ファーガソンのハイノートを新しい角度から探る
エリック・ミヤシロに憧れたチェロ弾き

MF急逝により急遽行われた追悼ライヴ(前述)で、ゲストとして登場した「もうひとりのMF」がエリック・ミヤシロ。そのエリックに憧れるあまり、「成層圏」を楽々と飛翔できるようになったチェロ奏者がいまSNSを中心に話題を呼んでいる。その人の名は、西方正輝。スタジオを中心に活躍するチェロ奏者だが、そのかたわら? EMモデルを手に朗々と「成層圏」を飛翔する動画が、いま急激に閲覧数を上げている。本誌に教えてくれたのは別項で寄稿してくれている「MF隊長」の堤豊氏。「隊長」もみとめる素晴らしい演奏をする彼が、最初にエリックと出会ったのは千葉県立幕張総合高校のオーケストラ部だった。同校を指導する佐藤博教諭(専門は作曲)のもと研鑽を積み、10歳から始めたチェロを究めるために東京藝術大学に進学。しかし、高校時代にオーケストラ部の活動の一環で共演したエリック・ミヤシロが、彼にトランペットの……いや、「成層圏」の魅力を伝えた。大学卒業後、スタジオミュージシャンとして活動を開始ししても、「成層圏」への憧れはいや増すばかり。ついに23歳のころにヤマハYTR-8340EMを購入し、エリックと同じマウスピース(EM1)を使い、エリックの動画を細部まで分析して必死にコピーした。
「ともかく、高校時代に聴いたエリックさんの音、雷に打たれたような衝撃でした。金管楽器は中学校の頃にユーフォニアムを数か月やっていたので、音を出す勘はつかんでいた気がします。23歳で吹き始めた時は、最初からハイベー(前述)くらいは出ました」
エリックの音だけを最初に徹底コピーし、そこからMFを知り、サンドヴァルを知る。トランペットを始めて数年後に芸大の同期のトランペット科の仲間の練習を見て、ほんとはこんなに低い音を練習しなきゃならないのか、と驚いたくらいトランペットに関しては初心者状態だった。
「もっと高い音を出す楽器だと思いこんでいたんですね。歯並びですか? よくないですよ、前歯の一本がちょっと出ていて、そこにマウスピースを当てる感じです。痛くはありません、始めたころはまんなかにあてていましたが、だんだんズレてきた。息はこの飛び出した歯とまっすぐな歯との隙間から出ている感じですね。最初の頃はまっすぐだったらよかったのに……と思いましたけど、それほど悩むことはありませんでした」
最近では、トランペットで仕事をもらえるようになったというからすごい
「CMや劇伴のレコーディング、高嶋ちさ子さんや葉加瀬太郎さんのツアーではチェロのほか、トランペットを吹く場面もありました」
気を付けているのは唇のコンディション。
「吹く前には、時間をかけて水を1リットルくらい飲むようにしています。吹く5時間くらい前には起きて、マッサージ代わりにぶるぶるってバズしたり唇の周りをタッピングしたりして、唇のむくみを完全にとっておくようにしています。逆に言うと、ウォームアップはほとんどしません。このやり方は、エリックさんの本(パイパーズ刊 既出)で学んだことです。呼吸に関する記事も役に立ちましたが、トランペットを吹く前に心がけているのはこのことです。そうすると繊細な唇になる、ちょっとの息で反応してくれるようになる、と思っています」
おそらくは世界初? のチェロとトランペットのダブラー。当年とって31歳。これからの活躍に注目したい。


















