This issue’s Guest:坂本竜太、西山HANK史翁、永田真毅

神崎ひさあき Come to me! │ 第4回

今回のゲストたちが在籍時の神崎ひさあきバンド
(左から)西山HANK史翁、クリヤマコト、神崎、岸田容男、坂本竜太
 
みなさんが実際に神崎さんのバンドで演奏してみた印象はいかがでしたか?
坂本
神崎さんのバンドは、リハーサルも音の調整じゃなくて、その時からすでに本番なんです。それぞれが培ってきたものを、全員が徒競走のように本気で、1拍目からやるっていう。だからリハーサルで適当にやったりするとすげぇ怒られました(笑)。でもその体験は今も生きてます。結局そのほうが、本番で本人を助けてくれるんですね。
西山
リハも本気でやれ、と。僕も気合い的な部分というか「おまえ、なんか来ないんだよ。もっと何かあるだろ!」って、よく言われました。いま何が起こっているのか、ちゃんと状況判断をしろって。神崎さんはアメリカに行って、向こうのミュージシャンたちとやったりした経験を踏まえて、そういうことを言っているんだろうなって感じますね。
永田
ドラマーにとっては、ダイナミクスの部分ですごく勉強になりました。小さい音から、上がる時は上がり切るというか、自分が上がり切っていると思った倍くらいのところまで行け、という感じで。でもその結果、自分のキャパシティと、その幅の中のどれくらいで叩けばいいかということが見えてくるようになりました。
坂本
言われたことをその通りにやるんじゃなくて、それを自分なりに噛み砕いていって、あのときに言われていたのはこういうことだったんだって、後からわかってくるという印象ですね。だから僕も今、それを後輩たちに伝えてます。

演奏に何を込めるかっていうところに重きを置いてる

サックス奏者としての神崎さんの印象はいかがでしたか?
坂本
すごくかっちり綺麗に正確に吹く人とか、いろいろなスタイルがあると思うんですけど、神崎さんのサックスは、絵画か、書道に近いですね。キュッと1本の線で1文字を書く、みたいな。バランスが取れてるというよりも、気持ちで書いていて、でもその説得力が相当にすごいんです。
西山
自分的には空手の塾生になったような気分でした(笑)。瞬発力とか、気合いとか、そういうものを込めてる感じはしますよね。演奏に何を込めるかっていうところに重きを置いてるような感じがします。でもそれは言葉にしづらいというか、だから文学的だったり哲学的だったりするんだと思うんですけど、例えば書道を言葉で説明するのが難しいみたいな印象です。
永田
とにかく音の立ち上がりが速くて、あと音から聞こえてくる風景っていうのが、鬱蒼とした山というよりは、パーッと開けた海の感じというか。
坂本
うん、海ですね。ソプラノだとイルカみたいになったりしますよね。
永田
だからこっちも包まれて、一緒に泳ぐことができるんです。
神崎
ありがたいですね。さっき竜太が言ったみたいに演奏しないスペース(間)があっても止まらず一本の線で一文字を書くってのは、美術家のフォンタナがキャンバスを日本製のカッターナイフで一発で切り裂いたように目指すところで、あらかじめ用意してあるものを演奏するっていうのは上手く聞こえてもハプニングしないんだよ。
だから音の刃(やいば)を磨く基本中の基本練習は毎日やってますよ(笑)。
一方、神崎さんがバンドのメンバーに求めていることって、何ですか?
神崎
やっぱり自分の思っていることをストレートに出すということですね。周りを気にしないで。人は日々変わっていくし、日によって調子も違うから、その日の気分をストレートに出してくれたら、こちらもそれをまとめやすいんです。僕はメンバーたちに、自分を出させるために叱咤してるんです。怒るというか、自分では叱咤激励のつもりなんです。追い詰めていけば、窮鼠猫を噛むみたいな感じで、本性が出てくるから。僕はその本性を掴みたいんです。「お前本性を出したな、よし、一緒に行こう」みたいな。それは言い方を変えれば、火事場のバカ力じゃないですか。そしてその火事場の力を体験した時に、その人もひとつ上のステージに上がれるんです。その火事場の力を実感してもらうためには、まず僕が燃えなきゃ、って。僕が燃えていないと、周りがその力が出せないんですね。
坂本
潜在能力を引き出す、みたいな感じですね。
神崎
そうだと願いたい。だから僕のバンドを通ったヤツは、みんないいミュージシャンになる(笑)。
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