クラリネット記事
Cover Story│ダニエル・オッテンザマー

ダニエル・オッテンザマー 世界に冠たるクラリネット界のカリスマ

クラシカル・クラリネットの世界において、その名を知らぬものはいない名家・オッテンザマー家。その長兄にして、父と同じくウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者として勇名を轟かせているのがダニエル・オッテンザマー氏だ。かねてより度々来日していた彼は、2024年のシーズンから大阪フィルハーモニー交響楽団のアーティスト・イン・レジデンスに就任することが決まっている。今後さらに日本国内での活動が増えるであろう彼をこのたびThe Clarinet ONLINEがキャッチ。初の単独インタビューを行ない、音楽観や日本での活動についてありのままを語ってもらった。
端正な顔立ちに190cm近い抜群のスタイルはさながらモデルや俳優のような存在感を放ち、会話の端々からあふれる知性、音楽への真摯なスタンスが顔をのぞかせる彼の魅力は見逃せない!

 

チャンスは自然と……。

改めて、オッテンザマーさんのクラリネット歴、音楽歴を教えてください。
ダニエル・オッテンザマー
(以下 O)
私の家族にとって、音楽はとても大事なものでした。父がクラリネット奏者(※)でしたからね。彼から多くの影響を受けてクラリネットを始めました。私が11歳のころです。ただ、父にクラリネットを習ったということはなくて、後々音楽大学に入ってからも他の先生に習っていました。私にとって父以外の先生に習うということは、とても大事なことですから。
お父さまと同じ楽器・同じ仕事を選んでよかったことや、プレッシャーに感じたことはありますか?
O
良かったことは、何かあったとき、すぐ父に訊けたことですね。助けが必要なときに父はすぐに教えてくれました。学校の先生に会うためには一週間待つこともありますが、父は家にいますから。ずいぶん時間の節約になりました。
プレッシャーを感じたことはありません。私はただクラリネットが好きで、もっとよくなりたい、もっと上手にクラリネットを吹きたいといつも思いながら練習をしていて、将来の目標を定めていたわけではありませんでした。ただそういった動機に従っていたら自然とチャンスが来て、結果として音楽の道に進めたのです。だから、父の存在がプレッシャーとなることはありませんでした。

(編集部註:彼の父は元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者だったエルンスト・オッテンザマー氏。2017年に、惜しまれながら逝去されました)

 

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・それがウィーンの「伝統」
・知る、語る、感じてもらう——
・大フィルとともに
・クラリネット界隈に一石を投じる話
・もっと上手く、もっと楽しく

 

ダニエル・オッテンザマー Daniel Ottensamer
2009年からウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者。デンマークのカール・ニールセン国際コンクールのほか、多くの権威あるコンクールでの受賞経験を誇る。ソリストとして、ロリン・マゼール、グスターボ・ドゥダメル、アンドリス・ネルソンス、ファビオ・ルイージ、ケント・ナガノらの指揮のもと、ウィーン・フィル、ザルツブルク・モーツァルテウム管、N響などと共演を重ねている。また、2021年にはザルツブルク音楽祭にソリストとしてデビューを飾り、マンフレート・ホーネック指揮/カメラータ・ザルツブルクとモーツァルトのクラリネット協奏曲を演奏した。ウィーン・フィルとベルリン・フィルのメンバーで構成され、クラシック、ジャズ、スウィング、フォークミュージックに取り組むアンサンブル“フィルハーモニクス”の創設メンバー。同アンサンブルとは2018年にオーパス・クラシック賞を受賞した。室内楽ではダニエル・バレンボイム、ルノー・カプソン、ミッシャ・マイスキー、ハーゲン・クァルテット、歌手のバーバラ・ボニー、トーマス・ハンプソン、ほかにもボビー・マクファーリンらと共演している。録音も多く、ソロ演奏ではモーツァルトとジャン・フランセのクラリネット協奏曲をソニー・クラシカルからリリース。“フィルハーモニクス”では、ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んでいる。2022年に幼なじみのシュテファン・コンツ(チェロ)、クリストフ・トラクスラー(ピアノ)と組み、あらゆる時代に書かれたクラリネット三重奏曲を取り上げた7枚組のディスク「The Clarinet Trio Anthology」をデッカから発売し、新譜を引っ提げた全12公演のアジア・ツアーを成功させた。2023年には、アダム・フィッシャー指揮/ウィーン・フィルとの共演で、ニールセンのクラリネット協奏曲をソニー・クラシックからリリースした。2024/25年シーズンから、大阪フィルハーモニー交響楽団のアーティスト・イン・レジデンスを務めている。

 
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