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ドップラーの音楽

THE FLUTE vol.181 特別企画

Doppler,兄弟

フルーティストにとって憧れの曲であり、「これを聴いてフルートを吹きたいと思った」という人も数多いマスターピース的作品が『ハンガリー田園幻想曲』だ。作曲者はフランツ・ドップラー。自らもフルート奏者であり、フルートのための協奏曲や小品を多く残している。弟であるカール・ドップラーもまたフルート奏者で、兄弟ともどもフルートのヴィルトゥオーゾとして、ヨーロッパで高い評判を得ていた。
今年2021年は、兄フランツの生誕200周年。ここでは、日本で特に人気の高い『ハンガリー田園幻想曲』についての考察や、ドップラー全作品CDをリリースする“ドップラープロジェクト”を遂に今年完成したクラウディ・アリマニー氏の仕事を振り返る、アーカイブインタビューをお送りする。

 

フランツ・ドップラー(Albert Franz Doppler, 1821~1883)

FranzDoppler

オーストリアに生まれる。オーボエ奏者だった父からフルートを習い、13歳の時にウィーンでデビュー。1838~45年、当時ドイツ領であったペスト国立劇場で首席フルート奏者を務めた。1847年には同劇場で彼の最初のハンガリー語オペラ 「ベニョフスキー伯爵」 が上演された。1858年にはソロフルート奏者としてウィーン宮廷歌劇場に移籍、バレエ 公演で指揮も任される。1865年よりウィーン音楽院でフルート教授、1869年より宮廷バレエ団の音楽監督を歴任した。

 

フランツ&カール・ドップラー兄弟とは?

作曲家ドップラーは、音楽史の功績にそれほど名を残した人ではありません。交響曲やオペラで名声を残したわけではない彼らが、自分たちが演奏するために作曲したフルートの作品が、現代ではマスターピースともいえる存在にもなっていることは、彼ら自身想像もしなかったことかもしれません。兄のフランツ・ドッブラーは、1821年10月16日オーストリア帝国領ガリツィア・ルヴフに生まれました。1804年、フランツー世のもとオーストリア帝国が成立。1867年に成立したハプスブルク=ロートリンゲン家がオーストリア皇帝として支配する、激動の時代をフランツは生き抜いたわけです。一方弟のカールは、1825年に生まれました。 兄のフランツは、1828年から3年間、オーボエ奏者だった父からフルートの指導を受けています。当時から才能はあったようで、18歳でブタペスト歌劇場の首席奏者に就任、さらにウィーン宮廷歌劇場の首席フルート奏者、首席指揮者の地位へと昇りつめたエリートでした。フランツがフルーティストから指揮者を務めた経緯はよく分かっていませんが、音楽家として卓越した才能を持っていたからにほかならないでしょう。また、1864年から67年の3年間に亘ってウィーン音楽院のフルート科の教授も務めています。
4歳違いの弟のカールがフルートを始めたのも、おそらく兄と同じように父親の影響があったと思われます。もしかすると、兄に大きな憧れを抱いていたのかもしれません。
兄弟ともにフルート奏者、作曲家、指揮者という音楽家としても同じ道を歩んでいます。
作曲者としてフランツはオペラ『ユディト』『フサールの二人』をなどを、カールはオペラ『エリザベス』などを残しています。
しかし何と言っても没後に彼らの名声を残しているのは、やはりヴィルトゥオーゾのフルート作品においてでしょう。最も日本で人気のある、フルートに特化した作曲家であるといえます。
日本フルート協会名誉会長の故 吉田雅夫氏は、フランツが作曲した『ハンガリー田園幻想曲』が日本で大流行した理由を次のように述べています。
「出だしが日本の“馬子唄”に近いものがあるから、冒頭から日本人の心を惹きつけた。当時はこの曲はだれも知らないんですよ。フルートリサイタル自体がまだまだ少ない時代でしたが、この曲をプログラムに入れれば、お客さんが演奏会場に足を運んでくれました」
ドップラー兄弟はフルートの名手でもあったので、2人で演奏するために作品を作り、コンサートで演奏していました。そんな2人は「フルートのヴィルトゥオーゾ兄弟」としてヨーロッパ中を席巻していきます。特にフランツの書いた『アンダンテとロンド Op.25』は、プロ奏者にも愛好家にも人気の高い一曲です。
ちなみに2人は、兄は右利き、弟は左利きでした。そのため弟のカールは通常右に構えるフルートとは逆向きのフルートを使っていました。

 

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日本人がドップラーを好きな理由(ワケ)│さかはし矢波

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