クラリネット記事
Cover Story on The Clarinet vol.67

ピエール・ジェニソン Pierre Génisson

ミシェル・アリニョンとフローラン・エオーの薫陶を受けた、エコール・フランセーズの正統を受け継ぐ若き才能が新たに登場した。その名はピエール・ジェニソン。日本で行なわれた第2 回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールを制し、ソロとしてのキャリアを順調に重ねる彼に、昨年来日した際にインタビューを敢行した。



楽器を始めたときからプロになりたかった

ピエール・ジェニソン

─まずはジェニソンさんのプロフィールからお伺いします。ジェニソンさんがクラリネットを始めたのは何歳の時でしたか?
ピエール・ジェニソン(以下P):クラリネットは9歳から始めました。当時、私は南仏のマルセイユに住んでいたので、現地のコンセルヴァトワールに通いました。そして15歳の時にパリのコンセルヴァトワールに進学し、フローラン・エオー氏に学びました。マスタークラスでは毎月ミシェル・アリニョン氏が来ていたので、彼のレッスンも受けていましたね。18歳でパリの音楽院に入学し、2009年までアリニョン氏のクラスで勉強しました。その後アメリカのロサンゼルスにある南カリフォルニア大学に留学し、ヨーダ・ギラードというクラリネッティストに教わりました。

 

─クラリネットを選んだ理由を教えてください。
P:すごくいい質問ですね。最初はピアノをやりたくて、7歳の時にピアノを始めました。姉がプロのピアニストなので、その影響を受けたのです。しかし両親は私にピアノではない楽器もやってほしかったようで、ほかの楽器を選ぶことになりました。ピアノも好きなのでしばらく続けてはいました。その時にメロディを演奏するための楽器がいいなと思い、マルセイユのコンセルヴァトワールに両親と行き、いろんな楽器の音色を聴かせてもらいました。その時に『ピーターと狼』を聴いてクラリネットに魅了され、クラリネットを選ぶことになりました。

 

─お姉様がピアニストなのですね。共演されたことはあるのですか?
P:何年か前に共演しました。共演できたことはとてもよかったのですが、家族で演奏するということは言いすぎてしまったり色々と問題も出てくるので、今は別々でやったほうがいいかなということになっています(笑)。

 

─クラリネットを自分の職業にしようと思ったのはいつ頃でしたか?
P:最初から心に決めていました。初めからクラリネットの音が好きで、とても魅了されていましたし、ずっと続けていきたいと思って今までやってきました。もちろん当時は一般的な子どもの夢として「クラリネット奏者になりたいな」と思っていましたが、マルセイユのコンセルヴァトワールを卒業してパリの音楽院に入った時にはプロフェッショナルになれるという確信を持っていました。

 

ブルターニュ管弦楽団で学んだオーケストラの美しさ

─ パリ音楽院ではどのような指導を受けましたか?
P:フランスの学校ではフランスの音楽を、フランスのスタイルやフランスの音色、フランスの文化も含めて包括的に勉強します。フランス音楽は20世紀に大きな発展を遂げましたが、19世紀以前から受け継がれてきた歴史、文化を勉強しましたね。

 

─ 2007年に若くしてブルターニュ管弦楽団に入団されましたが、その際には何か対策などはされたのですか?
P:もともとオーケストラはそこまでやりたいとは思っていませんでしたし、自分の中で目標ではありませんでした。20歳までは学校のオーケストラで演奏することはありましたが、それ以外でオーケストラを勉強しようと思ったことはありませんでした。だからブルターニュを受ける以前には入団テストを受けたこともありませんでした。当時教わっていたアリニョン先生にはオーケストラから「クラリネット奏者を探しているのだけれど」という連絡が入ることがあります。その連絡を受けた先生はオーケストラに合うかどうかを見極めてもらうために生徒を送るのです。自分がアリニョ ン先生に紹介されて初めて行ったオーケストラがブルターニュだったというわけです。その時にすごくいい印象で、演奏していてとても楽しかったのです。「2 ヶ月後に入団テストがあるけど受けにくるかい?」と誘われました。9月から準備し始めて、アリニョン氏がバカンス中だったのでエオー 氏と何回かレッスンをした上で受けにいき、幸運なことに合格できました。そういう経緯なので、準備したというよりは偶然に、という要素が強かったと思います。

 

続きはThe Clarinet vol.67をご覧ください。

 

ピエール・ジェニソン Pierre Génisson
1986年生まれ。マルセイユ音楽院、国立パリ高等音楽院、南カリフォルニア大学などで学ぶ。2007年にブルターニュ管弦楽団の首席奏者に任命、2010年からはネゼ=セガンの招きを受けてロッテルダム・フィルともソリストとして演奏。2014年に東京で行なわれたジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールで優勝。室内楽奏者、ソリストとしても多忙を極める。


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