クラリネット記事
The Clarinet vol.74 Cover Story│エディ・ダニエルズ

自由な吹奏感を求め続け、自身が納得できるエディ・ダニエルズモデルのリガチャーが完成!

「ジャズクラリネット界は彼なしでは語れない」と言っても過言ではない、ジャズクラリネット界の巨匠であるエディ・ダニエルズ氏が2回目の登場です。15歳でニューポート・ジャズフェスティヴァルに出演し、1989年にはアルバム「メモズ・フロム・パラダイス」でグラミー賞を受賞した同氏は、クラシック曲をジャズ風にアレンジしたヴィヴァルディ『四季』や、ロンドン交響楽団との共演を果たしクラシックとジャズを融合させたアルバム「Breakthrough」をリリースするなど、ジャズに限らず素晴らしいクラシックの演奏に多くのファンを持つプレイヤーです。
そんな彼が監修したエディ・ダニエルズ《エクスプレッションズ》リガチャーが日本初上陸! 今回は、コロナ禍での生活や、最新リガチャーについて語ってもらいました。また、このリガチャーを開発したデイヴ・ノックス氏にも登場いただきます。
取材協力:ブレーン株式会社、インタビュア:土井徳浩(ジャズ・クラリネット奏者)、通訳:井上知香(サックス奏者)

レール間の溝=エア・チャンネル

エディさんが監修されたエディ・ダニエルズ《エクスプレッションズ》リガチャーが日本で販売されます。このリガチャーの開発に携わった経緯を教えてください。
Eddie Daniels
(以下Eddie)
楽器を手にした時、本体にマウスピース、リード、リガチャーの順につけていくと思うんだけど、なぜか、みんなリガチャーへの関心が薄いことに気がつきました。リードやマウスピースは替えたがるのにね。リードとマウスピースを留める大事な役割があり、音色の変化にも大いに左右するリガチャーは、ただ“留める”のではなく、どうやって留められているのかが重要なのです。
よく昔から「(リガチャーなしで)親指でリードを押さえた時が一番いい音がする」と言われていました。どうやったらその親指と同等の感覚のリガチャーが作れるのだろうとずっと考えていたんです。
長年たくさんのリガチャーを試してきて(リガチャーの開発者でありBanddirector.comの)Dave Knoxが、いろいろなサンプルを送ってくれるようになりました。形状の異なるもの、様々なレールのデザインが使われているものなどね。リガチャーは時にリードを締め付け、自由さを奪います。しかし、Daveと私は自由(Free)な吹奏感を求め続けました。
Dave Knox
(以下Dave)
Eddieの素晴らしいところは、Eddie Danielsという音楽家として確固たる地位にいる人であるにもかかわらず、常にいいもの、素晴らしいものを追い求めていることです。有名になると、よりこだわりが強くなったり、あまり新しいものには手を出さなくなります。そういう意味でEddieは、私が昔から好きだったプレイヤーでしたし(私は25年前のCDも持っています!)、そういう存在の彼が私の開発したリガチャーを試奏してくれることは大変光栄なことでした。私はリガチャー開発のアイデアが豊富にあり、このEddie Danielsモデルの構想を引き出しの中に10年ほど眠らせていました。そして、ある時Eddieが連絡してきて「これ作ったの君!?」と言ってきたんです。
Eddie
自分の部屋にこもって様々な組み合わせのリガチャーやマウスピースを吹いていると、本当に一組一組の吹奏感が違うんだよ。
土井徳浩
(以下土井)
もちろん部屋によって響きも変わります。自分の部屋とコンサートホールなどでは違いますよね。
Eddie
もちろんそう。Richard“Dick” Waller(シンシナティ交響楽団)は、お客さんが客席に座る30分前にホールでセッティングの確認をすると言っていたことがあります。控え室で吹いてウォームアップして万全に整えても、ホールでの響きは違うものです。湿度や温度の変化もあるしね。
このリガチャーは、ゴールド、カーボンファイバー、ブルーの3種類をラインナップしていますね。それぞれの特徴を教えてください。
Dave
ゴールドは重く、リードをしっかりとホールドします。リードの木目感も感じられ、程よい抵抗感があります。また、柔らかいリードを付けたとき、さほど柔らかいと感じないかもしれません。ゴールドプレーテッドアルミニウム製です。
カーボンファイバーは、ゴールドに比べて柔らかい素材です。リードを自由に振動させることができます。
ブルーはアルミニウム製。本来、スチューデントモデルまたはビギナーズモデルとして考えていましたが、その枠に収まらないほどの仕上がりです。価格も割安。若いプレイヤーはブルーから始めて、次にゴールドやカーボンファイバーを試すことをオススメします。
私は今までクラリネット奏者であるDaniel Bonadeが製作するメタル製リガチャーが理想的だと思っていました。リードに接する部分がレール形状で、リードを押さえつけにくい構造になっています。一方、Eddie Danielモデルはレールとブロックが一体となっており、レールの外側(リードとの接触面)に角度をつけています。

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・簡単で吹きやすい楽器が理想
・ゆっくり、そして繰り返すこと

エディ・ダニエルズ Eddie Daniels
1941年10月19日生まれ。米・ニューヨーク出身のジャズ・クラリネット奏者。サックス奏者、作曲家としても活動している。10代のころフランク・シナトラのような歌手の伴奏をする演奏家に惹かれてジャズに興味を持つ。15歳でニューポート・ジャズフェスティヴァルの青少年コンテスト部門に出演。その後、サド・ジョーンズほか様々なアーティストとの共演やバンドのツアーや録音に参加。1980年代以降はクラリネットに注力し、89年に『メモズ・フロム・パラダイス』でグラミー賞を受賞。日本人では日野皓正や菊地雅章らとの録音があり、91年に来日も果たす。2020年に、2018年の『ハート・オブ・ブラジル』に続くトリビュート作『ナイト・キッシーズ』をリリースするなど、ジャズ・クラリネット奏者として確固たる地位を築く。

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