私の録音楽屋日記

PAGE2「比類なきコミカル・アンサンブル を録る」

2006年5月某日、東京・吉祥寺にあるGOKサウンドスタジオに、一人、また一人とクラリネット奏者が集まってきた。どの顔も有名な一流プレイヤーばかり。これから始まる録音にワクワクする思いで、いやが上にも気持ちが高ぶってくる。今回は、そんな今も記憶に残るクラリネット界伝説のレコーディングについて紹介します。

※内容は2008年発刊当時のものです

昼田純一

Junichi Hiruta

東京工業大学卒業。
(株)オーディオラボ・レコードにて録音ミキサーの重鎮である菅野沖彦氏のもと、主にクラシックとジャズの録音技術を学んだのち、録音エンジニアとしてビクタースタジオに入社。その後同社プロデューサーに転じ、ビクター音楽産業(現ビクターエンタテインメント)、日本コロムビア、トーラスレコード、メルダック(現トライエム)と大手レコードメーカーに24年間在籍。1984年に日本レコード大賞・アルバム大賞受賞。これまでに高橋真梨子、ちあきなおみ、高木麻早、真田広之、小川範子、小野正利、浅香唯などのヴォーカリストや、神山純一(ヒーリング作曲家)、倉本裕基(ピアニスト・作曲家)、川田知子(ヴァイオリニスト)、平野公崇(サックスプレイヤー)などを手掛ける。代表プロデュース作は「桃色吐息」「for you …」「星影の小径」「ミラクル(サンプリング)」「魔女の宅急便」など多数。2003年独立。現在、有限会社ジェイズミュージックにてクラシックからロックまで幅広いプロデュース及びクラシックを中心とした録音やCD・DVD制作を展開中。これまでに、中島啓江、中村誠一(Sax)、クァルテット・エクセルシオ、大政直人(作曲家)、木曽音楽祭、クラリネッテン・カメラーデン、新堀ギター・アンサンブル、など多数制作。現在、中島啓江サウンド・プロデューサーを務めている。4才より母親からピアノの手ほどきを受ける。12才よりクラリネットに転向。音楽大学を目指すが、後に音楽プロデューサーへの道を歩む。 その後スタジオミュージシャンを数年経験。一時楽器を離れるが、アマチュアとして再開。現在市民オーケストラや室内楽で活躍。クラリネットを浜中浩一氏に師事。 日本クラリネット協会常任理事。

TCCPの衝撃的なデビュー

2005年8月、アジア初の国際クラリネットフェストが、多摩センターにあるパルテノン多摩で開催された。クラリネット関連の出し物のみで8日間開催という、とてつもないフェスティバルだった。そのフェスティバルの中で、あるクラリネット・アンサンブルが衝撃的なデビューを飾った。
「十亀・コミカル・クラリネット・フィルハーモニー」、略して「TCCP」というなんとも人を食ったような名前の団体である。リーダーはおなじみ元東京交響楽団 首席クラリネット奏者である十亀正司氏。氏の10年以上という遠大な構想期間により生まれた、世界に比類のない団体である。
当時その演奏を耳にした聴衆は、大胆かつ上質なウィットにあふれた選曲と、日本中の名プレイヤーが集結したという感のある見事なまでのアンサンブルに度肝を抜かれたようである。なにしろあまりの人気から、フェスト期間中にも関わらず、急遽追加公演が組まれるというおまけまでついたのである。たちまち人気者になった彼らのもとには、次の公演やCD発売の問い合わせが殺到。その後、TCCPによるCD発売録音が決まった。

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