サックス記事 デビューから10年を迎えたサクソフォン界のニューリーダーが激動の歩みと最新アルバムを語る!
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THE SAX vol.121 Cover Story

デビューから10年を迎えたサクソフォン界のニューリーダーが激動の歩みと最新アルバムを語る!

ARTIST

史上最年少で第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門第1位を受賞した直後のインタビュー(vol.50)以来、本誌では常にその動向を見守ってきた上野耕平が、デビューから10周年を迎えた。いまやクラシックと吹奏楽の両分野でサクソフォン奏者のシンボルとなり、国内のみならず世界のサクソフォン界を牽引する新たなるリーダーにまで成長。そんな彼が6枚目のソロアルバム「eclogue」をリリースした。これまでの輝かしい10年を振り返ってもらうとともに、新作を皮切りにした次なる10年への展望も語ってもらった。

(インタビュー・文:中野明/取材協力:株式会社イープラス、株式会社ヤマハミュージックジャパン)

10年で音楽に対してもサクソフォンの音色に対しても理想が変わった

デビュー10周年おめでとうございます。
上野耕平
デビューアルバムは2014年だけど、初リサイタルが2015年の1月でした。やんわりと10周年です。10年前はまだ学生でしたから、変わりましたよね。
見た目は変わらないですね。
上野
でも8kg太ったんですよ。それにつれて音も変わりました。
全然分からないです。ところでこの10年、何が印象に残っていますか。何か大きな出来事とか。
上野
そうですね、理想が変わった、ということでしょうか。音楽に対してもそうですし、サクソフォンの音色に対しても変わりました。
それは具体的に言葉にするとどのような?
上野
音色で言うと、昔はもっと明るく、きらびやかなものを求めていて、常にはつらつと、良い音で吹こうと思っていました。でもそれだけじゃない、ということに気づいて、もっと暗い音や、もっと陰のある表現をしたいとか、そういう理想が変わってきた、というのがこの10年でいちばん大きかったですかね。
ソプラノならソプラノらしくとか、ソプラノサックスの良い音を出そうとか、そういうことすらまったく思わなくなった。サクソフォンであることを意識せず、音楽をするために必要な音を出そうと。それがかえって楽器の面白さをもっと広げるだろうという考え方をするようになりましたね。
この10年で記憶に残っているコンサートはありますか。
上野
いろいろありましたね。世界初演も何度もしましたし、本番中に鼻血が出たこともあるし(笑)。
え、吹いてる最中に、ですか。
上野
リュエフの『ソナタ』でした。1楽章を吹いている途中で、なんか鼻水が出てきたな嫌だな、と思って、でも無伴奏だし吹き続けるしかなくて、1楽章が終わって拭いたら、エッ、血だ、と。引っ込むわけにもいかないのでそのまま続きを吹きました。血まみれのリュエフ(笑)。
それはともかく、47都道府県すべて回りましたし、いろいろな方との共演もあり、いい経験をさせてもらったなあと。
ソロ以外にも、広範囲に様々な活動をされてきた10年だったと思います。サクソフォン四重奏のThe Rev Saxophone Quartetや、吹奏楽団ぱんだウインドオーケストラなど。
上野
一緒に年を取っていく面白さはあります。みんなの人生のステージが変わっていく、そうすると音も変わっていく。グループで活動しているからこその楽しみ、というのは実感します。
コロナ禍もありましたね。
上野
そう、そんなこともありました。
今となってはともかく、真っ最中の時は大変でしたよね。
上野
本当に、「失業者」でしたから。まったく先も見えないし。でも、生演奏の良さや価値を再認識することにはなりました。あれを境に気づかされたことは多かったと思います。
 

次ページにインタビュー続く
・大学3年の時の演奏を収録したデビュー作を皮切りに過去5作を発表
・多ジャンル混在で多種のサクソフォンを演奏した渾身の新作「eclogue」
・人間味があって最新の音楽にも古い時代にも行けるヤマハのサクソフォン

 

●PROFILE
上野耕平 Kohei UENO
東京藝術大学器楽科を卒業。第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門第1位・特別大賞(史上最年少)。2014年第6回アドルフ・サックス国際コンクール第2位。現在、国内若手アーティストの中でもトップの位置をしめ、ソリストとしてNHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団 他、国内のほとんどのオーケストラと共演。自身の活動と並行してサクソフォン四重奏「The Rev Saxophone Quartet」、吹奏楽団「ぱんだウインドオーケストラ」としても精力的に活動し、クラシックと吹奏楽を両軸に上野耕平ワールドを築き上げてきた。NHK-FM「×(かける)クラシック」の司会、テレビ「題名のない音楽会」へ出演するなどメディアとの相性も良い。音楽以外にも鉄道と車を愛し、深く追求し続けている。

 
CD information
『eclogue』
上野耕平
【em-0045】¥3,000(税込) eplus music

[演奏]上野耕平(Sax) 、山中惇史(Pf)、三浦一馬(Bandneon)、清水伶(Fl)、 荒木奏美(Ob)、春田傑(Cl)、皆神陽太(Fg)、木川博史(Hn)、中村諒(Tp)、福田悠一郎(1st.Vn)、猶井悠樹(2nd.Vn)、七澤達哉(Va)、鈴木皓矢(Vc)、谷口拓史(Cb)
[曲目]ジャック・イベール:アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲 (I.)Allegro con moto〜(II.) Larghetto〜Animato molto、旭井翔一:Eclogue(エクローグ[田園詩])、アストル・ピアソラ/三浦一馬:孤独の歳月、ジョン・ウィリアムズ:エスカペイド(「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」より)(I.)Closing In〜(II.)Reflections〜(III.)Joy Ride、ニーノ・ロータ/萩森英明・山中惇史:ゴッドファーザーより、山田耕筰/山中惇史:赤とんぼ、アストル・ピアソラ/三浦一馬:レオノーラの愛のテーマ、山本菜摘:Encore Piece

 
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