フルート記事
THE FLUTE vol.193 Close Up

領域拡大と原点を象徴したアルバム「Lekeu×Flute」をリリース

吉岡次郎氏の7枚目のアルバムは、ルクーなど世界的にも珍しい楽曲を含む壮大なソナタ集。ヴァイオリン・ソナタを収録した今作には、“領域拡大”と“原点”という両極端な意味が込められているという。その意味を訊く。

10年温めたルクー

7枚目のCDがリリースされました。全曲ヴァイオリン・ソナタのアルバムですね。早速ですがアルバムのコンセプトをお願いします。
吉岡
ヴァイオリン・ソナタに重きを置いたというよりも、フランクの系譜という意味合いで選曲しました。
とは言ってもフランクを一番最初に選んだわけではありません。まずルクーの『ヴァイオリン・ソナタ』を収録曲に選び、後付けでフランクやピエルネをカップリングさせました。
2005年に開催した自主企画の初リサイタルのメインプログラムがフランクの『ソナタ』だったことも約20年の集大成としての位置づけでもあります。
ルクーはあまり知られていない作曲家ですね。
吉岡
ヴァイオリンでもそんなに演奏する機会は多くないようです。なぜかというと、24歳という若さで亡くなったため作品が少なかったり、他の曲ほどの知名度がなかったのかもしれません。
ルクーはとても感受性が強い人とだったそうです。ワーグナーに心酔していて、『トリスタンとイゾルデ』を聴いたときに、感動してその場に卒倒した、というエピソードがあります。また、1891年にローマ大賞で第2位を受賞したのですが、2位ではダメだと受賞を辞退したという逸話もあるぐらい熱い人だったようです。
私自身、内面にほとばしるエネルギーを持つ作品がとても好きなので、ルクーの楽曲には共感を得ました。
ただ発見したからすぐにCDに、ということはしません。まず2013年のリサイタルで演奏しました。CD化するには温める時間が必要だったので、ちょうど10年後の今年のアルバムに入れることになりました。
2013年のリサイタル以降、実際CDアルバムとして成立するのか、かなり熟考しました。その間5th、6thアルバムをリリースし、別の企画のリサイタルも数多くやりました。その結果、レコーディングまでの数ヶ月はヴァイオリンの音源を極力聴かず、スコアを読むことに専念するという答えとなりました。

次のページへ続く
・フルートの“領域拡大”の可能性を見つけたい
・仮面を脱いだ自分を
・キラーピースとそれに付随する作品を

Profile
吉岡次郎 Jiro Yoshioka
スイス・バーゼル市立音楽大学大学院にて、国家演奏家資格を最優秀の成績で取得し卒業。バーゼル交響楽団研修団員を経て帰国。第12回JFCコンクール・ピッコロ部門第2位、第3回東京音楽コンクール木管部門最高位。2008-09 神奈川フィル契約首席。ソリストとして名古屋フィル、東京フィル、日本フィル等と共演。東京、パリ、NYC、ウィーンなど国内外でコンサートを開催。これまでに7枚のCDアルバムをリリース。桐朋学園芸術短大、洗足学園音大講師。(公財)千葉交響楽団、シアターオーケストラトーキョーフルート奏者。
 
 
吉岡次郎CD「Lekeu×Flute」
【NAT21351】NAT
[演奏]吉岡次郎(Fl)、長尾洋史(Pf)
[収録曲]ギヨーム・ルクー/吉岡次郎 編:ソナタ(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)、ガブリエル・ピエルネ:ソナタ Op.36(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)、セザール・フランク:ソナタ(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)
 
[CLUB MEMBER ACCESS]

この記事の続きはCLUB会員限定です。
メンバーの方はログインしてください。
有料会員になるとすべてお読みいただけます。

1   |   2      次へ>      
■関連キーワード・アーティスト:

吉岡次郎


フルート奏者カバーストーリー