サックス記事 須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート ~ピアニスト、小柳美奈子と共に~
ヤマハホール・コンサート・シリーズ 珠玉のリサイタル&室内楽

須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート ~ピアニスト、小柳美奈子と共に~

2021年6月12日(土)ヤマハホールにて開催決定!!

海外からの輸入……という形ではなく、日本からのオリジナルな発信という形で世界にそのスタイルを広くアピールした先駆的存在、それが「サクソフォンを手にした吟遊詩人(Trouvere)」であるトルヴェール・クヮルテットである。そのトルヴェール・クヮルテットの外声、つまりソプラノとバリトンを担当する二人が、デュオコンサートを開催することになった。もちろんアルト、そして今回はテナーも用いて、4種のサクソフォンを名手二人が様々な組み合わせで披露してくれるという。さっそく会場となる銀座のヤマハホールにて、お話をお聞きした。
(インタビュー・文:埜田九三朗/写真:井村重人/取材協力:ヤマハホール)

二重奏というスタイルの面白さや可能性を示す格好の機会

お二人ともヤマハサクソフォンの愛用者ですね。
須川展也
(以下 須川)
そうですね、お互いに長年ヤマハを吹いてきました。私はYAS-875EXシリーズの発売当初から関わっていましたが、ヤックン(須川氏は田中靖人氏をそう呼ぶ)も新しいバリトンサクソフォンYBS-82の開発に長年携わり、ついに完成させましたね!
田中靖人
(以下 田中)
技術者のみなさんの努力には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。詳しくは「THE SAX」1月号のインタビューで話しているので是非ご覧いただきたいのですが、今回のデュオ・コンサートでもその魅力は存分に楽しんでもらえると思います。
今回のコンサートは、どんなきっかけで?
須川
ヤマハの方からコンサートの依頼の話があり、ヤックンと演奏したかったのと、ちょうど新しいバリトンサクソフォンが発売になる頃かな?と思ってデュオ企画を出しました。
田中
デュオそのものは以前札幌でやったことがあるんです。あのバターサンドで有名な六花亭札幌本店の6階にある「ふきのとうホール」で。須川さんのコンサートでのゲストで共演したこともありましたね。
須川
でも、よく考えてみたらきちんとデュオ・コンサートと銘打って実施したことはなかったことに気づいたんです。カルテットを組んでいるから「今さらデュオ?」という気がしなくもなかったけれど(笑)、二重奏というスタイルの面白さや可能性を示すいい機会だと気づいたんです。
田中
そもそも、全部二重奏じゃなくてもいいしね。
須川
そう!お互いの好きな曲をソロでやるのも楽しいし、二人でソプラノからバリトンまで全部ヤマハのサクソフォンで統一して聴き比べてもらうのも楽しい(笑)。
田中
この話をいただいて、本当に嬉しかったです。佼成ウインド(東京佼成ウインドオーケストラ)でもカルテットでも、須川さんがどう来るかよくわかっているので、二人で向き合うのがすごく楽しみです。

ヤマハのバリトンサクソフォン新モデルも随所で登場!

新しいバリトンサクソフォンのお披露目にもなりますね。
須川
「新製品が出るよ!」なんてことを、世の中にまだ言っちゃいけない頃から、実はヤックンはカルテットの練習の中で試作品を持ち込んで試していたので、その様子を身近に聴いていたんです。いよいよ本格的に製品化される……と聞いた時には、とても嬉しかった。これからさらにバリトンサクソフォンも立派なソロ楽器として定着していきますよ。トルヴェールで当たり前のように聴いている彼の素晴らしい音を、もっと世の中に広めてもらいたい!と、心から思います。今のトルヴェールのハーモニーを作る作業では、彼の安定した低音は美しいハーモニー構築のために不可欠です。また、トルヴェールのレパートリーは各楽器のソリスティックなところも多く、そこで聴ける彼のキラキラした音色が魅力的で、それが今回の新製品のおかげでもっと世界に知られるといいなと切に思います。ソロ楽器としてのバリトンサクソフォンの魅力を、ヤマハが時代に先駆けて世界に問うてくれるんだなと思っています。
田中
試作の段階では、みんなにずいぶん迷惑かけました(笑)。普段は音がしっかり決まるのが決まらなくなったりしたこともありました。でも、試作段階のいろんなことは現場で試さないとわからないので、避けては通れない道なんです。
須川
トルヴェール「あるある」というか、それがトルヴェールの歴史なのかもしれません(笑)。ぼくが新しいソプラノ(YSS-875EXG)に関わった時も、似たようなことがありました。トルヴェールの最初の録音の2ヶ月くらい前に、いきなり当時の新製品に変えたんです。僕はその音が好きだったから変えさせていただいたけど、楽器が変われば音程が変わってしまう。その新しい音程に合わせるべく指使いを変えて微調整をする必要が生じるんだけど、みんな文句も言わず黙って譜面に新しい指使いを書き込み始めたのを今でも憶えています。みんな黙って演奏しているってことはOKなんだと思えて、表情はみんな楽しそうで嬉しかった(笑)。
田中
その人が一番心地いい音を出した時に自分がどこにいけばいいか……というのをトルヴェールのメンバーはごく普通にやりますよね。
須川
楽譜に必死なときはそれどころじゃないけどね(笑)。

 

次ページにインタビュー続く
・楽器に使われている木材が生み出すヤマハホール独特の響き
・バッハの魅力は、ゼクエンツ(SEQUENCE)=ツーファイヴの連続

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Concert Information

須川展也 & 田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート~ピアニスト、小柳美奈子と共に~
 
[日程]2021年6月12日(土)開場13:30 開演14:00
[会場]ヤマハホール(東京・銀座)
[出演]須川展也/田中靖人(サクソフォン)、小柳美奈子(ピアノ)
[曲目]J.S.バッハ(須川展也編):無伴奏バイオリン・パルティータ 第3番 BWV 1006 より 第3曲 ガヴォット・エン・ロンドー【須川展也(ソプラノ無伴奏)】、 薮田翔一:Delos(須川展也委嘱作品、世界初演)【須川展也(アルト)、小柳美奈子(ピアノ)】、R.クレリス:セレナード・ヴァリエ 【田中靖人(テナー)、小柳美奈子(ピアノ)】、P.クレストン:サクソフォン・ソナタ Op.19【田中靖人(バリトン)、小柳美奈子(ピアノ)】、J-M.ルクレール(J-M.ロンデックス編):ソナタ ハ長調(原曲)【田中靖人(バリトン)、須川展也(バリトン)】、N.ロータ(加藤昌則編):道【須川展也(ソプラノ)、田中靖人(アルト)、小柳美奈子(ピアノ)】、長生 淳:新作委嘱作品(世界初演)【須川展也(アルト)、田中靖人(バリトン)、小柳美奈子(ピアノ)】
[料金]全席指定 一般 4,500円 学生 3,500円
[申込み]チケットぴあでのご予約・お申込
・TEL 0570-02-9999 ※座席選択不可
・WEBからのお申し込み http://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=193-787 ※座席選択可能
・Pコード:193-787
※政府のイベント人数制限方針により販売席数が変動する可能性がございます。予めご了承ください。
 
本公演は、インターネットでも生配信予定です。
配信コンサート視聴には、視聴チケット(発券不要)が必要となります。
視聴方法、視聴チケットのお求め方法はPIA LIVE STREAM公演ページよりご確認ください。
視聴方法はPIA LIVE STREAM公演ページの「申し込み前に注意事項を必ずお読み下さい」をクリックいただき、ご確認ください。http://w.pia.jp/t/st-saxduo/
※推奨環境、よくあるご質問 https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/
※アーカイブ配信(見逃し配信)の内容は一部ライブ配信の内容と異なり、『薮田翔一:Delos』と『P.クレストン:サクソフォン・ソナタ Op.19』の2曲はアーカイブ配信(見逃し配信)をいたしません。予めご了承ください。
 
[注意事項]
※都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※チケット料金には消費税が含まれております。
[主催]ヤマハ株式会社
 

Profile

須川展也 (サクソフォン)
日本が世界に誇るクラシカル・サクソフォン奏者。長きにわたり、C.コリア、F.サイ、坂本龍一、西村 朗、本多俊之、吉松 隆、長生 淳など名だたる作曲家への委嘱を継続。それらの中には既に楽譜出版がされレパートリーとして国際的に広まっている楽曲が多く含まれており、クラシカル・サクソフォンの領域への貢献は計り知れない。作曲家からの献呈作品も枚挙にいとまがない。
NHK交響楽団、東京都交響楽団など国内オーケストラのみならず、BBCフィルハーモニック、フィルハーモニア管弦楽団など世界各国の著名オーケストラや、C.デュトワ、A.ギルバートなどの名指揮者たちと共演。ウィーンのムジークフェラインをはじめ、世界各地の檜舞台でリサイタルを行なっている。また、これまで30ヶ国以上に招かれ公演やマスタークラスを行っており、管楽器の魅力を若い世代に伝える活動を精力的に継続している。
東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。1998年JTのテレビCM出演、2002年NHK連続テレビ小説「さくら」ではテーマ曲を演奏。
これまでに約30枚のCDをリリース。最新CDは自身初の無伴奏作品となる「バッハ・シークェンス」。2014年に自叙伝「サクソフォーンは歌う!」を、また2021年に「絶対!うまくなる サクソフォーン 100のコツ」を刊行。
1989~2010年まで東京佼成ウインドオーケストラコンサートマスター、2007~2020年までヤマハ吹奏楽団常任指揮者を務める。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

田中靖人 (サクソフォン)
国立音楽大学在学中、第1 回日本管打楽器コンクール第2位、第4回日本管打楽器コンクール第1位を受賞。1990年東京文化会館でデビューリサイタルを開催。以来、国内外でリサイタルなど幅広い活動を行っている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団など、ソリストとしてオーケストラとの共演も多数。2000年より(一財)地域創造主催の「公共ホール音楽活性化事業」のアーティストとして、リサイタル、アウトリーチコンサートも意欲的に行っている。2003年和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。
ソロ・アルバムに、1991年「管楽器ソロ曲集・サクソフォーン」(日本コロムビア)、1995年「ラプソディ」(EMIミュージックジャパン)、1997年「サクソフォビア」(EMIミュージックジャパン)、2003年「ガーシュインカクテル」(佼成出版社)、2012年「モリコーネ・パラダイス」(EMIミュージックジャパン)をリリース。また、サクソフォーン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバーとして活躍し、これまでに10枚を超えるアルバムをリリース。2001年文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。
現在、東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター、国立音楽大学、愛知県立芸術大学各講師、昭和音楽大学、札幌大谷大学、名古屋音楽大学各客員教授。

小柳美奈子 (ピアノ)
東京藝術大学卒業。伴奏のイメージを変えてしまう、アンサンブル・ピアニスト。様々なプレイヤーの呼吸の機微を読み取り、それに寄り添うしなやかな感性を数多くのリサイタル、レコーディングで発揮している。吉松 隆「サイバーバード協奏曲」の準ソリストとしてフィルハーモニア管弦楽団他と共演。須川展也氏をはじめとした共演での録音は10数枚を超える。また須川氏に献呈された多くのデュオ作品(吉松 隆氏、西村 朗氏、長生 淳氏など)のほぼ全ての初演を手がけている。
パーカッションの山口多嘉子氏とのデュオ「パ・ドゥ・シャ」で、吉松 隆氏の作品を収めたCDも発表している。欧州やアジア諸国での演奏も多く、いずれも高い評価を集めている。
トルヴェール・クヮルテットの共演者としてのキャリアも長く、多くの録音に参加。Trio YaS-375のメンバー。ピアノを安川加寿子、梅谷進、秦はるひ、今井正代、長谷川玲子、本村久子の各氏に師事。

登場するアーティスト
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須川展也
Nobuya Sugawa

日本が世界に誇るサクソフォン奏者。そのハイレベルな演奏と、自身が開拓してきた唯一無二のレパートリーが国際的に熱狂的な支持を集めている。デビュー以来、長年にわたり同時代の名だたる作曲家への作品委嘱を続けており、その多くが国際的に広まっている。近年では坂本龍一『Fantasia』、チック・コリア『Florida to Tokyo』、ファジル・サイ『組曲』『サクソフォン協奏曲』等。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。98年JTのTVCM、02年NHK連続テレビ小説「さくら」のテーマ演奏をはじめ、TV、ラジオへの出演も多い。89年から2010年まで東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターを務めた。最新CDは16年発売の「マスターピーシーズ」(チック・コリア/ファジル・サイ/吉松隆)。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督。東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

登場するアーティスト
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田中靖人
Yasuto Tanaka

1964年和歌山市に生まれる。 国立音楽大学在学中、第1回日本管打楽器コンクール第2位、第4回日本管打楽器コンクール第1位を受賞。 1990年東京文化会館でデビューリサイタルを開催。以来、国内外でリサイタルなど幅広い活動を行なっている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団など、ソリストとしてオーケストラとの共演も多数。 2000年より(一財)地域創造主催の「公共ホール活性化事業」のアーティストとして、リサイタル、アウトリーチ コンサートも意欲的に行なっている。2003年和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。 ソロ・アルバムに、1991年「管楽器ソロ曲集・サクソフォーン」(日本コロムビア)、1995年「ラプソディ」(EMI music japan)、1997年「サクソフォビア」(EMI music japan)、2003年「ガーシュイン カクテル」(佼成出版社)、2012年「モリコーネ パラダイス」(EMI music japan)をリリース。 また、サクソフォーン四重奏団 トルヴェール・クヮルテットのメンバーとして活躍し、これまでに10枚を超えるアルバムをリリース。2001年文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。 現在、東京佼成ウインドオーケストラコンサートマスター、国立音楽大学、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学、桐朋学園大学各講師、札幌大谷大学客員教授、名古屋音楽大学客員教授。

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