トランペット 記事
市原ひかり

トランペットで歌ってヴォーカルで奏でる、新境地に挑んだ新作を語る

20代前半でメジャー・デビューし、すでにリーダー・アルバムは8枚を数える、日本の女性ジャズ・トランペッターのアイコン的存在である市原ひかり。そんな彼女の9作目となるニューアルバム「シングス&プレイズ」が4月にリリースとなる。タイトルから想像できるようにトランペットのみならずヴォーカルにも初挑戦した意欲作だ。トレードマークのひかりスマイルをいっぱいに湛えて、アルバム完成の喜びの声を聞かせてくれた。
(文:熊谷美広/写真:標 隆司/協力:株式会社ポニーキャニオン)

ヴォーカルに挑んだきっかけは日野皓正からの言葉

ニュー・アルバム「シングス & プレイズ」では、ヴォーカルにも初挑戦していますが、歌は以前からやっていたのですか?
市原ひかり
歌は、打ち上げで酔っ払って歌うことはあったのですが(笑)、ちゃんとボイトレを受けるようになったのは3年くらい前です。
本格的にやろうと思ったいきさつは?
市原
細かいきっかけはたくさんあったんですけど、毎年、岐阜県の瑞浪市で、「ザ無礼講ジャズ・ライブ」という、土岐(英史)バンドに日野皓正さんがゲストで参加するっていうライブをやってるんです。実は平安時代から土岐一族と日野一族が敵対していたんだけど、今日だけは楽しく飲みましょうという日があって、それが“無礼講”という言葉の語源になったそうなんですね(笑)。それで毎年ライブが終わったらスナックで打ち上げをするんですけど、やっぱりトランペッターの性質か、私がひたすら歌って、日野さんがひたすらマラカスを振る会、みたいになって(笑)。すると日野さんが「おまえはトランペットやってるよりも、歌のほうがいいじゃないか、歌をやれよ」って言われて、それが3年くらい続いて(笑)。
まさか、日野さんが歌うきっかけだった?
市原
そうなんです。それで日野さんが、アルフィー(東京・六本木にあるジャズ・クラブ)のママさんに「ひかりの歌がいいから、やらせてやれよ」って言ってくださって、歌のライブをやらせていただけることになりました。その時にやっぱりちゃんと勉強しなきゃ、ファンダメンタル、基礎練習って必要なんだって思って、ボイトレを受け始めたんです。それで2回目くらいの歌のライブの時に、プロデューサーに「次のアルバムでは歌いたい」っていう話をして来てもらったら全然ダメで(笑)、それからまた2年くらいがんばって、ようやく今回のアルバムにたどり着きました。

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・歌とトランペットの両方を、もっともっと寄せていきたい
・英語の発音ができないとアドリブのアーティキュレーションは吹けない
・譜面を手に入れて吹くのではなく自分の耳で聴いてコピーして吹こうよ

市原ひかり
1982年12月22日東京都出身。成蹊中学校入学と同時に吹奏楽部でトランペットを始め、高校卒業までの6年間クラシック・トランペットを学ぶ。洗足学園音楽大学ジャズ・コースに進学し、卒業後の2005年に「一番の幸せ」でメジャー・デビュー。その後も、オリジナル曲を中心とした様々なフォーマットのアルバムをリリースして注目を集め、今回の「シングズ&プレイズ」が9作目となる。自己のグループでの活動の他、土岐英史、山下達郎、竹内まりや、土岐麻子などのレコーディングやライブにも参加。また『トップ ランナー』『題名のない音楽会』『ミュージックフェア』『僕らの音楽』などといったテレビ番組にも出演している。

CD Information

vermilion
「シングス&プレイズ」

【PCCY-30250】¥2,778(税別) ポニーキャニオン
[収録曲]My Funny Valentine、My Shining Hour、How My Heart Sings、Be Bop Lives、Bein’ Green、It’s A Sin To Tell A Lie、But Beautiful、I’m Old Fashioned、Like Someone In Love、We’ll Be Together Again
[演奏]市原ひかり(Tp,Flh,Vo)、ジョシュ・ネルソン(Pf)、ロブ・ソーセン(Bass)
 

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