中高生のための「クラリネット演奏法」

第23回 総括 その1 〜クラリネットの音域と“倍音”〜

クラリネットの演奏法をテーマに始まったこの講座もいよいよ終盤に差し掛かりました。
今までアーティキュレーションやフレージング、ニュアンスなど基本的な演奏法について勉強してきましたが、今回からは最後のまとめも含めて、音の均質性や指のテクニックを中心に、話を進めていきたいと思います。指のテクニックは、機械的に動けば良いという問題だけではなく、リードとマウスピースの関係や、呼吸法やアンブシュア、タンギングなどの基本的な奏法や密度のある音質と音の響き(ソノリテ)があって初めて獲得できるのです。初心に戻り、改めて均質な音を耳で覚えて確認していきましょう。

クラリネットの全音域を均質に出そう

クラリネットの音域はシャリュモー音域、スロート音域、クラリオン音域(クラリーノ音域)、高音域の4つに分かれています。これらの音域はそれぞれ音の高さや特有の音色の違いがあるものの、基本的にはどの音域でも音は均質に鳴らなければなりません。
シャリュモー音域はクラリネットの前身である民族楽器のシャリュモーという名称からきていますが、まずこの音域を充分に鳴らすことが基本的にとても重要です。この低い音域の音が基音となり、倍音によってその上の音が決定されるからです譜例参照)。

倍音

クラリネットの豊かなシャリュモー音域の音には同時に幾つかの音が含まれていますが、その基になる音の基本振動に整数分の1(2分の1、3分の1など)の振動音が発生したとき、それらを倍音といっています。その周波数は整数倍になります。金管楽器はピストンやスライドを操作しなくても息と唇だけで、音が変えられますね。あれは倍音で音が出ているのです。金管楽器と木管楽器では楽器の機構上の違いはありますが、基本的には倍音によって他の音域が鳴る仕掛けになっています。
フルートやオーボエ、サックスなど木管楽器は開管(管の両方が開いている)で、オーバーブロウ(上の倍音を出すために少し息を強くする)あるいはオクターブキィを押すと、オクターブ上の音が出るのに対して、クラリネットは閉管(管の片方が閉じられている)で、ほとんど円筒形なので倍音の構造が異なり、オクターブと5度上(実際は12度上)の音が出てしまいます。そこで4度の空間を埋めるためにスロート音域が作り出されたのです。

登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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