白川真理、宇高靖人

アンサンブルと音色を楽しめたコンサート「室内楽の楽しみ vol.3~フルートとギターの夕べ~」

白川真理さんが室内楽のシリーズでギタリスト宇高靖人さんと共演!

ルイ・ロットから放たれる芳醇な響きを心ゆくまで堪能できるコンサートの模様をレポートします。

白川真理

「室内楽の楽しみ vol.3~フルートとギターの夕べ~」
6月28日(金)プリモ芸術工房(東京)
[出演]白川真理(Fl)、宇高靖人(Guit)
[プログラム]M.ジュリアーニ:主題と変奏、メヌエット(「グランドセレナーデ Op.82」より)、H.ビーバー:天使のパッサカリア、A.ルビラ:愛のロマンス、F.タレガ:アルハンブラ宮殿の思い出、M.プホール:カンドンベロスの2つのアリア 、A.ピアソラ:レント・メディタティーボ、Z.アブレウ:ティコティコ、C.テデスコ:ソナチネ Op.205、夕帆:水月、リサフォン:紫陽花

歴史的にも貴重なフルート 5代目ルイ・ロット(銀製/1911年製)、初代ルイ・ロット(洋銀/1872年製/秋山好輝氏修復)の2本を愛器に、室内楽を中心に活動している白川真理さんの「室内楽の楽しみ Vol.3」が6月28日に開催された。
会場は東京・洗足にある「プリモ芸術工房」。50名ほどの客席のあるサロンで、フルートとギターの音色を堪能するにはちょうど良い空間だ。
今回の室内楽のお相手はギタリスト 宇高靖人さん。宇高さんはギターデュオ「いちむじん」で活躍し、2010年NHK大河ドラマ「龍馬伝」のエンディング曲を担当した奏者だ。

 

白川真理,宇高靖人宇高靖人さん(写真左)、白川真理さん(写真右)

 

1曲目は、M.ジュリアーニの『主題と変奏、メヌエット』。フルートとギターの心地よいアンサンブルが空間に響きわたる。続いてはフルートソロで『天使のパッサカリア』。特に中音域のppが美しく、ルイ・ロットの音色を楽しむことができた。『愛のロマンス』『アルハンブラ宮殿の思い出』のギターソロ2曲では、宇高氏のアゴーギグやテクニックで音楽に心が寄せられていくの感じた。前半最後のプホールでは1楽章と2楽章を入れ替えての演奏。フルーティストには足踏みもあり、スピード感あふれる演奏は見事であった。

後半は、ピアソラのフルートソロから開始。ドビュッシーの『シランクス』を彷彿させるような作品。『ティコティコ』は宇高氏のリクエストでプログラムに入れたとのことで、「すごく大変だった」と白川さんは語りつつも、耳馴染みのある楽曲を楽しむことができた。

メインとなるテデスコ『ソナチネ Op.205』は3楽章から成る作品で、ギターとフルートのアンサンブルがより一層際立った演奏であった。中音Gより上の音域での音色が透明感に溢れ特に美しく、ルイ・ロットが今もフルーティストたちに愛される理由が実感できる。使いこなすのは相当難しい楽器ではあるが、白川氏は後半になるにつれ、生き物のように徐々に開放されていく音色を巧みに操っていた。

その後は夕帆(ユウハン)の『水月』。夕帆とは白川さんの俳人としての名で、毎年演奏していた鎌倉・東慶寺の水月観音に捧げるために2006年に作られた作品とのこと。観音さまをリスペクトしている心が伝わる美しいメロディが印象的だ。莉燦馮(りさふぉん)の『紫陽花』はいちむじんの作品。アンコールでジョン・ウィリアムズの『カヴァティーナ』(映画「ディア・ハンター」)を演奏してコンサートは終了した。

1曲ごとにMCがあり、アットホームな雰囲気の中、進められられた今回のコンサート。曲の解説だけでなく、白川さんは、琥珀や翡翠などお母様の形見の指輪を曲の雰囲気に合わせて替えていることも話された。「身につけるものによって、音色、響きが変わるような気がして」とすべての作品を大事にしている白川さんの心が伝わってきて、温かい気持ちで会場を後にすることができた演奏会であった。

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