で接触しているせいか、音色は華やかですが明るすぎずちょうど良いバランスです。
マウスピースに対して接触面を少なくするというのは、リガチャーの造りという点で課題の一つだと思うのですが、その工夫が活きていて、リードの振動がしっかり伝わり豊かな鳴りに直結していることを感じます。響きを止めることのないスムーズな吹奏感は吹いていてとても気持ちが良いです。
リガチャーに対してのこだわりについて教えてください。リガチャー選びで最も気にするポイントは?
亀居
音が詰まるタイプや、吹き心地が悪く息の流れが阻害されるリガチャーは嫌ですね。
マストに大事なのは息の流れだと思います。息の流れが詰まることを音のまとまりと勘違いしてしまうようなリガチャーもなくはないですが、それは好きではないですね。こもるようなタイプです。
瀧本
私も亀居さんと似ていて、息の流れを止めないで、吹いたときに素直にスーッと音が伸びてくれるタイプが好きです。マウスピースもそういうものを選びますが、抵抗感も必要です。ただし、リガチャーにその役割は求めていなくて、むしろいい意味で抵抗感や重さといった違和感を感じない素直に鳴ってくれるものを選びます。
お二人にYany SIXSを使ってB♭クラリネットとアルトクラリネットでDUO演奏を行なっていただきました。同じYany SIXSを使って感じたこととは?
 
 
亀居
瀧本さんとサンジュレーの協奏的二重奏曲『ジャン・バティスト・サンジュレー:協奏的二重奏曲 作品55(サクソフォン二重奏)』を演奏しました。この曲(1楽章)はスラーやレガートで歌うフレーズが多いのですが、そういう横に流れるフレーズがとてもきれいに映えます。しっかりした響きがあるので、2人ともキャパシティが広がり、音の方向性が定まったという印象です。音がまとまり、ニュアンスも合わせやすいですね。
瀧本
音の明るさ、響きが揃いやすいです。例えば私が重いリガチャーで、亀居さんが軽いリガチャーを使う……となると、合っているようでも調和は乱れると思います。
音色のタイプや好む仕掛けも似ていたりと、もともと音の親和性が高いお二人だと思いますが、普段アンサンブルなどを一緒にやっている方は、より音の調和が感じられるのかもしれませんね。
亀居
同じ会社(東京佼成ウインドオーケストラ)なので、好むものも似ているかもしれません(笑)。
アンサンブルは、いつも一緒にやっている人とも、また別の人とやる良さもあると思いますが、個性が際立ちすぎるような仕掛けを使っていると、かなりのポテンシャルを持った人でない限り、音を寄り添わせるのは難しくなります。
「調和しやすいリガチャーを使って、アンサンブルでは音色をブレンドさせて、曲中のソロや自分を目立たせたいフレージングのときにギアを入れる」。逆に、「常に際立ちやすいリガチャーを使って、アンサンブルや他の人と合わせることにエネルギーを使う」という2パターンがあると思いますが、Yany SIXSは前者のキャラクターだといえます。アンサンブルなどで、同じ仕掛けを使ったり、お互いがYany SIXSのような明るく響くタイプのリガチャーを使うと調和を感じやすいのではないでしょうか。
「オレがオレが!」ではなく、音の調和を大事にするタイプのリガチャーということですね。
亀居
逆に「オレがオレが!」の人が使うと丁度いいのかもしれないですね(笑)。
主張が強めの人は、仕掛けを重くして音を強調させたいという方が多いかもしれませんが、そういう主張したい方でも納得のいく抵抗感がYany SIXSにはあるので、体を脱力させるという意味でも使ってみるといいかと思います。普段ギュッと力を入れて吹いている人が、リラックスして吹いても鳴ってくれる。そんなリガチャーなので、いい脱力を学べれば、より楽器が自然に鳴り、個性の塊のようなスタイルから、アンサンブルでみんなと合わせて美しいハーモニーを楽しめるようなニュアンスを学ぶこともできるかと思います。
「こんな音色、吹奏感が好み」といった指向や、「こんな悩みがある」など、どういった人にオススメですか?
亀居
このYany SIXSを初めて試奏した時から印象が変わらないので、それだけキャラクターがしっかりしているといえますが、空間を創ってキャパを広げる。響きにふくよかさを加えてくれる。そんなリガチャーなので、音が細めの人、自分で音の広がりが出しにくいといった悩みのある人にオススメです。このリガチャーの持ち味を感じることができると思います。
瀧本
アルトクラリネットは音量があまり出ないという楽器の特性もあり、音域が真ん中よりちょっと低く、音がはっきりしにくいということもありますが、Yany SIXSは、いい感じに音色を明るくしてくれて輪郭がはっきりしやすいので、アンサンブルやカルテットでも音が埋もれにくいと思います。
音に方向性を持っているけど、いい意味でクセのないリガチャーだと思います。無理なくスッと鳴らせて、倍音もしっかりあって口元で音が止まることがない。
特に男性では、ヘヴィーなリガチャーで抵抗をつけて、重心をしっかりして鳴らすという方もいますが、女性は体の馬力も男性ほどではないので、あんまり重いと吹きにくく感じます。Yany SIXSも見た目は重厚に見えますが、吹奏感も音色もちょうど程よいです。
アマチュアの楽団や中学校の吹奏楽部に教えに行くと、「こんな重いリガチャー、こんな重い仕掛けで吹いているの?」といった人もいますが、そういう人がYany SIXSを使うと「えっ!」ってなるかもしれません。
Yany SIXSリガチャーの音色、響きは、どういったジャンル、シチュエーションに向いているでしょうか? また、クラリネットパート内をYany SIXSで揃えた場合のサウンドや他の楽器との相性、親和性は?
亀居
音色のキャラクターがしっかりしているリガチャーなので、例えばオーケストラで、すごくフォーカスしてppの繊細な響きを一瞬でまとめるといったシチュエーションよりも、明るくワイドに音が広がる特性が活きるおおらかな曲で持ち味を発揮するでしょう。個を目立たせるというより音色のブレンド感を持っているので、吹奏楽のクラパート全員がYany SIXSに揃えて吹けば、響きの厚さも増して、音色に一体感が生まれるのではないかと思います。
大きな規模でまとまるような、サウンドを安定に向かわせるキャラクターは、アンサンブルや吹奏楽の曲中のソロでも活きるのではないかと思います。ポップス系の曲ももちろんいいと思いますし、レガートで流れるようなフレーズでも、タンギングの粒立ちも良く、はっきり柔らかく発音できるので、合奏やアンサンブルでみんなとの足並みも合わせやすいでしょう。
瀧本
佼成ウインドではアルトクラリネットの横にアルトサックス、反対側にファゴットと、2つの楽器に挟まれた状態です。そのような場合、どっちかに振り切るのではなく、両方に寄り添えなければいけません。また、アルトクラリネットは、フレーズごとにユニゾンで一緒になる楽器がコロコロ変わるので、いろんな楽器とブレンドしなくてはならないんですが、Yany SIXSの華やかだけど明るすぎない音色キャラクターは、いろんな楽器の音域や音色に寄り添いやすいと思います。クラシック向き、ポップス向きというよりはオールジャンルで使えると思います。
中学校やアマチュアの方も定期演奏会などで、吹奏楽オリジナルの曲やポップスなど、いろんな曲を演奏されると思いますが、どんな曲にも柔軟に対応できるのではないでしょうか。
音色のレンジも広くてクセもないので、「こっちの楽器と合わないな」といったことがなさそうだなと感じました。
合奏で他のパートの人といまより仲良くなるかもしれないですね(笑)。
瀧本
そうですね(笑)。「前までちょっと合わなかったのに、最近合うね」……そんなふうになるかもしれないですね(笑)。
ありがとうございました。
 
 
専用キャップと巾着が付属

ヤナギサワ Yany SIXSリガチャー

B♭CL/A.Sax兼用、A.CL/T.Sax兼用
[素材]ブラス製 金メッキ仕上げ/エボナイト製スペーサー
[価格]各24,200円(税込)

 

◆製品に関するお問い合わせ◆
楽器・楽譜の総合卸商社 株式会社 プリマ楽器
TEL:03-3866-2215
https://www.prima-gakki.co.jp/

 

 

亀居優斗 Yuto Kamei(クラリネット)
1995年7月27日生まれ、愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、東京藝術大学を卒業。2017年度青山音楽財団奨学生、瀬木芸術財団短期海外研修奨学生。第15回クラリネット アンサンブルコンクール 一般部門 第1位併せてグランプリ。第87回日本音楽コンクール入選。第17回東京音楽コンクール第3位、併せて聴衆賞受賞。第30回日本木管コンクール第2位。第10回日本クラリネットコンクール第2位。第19回東京音楽コンクール第2位(最高位)、併せて聴衆賞受賞。第90回日本音楽コンクール第1位、併せて瀬木賞、E.ナカミチ賞受賞。読響、新日本フィル、名古屋フィルなど各オーケストラと共演を重ねる。これまでに浅井崇子、井上京、伊藤圭、亀井良信の各氏に師事。R.ギュイオのマスタークラスを受講。The Narmen Clarinet Ensemble メンバー。現在、東京佼成ウインドオーケストラ楽団員。

 

瀧本 千晶 Chiaki Takimoto(クラリネット)
栃木県宇都宮市出身。2017年小澤征爾音楽塾オーケストラに参加。第37回ヤマハ新人演奏会に出演。これまでにクラリネットを小倉清澄、伊藤圭の各氏に師事。作新学院高等学校英進部を経て東京藝術大学卒業。日本各地でオーケストラ、吹奏楽、ソロ、室内楽等プレイヤーとして幅広く活動。現在、東京佼成ウインドオーケストラB♭クラリネット兼アルトクラリネット奏者。

 

 Information 
亀居さん、瀧本さんが所属する東京佼成ウインドオーケストラの演奏会情報はこちらより

 

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