The Clarinet 55号 特集

2015年度 全日本吹奏楽コンクール 課題曲徹底攻略

課題曲Ⅲ
秘儀Ⅲ ─ 旋回舞踊のためのヘテロフォニー」
西村 朗 作曲 / 大浦 綾子 解説

作曲家“西村朗”さんを知ろう

今年は日本を代表する作曲家の一人である西村 朗さんが課題曲を書いてくださいました。出来上がった作品を聴くと、期待どおり西村さんらしい芸術性の高い作品になっていると思います。ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、この曲はいわゆる西洋音楽やクラシック音楽のような調性がありフレーズのはっきりした音楽ではないということです。すでに何人かの吹奏楽部顧問の先生から「課題曲IIIは何だか不協和音だらけの曲ですね……」という感想を聞きましたが、そもそもそういう人たちが期待するロマンチックなメロディや和声を持つ曲とはまったく違うカテゴリーの曲ということを理解するところから始めなければなりません。
ではどういう曲なのか? それはまず、西村 朗という作曲家を理解する必要があります。西村さんの曲の手法の特徴は二つ、1.アジア音楽 2.ヘテロフォニー です。
まずアジア音楽というのは、日本の雅楽や、中国、朝鮮、タイ、インドネシア……などのアジア諸国の民族音楽のこと。そしてヘテロフォニーとは、簡単に言うと、一つの旋律を複数の声部が(音程やリズムが)“ずれながら”進行していく手法で、雅楽やガムランなどに見られる音楽です。つまり西村さんは、ヘテロフォニーという手法を用いてアジア民族音楽と吹奏楽とが融合された作品を書き上げたわけです。
どうですか?これを聞くと、「不協和音だらけの曲」ではなく、「西村 朗らしい芸術作品」というのがお分かりいただけたでしょうか? この曲を理解するためにも、ぜひアジア諸国の民族音楽を聴いてみることをお勧めします。インドネシアの舞踊音楽などは、この曲に似た雰囲気を体験できると思います。そして西村 朗の世界に近づくために、『秘儀I —管楽合奏のための』や『秘儀II —7声部の管楽オーケストラと4人の打楽器奏者のための』もぜひ聴いてみてください。
ちなみに“旋回舞踊”とは、無形文化財にもなっているトルコの教団の儀式で、白い衣装を着た踊り子たちがひたすらグルグル回り続け、神との一体化を求めてトランス状態になるという不思議な儀式です。

課題曲Ⅳ
マーチ「プロヴァンスの風」  田坂 直樹 作曲 / 蔭山 晶子 解説

この曲は、スペインの情熱的なフラメンコをイメージさせる曲調で始まります。楽譜上では4拍子ですが、8分音符の3+3+2の形で表現されている箇所が多くあります。バスクラリネットも同じく、リズム感をカッチリと固めに出すようにしてください。低音の場合は遅れてしまいやすいので、一つ一つの音を少し短めに吹き、次の音を発音するタイミングを合わせることを心がけると良いでしょう。
冒頭1小節目と2小節目の1拍目は、リズムが甘くなってしまわないよう、音の輪郭をはっきりさせ、固めに演奏しましょう。2小節目3拍目からの16分音符は、音が始まるのが裏拍からということもあり、滑りやすいです。正確に狙って発音し、急ぎすぎないようにしましょう。 指が回らない時は、速く動かす練習ばかりしていてもなかなか解決しません。落ち着いて演奏できる、ゆっくりのテンポから練習しましょう。 楽譜通りでなく、譜例①のようにいろいろなパターンのリズムで試してみることも効果があります。
そうすると、どの指が苦手なのか癖が見えてきますので、是非一つずつ丁寧に練習してください。
3小節目は3拍目の裏、3つめのアクセントを付けるのが一番難しいです。その部分を前もって予測しておき、瞬間的に息のスピードを上げてアクセントになるよう演奏しましょう。

譜例

課題曲Ⅴ
暁闇の宴  朴 守賢 作曲 / 佐々木 理恵 解説

課題曲Ⅴは強豪団体が演奏するイメージが強いと思いますが、変拍子を克服できると挑戦しやすいかもしれませんね。
取り組んでみると奥が深く、やり甲斐がある曲です。

まずスコアをしっかりと読み込みましょう。
音符が複雑に絡み合っているので自分が演奏するパートだけでなく、他のパートがどのようになっているか把握します。
またほとんどの小節で同じことを演奏しているパートがあるので、チェックしてパート練習や合奏だけでなく、同じ音符を持っているパートが集まって練習すると良いですね。

4小節目はEbクラ、1stクラ、2ndと3rdクラ、アルトとバスクラとまったく違った動きをしています。そのためいきなりパート練習で合わせてみても難しいのでまずは別々で練習します。
特に2ndと3rdクラの一拍目は3連符の3つ目の拍に32分音符が入ります。そしてその音符を演奏するパートが他にないので重要になります。5小節目の1stと2ndクラの7連符は何か7文字の言葉を当てはめて演奏するといいですよ。

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