国内トップ奏者に訊く私のマイルス遍歴
ここからは、本邦ジャズトランペット・シーンの最前線で活躍する人気プレイヤーたちに自身のマイルス体験を語ってもらおう。マイルスについてのアンケートに答えてもらった。
(掲載は五十音順/回答のあった項目のみ掲載)
音楽家マイルス・デイヴィスの最も素晴らしい点は?
演奏家マイルス・デイヴィスが他のプレイヤーと違う最も特徴的な点は?
マイルスのアルバムで最も好きな1枚、または最も好きな1曲は?
マイルス・デイヴィスに聞いてみたい疑問や質問は?
マイルス・デイヴィスにまつわる想い出やエピソードがあれば教えて

市原ひかり
A1. ひとときたりとも進化が止まらず、生涯にわたり新しいスタイルを追求し続けたところだと思います。更には、そのプレイがいつもオーディエンスに受け入れられた部分も唯一無二だと考えています。
A2. Q1の答えもそうですが、さらにはバンドをまとめるリーダーシップと、その時々の音楽スタイルにベストマッチなプレイヤーを選ぶ天才だと思います。また、ファッションまで音楽と統一感があるところも最高です!
A3. 「マイ・ファニー・ヴァレンタイン(My Funny Valentine:Miles Davis in Concert)」
ジョージ・コールマン、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスは私にとってのベストメンバーですが、そのメンバーの中でも最高傑作です。いつ聴いても新しい発見があり、バンド内でのコール・アンド・レスポンスだけにとどまらず、オーディエンスとの一体感は聴けば聴くほどゾクゾクします!
A4. すべての疑問の答えがマイルス・デイヴィスの音楽の中にある気がしているので、特にないのです……。「模索」というジャズミュージシャンが欠かしてはいけない大切な機会を与えてくれる人だと思います。

岡崎好朗
A1. 圧倒的なリズムの良さだと思います。特にバラードの演奏におけるタイム感はすべてのミュージシャンのお手本だと思います。
A2. 演奏しているラインの中に、その時のコードの重要な音をあまり入れずに、メロディを重視して演奏するところです。特に50年代のスタンダードの演奏に顕著に現れます。
A3. 「ブラックホークのマイルス・デイビス(vol.1&2)」
Milesのアルバムの中で最もスイングしているアルバムの一つです。60年代のクインテットとは違って革新的なことはやっていませんが、ジャズのエッセンスのすべてが入っている素晴らしいアルバムです。
A4. すべての時期において使用していた、すべてのマウスピースのスペック。
A5. 人生で一番最初にトランスクライブしたソロは、『ウォーキン』(アルバム「ウォーキン」)のソロでした。高校生の時だったので、その後の音楽人生を決定した曲でもあります。

奥村晶
A1. 強さと弱さ、叙情と狂気、というような振れ幅が大きく、瞬間的に自由自在に操れるところ。
A2. 強いて言えばQ1の答えかもしれないが、優秀なプレイヤーは皆それぞれ個性的な特徴を持っているので、比べようが無い。
A3. 「マイルス・イン・フランスーマイルス・デイビス・クインテット1963/64 ブートレグ・シリーズ Vol.8」『So What(1963. 7/26)』
音色、展開、構成、どこを切り取っても美しい一つひとつのフレーズの完成度、集中力、楽器のコントロール……すべてが凄すぎる。

佐瀬悠輔
A1. ミュージシャンとしてのリーダーシップと圧倒的なカリスマ性。自身のプレイはもちろん、それ以上にメンバーの人選や絶妙な楽曲のアレンジメント、新しいjazzの表現を探求しここまで拡張させた人は過去にも先にもいないと思います。
A2. 先に述べた内容で、自身を取り巻くミュージシャンや音楽性がどんどん変化していっても、トランペットの音色やプレイ内容は一貫している点。その音楽性に自分をフィットさせるのではなくあくまでマイルス・デイヴィスが常に音楽の軸にあり続けていること。
A3. 最も好きなアルバムというのは決めかねますが、「ビッチェズ・ブリュー」は最近聴き直して好きになったアルバムです。父親のCDを引っ張り出して聴いた中学時代はさっぱり魅力が分からず寝てしまった印象しかなく、それから遠ざかっていたのですが、特徴的なリフやサウンド、時代を切り開こうと試行錯誤するミュージシャンの演奏が今聴くととても興味深いです。爆音で聴くことをオススメします。
A4. 単刀直入にトランペットという楽器を生涯演奏し続けて良かったのか聞きたいです。ほかの楽器に対する憧れはなかったのか。
A5. jazzは小学生の頃にHead Huntersから聴き始めて、そこからフュージョンをずっと聴いていたのですが、中学生になってストレートアヘッドなジャズを聴かないといけないと思い始め、初期マイルスのアルバムを我慢して聴いていた記憶があります。

高瀬龍一
A1. 音楽家としては、常にバンド全体のサウンドのことを考えていて、ジャンルにこだわらず、アグレッシブであり続けたこと。演奏家としては、即興演奏とブルースを大切にして、感性で適当に吹いていたこと(笑)。
A2. バラード演奏が、他のプレイヤーとはまったく違うことだと思います。コード・チェンジに沿ってフレーズを吹くのではなくて、頭に浮かんだ音を、絶妙なタイミングで置いていくやり方を編み出したこと。
A3. [アルバム]「カインド・オブ・ブルー」
[曲]アコースティック期:『Bag’s Groove』(「バグス・グルーヴ」)/エレクトリック期:『Fat Time』(「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」)/客演:『You Won’t Forget Me』(「Shirley Horn With Friend’s」)
全部に共通なことは、まったくシステマチックではなくて、感覚的に、ブルース・フィールを大事にして、スピード感のあるいい音色とリズムで、時間的な流れ、バンドサウンドを感じながら演奏しているところが、素晴らしいと思います。
A4. トランペットの練習はしますか? どんな練習ですか?
A5. 17歳の時に初めて、マイルス・バンドのコンサートを、聴くことができました。体調不良のため、コンサートは40分1回の演奏で終わりました。ステージ上にでっかく『禁煙』と書かれてましたが、マイルスは、その下でタバコを吹かしてました(笑)。

















