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Special Interview & Report
瀧本実里✕ヤマハ イデアル
2019年の1年間だけで、3つのコンクールで優勝を飾った瀧本実里さん。いま最も注目を集める若手フルーティストだ。愛用する楽器はヤマハのハンドメイドフルート、イデアル。そんなイデアルについてもあらためて聞くとともに、彼女の楽器と演奏活動を支えるリペアマンとのかかわりについてもレポートする。
“絶対に同じことを言われない”努力
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自分自身に対して、客観性が持てるようになった?
瀧本
当時、先生(工藤重典氏)が日本とフランスを行き来されていて、レッスンが不定期で、回数もあまり多いほうではなかったんです。そんなとき、ヴァイオリニストの千住真理子さんのインタビューをたまたまテレビで見て。千佳さんのかつての先生がやはりとても忙しい方で、そのとき「レッスンでは先生に二度と同じことを言わせないようにしよう」と心に決めていた、と。それを聞いて、私もそうしなければ、と思ったんです。レッスンで前のときと同じことを言われるようでは、先に進めない。それで、レッスンは必ず録音して何度も聞き返し、“絶対に同じことを言われない”ように努力しました。それが少しずつ実を結んだのかな、と思います。
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それはものすごい気づきと進歩ですね。
瀧本
あとは実際コンクールを受けてみて、「こんなに人数がいるんだ、しかも同年代だけで………」とわかり、残っていくためには並大抵の努力じゃ無理だと思ったことも大きいですね。
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高校では進学コースにいて、高3のときに工藤重典さんのマスタークラスを受けたことがきっかけで音大受験を決めたそうですね。当時のエピソードを聞かせてください。
瀧本
小中学校では部活がメインだったので、音楽は本当に習い事程度にしかやっていなかったんです。音大に行こうか一般大学に行こうか迷って、やっぱり音楽はやめようと考えていました。でも最後の記念に工藤先生のマスタークラスを受けに行ってみようと思ったんですよね。それが高3の夏休みで、そこで先生が「もし来るんだったら教えてあげるよ」と言ってくださって。それで最終的に東京音大を受けようと決めました。
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初めて工藤さんのマスタークラスを受けたときに印象的だったことは?
瀧本
当時は、身につけてしまっていた悪い癖などを直すのがメインのようなレッスンでしたから、ほとんど音楽的なことを教わるような感じではなかったと思います。
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当時から才能の片鱗が伺われたのかな……なんて思ったのですが。
瀧本
どうでしょうか。1、2年生の頃の私は、ほとんど先生の記憶に残ってはいないんじゃないかと思います(笑)。だいぶ芽が出るのが遅かったんですよ。
繊細さと大胆さ、どちらも兼ね備えていること
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いま使用されている楽器は、ヤマハのイデアルですね。
瀧本
よりクリアな音が出したいということと、大きな会場で演奏する機会も出てきて、遠くまで音を届かせたいと思うようになったんです。イデアルを吹いてみたら、その要望を満たしてくれる音が出せて。それですぐに使い始めました。抵抗なく音が出せるので、自然な力の入れ具合で吹けるところが気に入っています。
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コンクールに向けた調整というのは特にしないそうですが、コンクールのあるなしにかかわらず、普段からどんな調整をどのくらいのスパンでされていますか?
瀧本
バランス調整を半年に1度くらいの頻度でお願いしています。違和感に敏感な方は、狂いにすぐ気がついて頻繁に調整が必要だったりするそうですが、私は大きな演奏機会の1ヶ月前くらいからは必要がなければあまり弄りたくないタイプなので、回数は割と少なめだと思います。
でも自分が思うように演奏ができなければ何度も通うことになると思うので、そうならないのはリペアをしてくださる方の腕あってのことですね。本当にありがたいことだと思っています。
でも自分が思うように演奏ができなければ何度も通うことになると思うので、そうならないのはリペアをしてくださる方の腕あってのことですね。本当にありがたいことだと思っています。
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また調整の際に、リペア担当の方に要望を出されたり、音づくりなどに関して相談されることはありますか?
瀧本
指の力が弱いので、バネの力を調整していただいたり、苦手意識のある低音がちゃんと鳴るようにしていただきました。
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東京音コン、日本音コンとも、予選・本選を通してバッハやモーツァルトから現代曲まで、また無伴奏からコンチェルトまでと幅広い課題曲が出されていました。そのすべてに対応するために、楽器に求めることは何ですか?
瀧本
繊細さや大胆さ、そのどちらも兼ね備えていなければ様々な楽曲に対応することは難しくなってくると思います。期間も長いので、ストレスなく演奏できることも必要な要素です。イデアルはそのすべてに応えてくれる、素晴らしい楽器だと思います。
(THE FLUTE172号インタビューを再編・加筆)
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