中高生のための「クラリネット演奏法」

第25回 総括 その3 〜クラリネット吹きの使命〜

スロート音域

喉を締め付けたようなしわがれた音域という意味でしょうか。この音域はもともと出ない音で、管の上のほうに穴(A、レジスターキィ、G♯)を開けて無理に作られた音域です。技術的にも音質的にも難しい音域で、これを丸く響かせて吹くことはクラリネット吹きに与えられた大切な課題といえるでしょう。
ほとんどのトーンホールが開いていて、楽器の管の響く部分が少ないので大変鳴りにくく、音に密度のない音域です。可能な限りキィを押さえて管を響かさなければなりません。音程の問題もあるので、運指表を参考にして良い響きが出せるように、自分なりの運指を工夫してください。最初は全部トーンホールをふさいだ「シ(実音A)」の音から吹き、最小限の指の動きで音をつなげていきましょう(譜例①)。

譜例①(表記は記譜音)

 

この音域が良い響きで鳴ったとき、クラリネットの柔らかく深い音色が聴く人を魅了することができます。
譜例にある全音域の音が、ある程度同音質で出るようになったら、ハ長調とト短調からフラット、シャープ各4つまでの音階の練習をしましょう(下記譜例の「音階の練習」参照)。音階の練習は上がって下がるだけではなく、少なくとも3度の音階やアルペジオ、オクターブなども含みましょう。

音階の練習
3度の練習
アルペジオ
オクターブ
登場するアーティスト
画像

野崎剛史
Takeshi Nozaki

東京芸術大学卒業後、渡仏。パリ市立音楽院にてクラリネットを学ぶ。フランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者ギイ・ダンガン氏に師事。帰国後、東京佼成ウインドオーケストラで演奏活動を続けた。またジャズサックス奏者の坂田明、クラリネット奏者の鈴木良昭、ピアニストのF.R.パネ、谷川賢作らとジャンルを越えた音楽活動も行なった。


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