クラリネット記事
クラリネットは、豊富な倍音が出せる楽器であり、表現力が一番可能な楽器

ビル・ジャクソン The Clarinet vol.61 Cover Story

19歳でオーケストラ奏者となり、以来ピッツバーグ交響楽団、コロラド交響楽団の首席奏者を歴任したビル・ジャクソン氏。ジャズの演奏にも長けている彼は、大学時代までクラシック奏者になるべきか、ジャズ奏者になるべきか悩んだといいます。

 

取材協力:ドルチェ楽器 通訳:早瀬圭一 写真:土居政則

 

自分の求める音色のためにありとあらうるテクニックを身につける

“ビル・ジャクソン”

──クラシック奏者になるか、ジャズ奏者になるか決めたのはいつですか?

ビル・ジャクソン:大学時代ですね。インターロケンで勉強していたときは、学校のオーケストラにも参加していました。そのときにクリーブランド管弦楽団の首席奏者だったロバート・マルセリス先生が、ノースウェスタン大学に指導に来ており、大学とわりと近かったインターロケンにも時々教えに来ていました。そのころのロバートは病気のためにすでにクラリネットを吹くことができなかったので指揮の指導でインターロケンに来ていましたが。私のクラリネットの音を聴いてくれたロバートがノースウェスタン大学に進学することを強く薦めてくれたんです。
とはいえ、ノースウェスタンに行ったころはジャズもクラシックも両方やっていました。ロバートはクラシックをしっかりと私に勉強してほしかったので、私がジャズをやることを反対していました。
私はクラリネット、サックス、フルートの3つの楽器を吹くことができたので、ロサンジェルスからオファーがあり、クラシックを選ぶべきか、ジャズを選ぶべきか迷っていたときに、クラシックの仕事を得ることができたので、その道に進みました。

──ジャクソンさんにとってクラリネット とは?

ジャクソン:Musician playing the clarinet と呼ばれたいですね。クラリネット奏者ではなく、音楽家と。 私自身はクラリネットというのは、豊富な倍音が出せる楽器であり、表現力が一番可能な楽器だと思います。

 

Concert Report ビル・ジャクソン クラリネットリサイタル
バックーンモデルを身体の一部のように操った圧巻の演奏

11/16(水)アーティストサロン“Dolce”
[出演]ビル・ジャクソン(Cl)、蒲生祥子(Pf)
[曲目]ドビュッシー:第一狂詩曲、ブラームス:ソナタ 変ホ長調 作品120-2、ロッシーニ:序奏、主題と変奏、
バーンスタイン:ソナタ、ウェーバー:幻想曲とロンド 作品34、(アンコール) ガーシュウィン:プレリュード

リサイタルの冒頭は、バックーン・クラリネットの日本輸入総代理店である株式会社ドルチェ楽器の安川透社長によるビル・ジャクソン氏とバックーン・クラリネットの紹介挨拶からスタート。それに呼び込まれる形でビル・ジャクソン氏と伴奏のピアニスト蒲生祥子氏がステージに登場した。
オープニングはドビュッシー『第一狂詩曲』で優雅に幕を開ける。曲が進むにつれ鮮やかなテクニックが徐々に顔を出し始めると、オーディエンスは早くも驚きの表情を浮かべ、演奏に引き込まれていく。
続くブラームス『ソナタ 変ホ長調 作品120-2』はメランコリックなメロディを情感豊かに歌い上げ、愛用の楽器である管体の素材がココボロでキィにはローズゴールドのメッキが施された美麗なバックーンモデルのふくよかで輝かしい音色の魅力も存分にアピールした。
休憩を挟んだ後半の1 曲目はロッシーニ『序奏、主題と変奏』。軽快な曲調の中で速いパッセージが続く場面も淀みなくこなし、ラストには超絶テクニックを惜しげもなく発揮したカデンツァを披露し大喝采を受ける。
その後、バーンスタイン『ソナタ』では緩急自在にダイナミックな表現を見せつけ、本編ラストとなるウェーバー『幻想曲とロンド 作品34』を情熱的に奏でて締めくくる。大きなアンコールを受けて再びステージに登場したビル・ジャクソン氏はオーディエンスや関係者への謝意を述べ、ガーシュウィン『プレリュード』を自由奔放な激しいプレイで披露し、また違った一面を覗かせた。来日に同行していたバックーン社の社長で設計者でもあるモーリー・バックーン氏も最前列で鑑賞し、聴衆と同様に満足気な笑顔を浮かべていたのも印象的だった。

(インタビュー全文はThe Clarinet 61号に掲載しています)

 

ビル・ジャクソン│Bil Jackson
インターロケンアカデミーを修了とともに、卒業時には特別に優れた生徒に与えられるゴールドメダルを授与。その後、ノースウェスタン大学のロバート・マルセリス氏に師事し、プラハの春コンクールにてファイナリストに選ばれる。ソロ、オーケストラそして室内楽と幅広い分野で、第一線として活躍している多彩なクラリネット奏者である。これまでにピッツバーグ交響楽団、コロラド交響楽団やホノルル交響楽団の首席奏者を勤め、セントルイス交響楽団、シンシナティ交響楽団の客演首席として演奏。室内楽奏者としてもこれまでにデイヴィッド・シフリンなどの著名な演奏家と共演。数多くの音楽祭にも招待を受ける。これまでにテキサス大学、コロラド大学、デュケイン大学などで指揮にあたった。現在、アスペン音楽祭にて指導にあたるほか、アメリカ・テネシー集のヴァンダーヴィルド大学ブレア音楽院にて教授を務める。



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