中高生のための「クラリネット演奏法」

第26回 総括 その4 〜指のテクニックの訓練〜

指のテクニックを身につけるための基本

クラリネットを吹く前の心構えとして、正しい呼吸法や指を柔軟に動かすために、姿勢をまっすぐにして、できる限り肩の力を抜いて楽器を構えましょう。人それぞれ歯並びや骨格など、あるいは腕の長さなどによって違いはありますが、まっすぐした体に対してだいたい35度から40度くらいの角度で楽器を構えるといいと思います。よく中高生などの生徒が楽器の重みで右手の親指が下がっていたり体が前屈みになっている姿を見かけますが、いつも体と親指はピンと伸ばしていなければなりません。
一番重要なのは右手親指の楽器を支える力です。これには腕の力も必要です。他の指がキィから離れても安定したアンブシュアを保持し、右手親指で楽器(マウスピース)を上の歯に押し上げる感じで、常に一定の力で楽器を支えられるようにしましょう。

写真B


また、このとき第一指骨と第二指骨の間の関節の部分に楽器の指かけをきちんと載せましょう(写真B参照)。他の指の力を抜き、いつでも自由に動ける状態にして指を上げすぎないように注意すること。プロのプレイヤーが右手親指にクラリネットの大きなタコができているのは、いかにその親指の圧力が強いかを証明しています。

指の訓練

結論から言うと、指を正確に速く動かすテクニックを獲得するには、正しい奏法でとにかくたくさん練習することです。しかし、ただ時間をかけて練習すればいいという問題ではなく、より合理的に自分にあった練習方法を見つけることも大切です。
人間の指は動かしやすい指と動きにくい指があります。普通は小指と薬指が弱い傾向にありますが、都合の悪いことにクラリネットの機構上、両手の小指は4つのキィを押さなくてはなりません。この小指を柔軟に動かす練習はたいへん重要です。また、右手小指、薬指、中指などは親指が楽器の重みを支える力が弱いので、初めはなかなか思うように動きません。小指と薬指を柔軟にするために、次の練習をやってみてください。

1.両手小指の訓練のために譜例①を練習してみましょう。最初は遅いテンポで少しずつ速くしていき4分音符で120くらいまでテンポを上げましょう。短い音形ですが、同じ要領で何度も繰り返し練習してください。これは指の敏捷さのためには良い訓練になります。

譜例①

2.左手のスロート音域の人差し指が難しいのは、AとG#のキィは楽器から左手が離れて、宙に浮いてしまうので安定しないためです。この場合はあらかじめ右手か左手の小指でCかB(H)のキィを押さえると安定します。運指の合理的な動きのためには、一度にたくさんの指の運動がなるべく少ないほうがいいわけですから、音質を保つためにもできる限り右手のいくつかの指を押さえる習慣をつかるようにしましょう。この指の練習をしてみましょう(譜例②)。

譜例②
登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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