クラリネット記事
サトーミチヨさん、有馬理絵さんがレコメンド【動画あり】

SELMER Paris社よりクラリネット“Muse”新生

SELMER Paris社より新製品“Muse”が発表された。セルマークラリネットといえば重厚な音色と吹奏感というイメージを持っている読者も多いかもしれないが、この“Muse”は今までのセルマーとは一味違う。それは一言でいえば「ユニバーサルデザインのクラリネット」……? 一体どういうことだろうか。最近“Muse”を使用しはじめた東京都交響楽団首席クラリネット奏者のサトーミチヨさんと、東京佼成ウインドオーケストラ クラリネット奏者 有馬理絵さんに詳しく話を伺った。

 
サトーミチヨ
東京藝術大学卒業、同大学院修了。第9回・12回日本管打楽器コンクール入賞。第1回多摩フレッシュ音楽コンクール第1位。第4回日本木管コンクール第1位、朝日新聞社賞、兵庫県知事賞受賞。第63回日本音楽コンクール第2位、E・ナカミチ賞受賞。これまでに東京都交響楽団、新日本フィル、東京シティフィル、関西フィルなどと共演。NHK土曜リサイタルに出演。平成25年度文化庁新進芸術家海外研修派遣研修員としてパリに留学。東京都交響楽団首席クラリネット奏者、東京藝術大学非常勤講師。
有馬理絵
京都市立芸術大学を首席で卒業。卒業後、東京藝術大学大学院を修了。読売新人演奏会、ヤマハ管楽器新人演奏会等に出演。第68回日本音楽コンクール入選。第18回日本管打楽器コンクール入賞。現在、東京佼成ウインドオーケストラ団員。洗足学園音楽大学非常勤講師。
 

【サトーミチヨさん試奏動画公開中!】
本編の最後に、今回レコメンドしてくれたMuseをはじめ、セルマーのB♭クラリネットのハイエンドモデル「Récital 、Signature、Privilège 、Muse」の4機種をサトーミチヨさんが試奏。それぞれの特徴についても語っていただきました。各モデルの音色をぜひチェックしてみてください!


Museに一目惚れ!

まずはMuseを吹いた時の第一印象、そしてこの楽器を吹くことにした理由をお聞かせください。
サトー
試奏したその日に「持って帰りたい!」とお伝えしたら、野中貿易の方にちょっと待ってくださいと言われてしまいました(笑)。そのくらい一目惚れでしたね。今までセルマーの楽器を何本か吹いてきましたが、その都度気に入って、自分の愛機、相棒だと感じていました。直前に吹いていたプリヴィレッジにも充分満足していて、「わたしの音楽人生の最後の楽器になるかな」と思っていたのですが、このMuseを吹いて、そんなことは言っていられない、これでもう一花咲かせなきゃ、という気になりましたね。
有馬
いい意味で「スタンダード」な楽器。奏者の個性を楽器によって打ち消さない楽器だと感じました。自分のやりたいことを、あまり作為的に操作しなくても楽器が自然に作ってくれるような感覚ですね。楽器自体に強すぎる個性があるものは、自分とそのスタイルが合っていれば問題ないと思いますが、このMuseは振れ幅が広くて、セルマーらしさはもちろんありますが、その上で演奏者自身のこうしたい、こうありたいというスタイルに合わせてくれるように感じます。私はもともと他のメーカーの楽器を使っていましたが、次の一本を探しあぐねており、どれもピンと来ていませんでした。このMuseを吹いて、これに賭けようと思い選びました。

音色と発音がピカイチ

Museを吹いていて、メリットと感じる部分を教えてください。
サトー
第一に音程がコントロールしやすいことですね。いい音程を楽に取ることができます。もちろん「チューナーでぴったりに合わせられるか」ということは求められますし、音階を吹いたときに違和感がないことも重要です。例えばオーケストラの中で吹く場合、高音楽器のフルートやヴァイオリン。中低音のファゴットやヴィオラ、チェロと一緒に動くときに音程をいかに寄せることができるか、ということも重要です。場面によっては少し高めにとらなければいけないこともあれば、低めの音程が要求されることもある。それが1拍1拍状況が変わっていく中で動いていかなければいけませんが、そのアンサンブルがとてもやりやすいです。有馬さんがおっしゃったナチュラルさという部分にもこのことは通じていて、音色が明るすぎても暗すぎても、また倍音も少なすぎても多すぎてもこのようなアンサンブルはやりづらくなります。倍音は直接私たちの耳で捉え切ることができないものではありますが、音の輪郭や身体の中で響かせた時の聞こえ方で今までの楽器とは違うということがすぐにわかりました。試奏室で吹いてもそれはわかるのですが、実践でホールで吹いた時はより明確にわかりましたね。周りから聞いてもその変化に気づいたようで、共演者たちからは、「今日調子良さそうだね」と言われました。人が変わったように音色が変わってしまうとそれはそれで困りものですし、一番嬉しい反応でしたね。
有馬
私はまだ実践はこれからで、夏中練習して、秋から本格的に“Museデビュー”と思っています。なのでホールでの使用感というところはまだわからないのですが、現段階で既にサトーさんがおっしゃったような音程の良さに加えて、この楽器の発音の良さを感じています。これは私にとっては非常に大きい部分で、今まではマウスピースやリガチャー、リードといったセッティングをかなり工夫しないと満足いく発音の状態に持っていくことが難しかったのですが、あまり考えなくてもポンポンと歯切れのいい発音で奏でられるので、感動しましたね。
サトー
発音の難しさはプロも学生も、クラリネット奏者全員の課題ですよね。それができればもう100%といってもいいかもしれません(笑)良い音色のまま、発音がちゃんとクリアに表現できる。当たり前のようでいて、これに尽きると思います。
サトーさんは今までセルマーの楽器を何種類か吹いてこられたということですが、Museは他の楽器と比べた時、どのような特徴があるように感じられましたか?
サトー
明るくてナチュラルな音色が出るように感じられました。Museは他の楽器に比べて効率よくスムーズに音を出すことができます。といっても、明るすぎるわけではありません。昔、セルマーのアルティスというモデルを吹いていましたが、それはとても明るくソリスティックな音を出せる楽器でした。ソロやピアノとのデュエットでは非常に表現しやすい楽器だったのですが、オーケストラの中で使うには明るい音色を持っている分、そうではない表現をするのに苦労する部分もありました。プリヴィレッジは懐の深い音色を持っていて、しかもその音色を簡単に出すことができます。しかし、逆にソロや室内楽で明るい音色を出そうとすると、少し無理をしないといけません。私は女性なので、吹奏感がある程度心地よい楽器でないと、日々使用する楽器、身体の一部として扱うことが難しくなってきますが、このMuseは私にとって一番いいところにポイントがあるように感じられています。
音域による吹奏感の均一性についてはどうでしょうか。
有馬
音域による吹奏感のムラをまったくといっていいほど感じません。私はB♭管に加えA管も吹いていますが、指穴をたくさん押さえるシやドの音はどの楽器でもどうしても抵抗が大きくなります。しかしMuseは他の音域と比べてもそこまで違和感なく吹くことができます。
 

>>インタビューは次のページへ続きます!
・クラリネットの鬼門を克服
・ユニバーサルデザインのクラリネット

 

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