THE SAX vol.108 特集2

サックスも彩りを添えたダンスミュージック進化の歴史

切っても切れない関係であるダンスと音楽。音楽の根源的な魅力は人を踊らせることにあると言えるかもしれない。そして、踊りのための音楽=ダンスミュージックは20世紀から21世紀にかけて大きな発展を遂げた。さらに、そこにはサックスという楽器も大いなる貢献を果たしてきた。
今回の付属ダウンロード音源は、そんな魅力的なダンスミュージックのなかから古今東西のヒット・ナンバーをピックアップして選曲している。そこで、ここではポピュラーミュージック進化の過程ともリンクするダンスミュージックの歴史を振り返ってみよう。
(文:櫻井隆章)

踊るためのジャズにバンドという形態が出現

ジャズという音楽は、本来はダンスを踊るための音楽であった。ジャズが生まれた19世紀末(諸説あり)、当初は素朴なリズムと、あるかないか程度のメロディに合わせ、ストリートや広場などでそれぞれが思い思いのスタイルでリズムに合わせて踊っていたのが原始の光景。それが徐々に組織化され、体系立っていくに従い、自然発生的に出来上がっていったのが、バンドという形態である。評判の良かったバンドにはあちこちから声がかかり、演奏の対価としてギャラが支払われるようになると、ここで「プロフェッショナルなミュージシャン」というものが出現するのだった。この、「評判の良さ」とは、如何に多くの人たちが踊れる音楽を演奏できるかという点が大きかったと思われる。こうした時代は、1950年代頃まで続く。

シンプルな8ビートによる踊れるR&Bが登場

キング・カーティスキング・カーティス

その後のジャズが、如何にアドリブで複雑なソロを聴かせるか、高度なハーモニーを響かせるかなどといった方向に舵を切り、踊れる音楽が鑑賞する音楽になっていき、踊れるタイプの音楽ではなくなっていったのとほぼ同時に、別種の「踊るための音楽」が出現するのだ。それが、後に「R&B」と呼ばれる音楽に発展するタイプの音楽である。ジャズのような、その時点で複雑化したリズムを持つようになった音楽と違い、こちらは後に「8ビート」と呼ばれるようになるシンプルなリズムを持ち、踊るには最適なものなのだった。この当時にスターとなっていたのが、シンガーではレイ・チャールズであり、サックス奏者ではキング・カーティスであった。……と、ここまではすべてアメリカのアフリカ系に関する音楽の流れのご説明である。

 

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