トランペット 記事
クリス・ボッティ

世界のスーパースターへと登りつめたトランペットの貴公子

スティングやボブ・ディランといったポップス界の大物からヨーヨー・マやアンドレア・ボチェッリといったクラシカルなシーンのアーティストまで、幅広いフィールドでトップ・スターとの交流を持つ世界的トランペッターと言えばクリス・ボッティ。高い演奏力と音楽性に加え、『PEOPLE』誌で「世界で最も美しい50人」に選ばれるほどの端正なルックスを併せ持つ。そんな天から二物も三物も与えられたスーパースターが、コロナ禍を経て久々の来日公演を敢行した。詩情あふれる音色と華麗なるパフォーマンスで定評のある彼のステージにファンは歓喜したが、さらに嬉しいことに本誌の表紙およびインタビュー初登場も実現した! トランペット界に輝く永遠の貴公子の貴重な言葉の数々を篤とご堪能あれ!!
インタビュー・文:櫻井隆章/写真:井村重人(アーニーズ・スタジオ)/取材協力:ブルーノート東京

コロナ禍では時間の使い方が判らなくて、ひたすら練習していた

ステージ上の彼は、どちらかと言うとハリウッド・スターのような雰囲気を醸し出しているが、実際に会ってみると、まぁ気さくで多弁、そして半端ないほどの頭の良さを感じさせる男であった。

昨晩のライブはとっても素晴らしいものでした。バンドのメンバーたちも素晴らしいプレイでしたが、彼らとはどれくらいやっているのですか?
クリス・ボッティ
メンバーによって変わるけど、リズム隊のメンバーたちとは2~7年くらいかな。最後に出演したヴォーカルとギターのジョン・スプリトホフとは、まだ数か月だよ。
女性ヴォーカルのサイ・スミスも素晴らしかったですね。
クリス
あぁ、実は彼女との付き合いが一番長いんだ。何と、僕と一緒にプレイするようになって、もう15年になるんだよ。
でも、このコロナ禍にあって、どうしていましたか?
クリス
ずっと練習していたね(笑)。僕はずっとツアーをしていたから、時間の使い方が判らなくなってね。で、ひたすら練習していたのさ。あと、熱心にワーク・アウトもしていたな。
 

ドク・セヴァリンセンをテレビで観てトランペットを志す

生まれはオレゴン州ですよね? オレゴンの、どの街ですか?
クリス
ポートランドだ。州都だね。でも1986年にニューヨークに移った。今はそこがメインの住み家だけど、ロサンジェルスにも部屋を持っている。何せツアーが多いから、空港のそばに持っているんだよ(笑)。
ところで、トランペットが最初の楽器ですか?
クリス
いや、母親がクラシック・ピアノの教師だったもので、ピアノが最初の楽器だったんだ。10歳の頃からトランペットを始めたんだよ。テレビの「トゥナイト・ショウ」(註:60年代から大人気だった全米ネットの番組)に、ドク・セヴァリンセンがリーダーのバンドが出ていてね。番組のハウス・バンドだったんだが、そこのトランペット陣がカッコ良くてさ。それでトランペットをやろうと思ったんだ。
10歳の頃なんて、ロックンロールを歌うとか、ギターを弾くとかしそうですけどね。
クリス
あぁ、確かにね(笑)。でも、そうはならなかったな。ギターとかは、見よう見真似で何とかなったりするだろ? だが、トランペットはそうは出来ないよね。とにかく、練習しないことには音も出ないだろ? ま、チェット・ベイカーみたいに歌を歌う人もいるけどさ。でも、例えばヨーヨー・マは、ロックは歌わないと思うよ(笑)(註:彼は世界的なチェロ奏者であるヨーヨー・マとも共演経験がある)。そもそも、僕は12歳の時にマイルス・デイヴィスを聴いて衝撃を受けたんだ。彼のトランペットは、単に音色が良いというだけではなくて、彼のパーソナリティとかすべてが、その音色に現れていると思ったんだよ。聴いたのは『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』だったな。それからジャズにのめり込んだんだ。

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・デヴィッド・フォスターをプロデューサーに迎えた新作が完成!
・ホーン・セクションも強力なEW&Fとの全米ツアーも経験
・20年以上も使い続けている1939年製造のマーティン・コミッティ

CHRIS BOTTI クリス・ボッティ
1962年10月12日、アメリカ・オレゴン州ポートランド生まれ。幼少よりピアノを始め、10歳でトランペットを始める。マイルス・デイヴィスなどに影響を受け、トランペットで生きる決心をし、高校時代からプロとしての活動を始める。中西部のインディアナ大学に進学し、何人ものプロ・アーティストに師事。卒業後の1986年にニューヨークに本拠を移し、本格的にプロとしての活動を開始すると共に、ウディ・ショウに奏法を習う。数々のアーティストのセッションやレコーディングに参加。1990年からはポール・サイモンのツアー・メンバーとなり、初来日も経験。95年に初アルバム「ファースト・ウィッシュ」を発表。その後はコンスタントにアルバムを発表し続けている。


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