THE FLUTE vol.174 フルートで奏でるフィギュアスケートの世界

「フィギュアの音楽、その素晴らしき世界」

フィギュアスケートとその音楽の世界をこよなく愛し、 フィギュアをテーマにしたコンサートなども企画しているフルーティスト、 門井のぞみさんと大和田真由さん。ピアニストの田仲なつきさんも 加わったユニット「kokoro-Ne」として、活動しています。 フルートで奏でるフィギュアの音楽なら、やっぱりこの人たちに聞いてみるべき !
……ということで、今回はkokoro-Neの3人によるレッスンをお送りします。 レッスンの前に、まずは3人のフィギュア愛、そして氷上の音楽の 醍醐味を座談会形式で語っていただきました。

kokoro-Ne

2007年結成当初より、クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。メンバーは門井のぞみ (FI/写真左)、大和田 真由 (FI/右下)、田仲なつき (Pf/右上)。

 

好きなスケーター&印象に残った演技

門井’s choice 
● 高橋大輔、鈴木明子
● 2014年 グランプリファイナルFS エリザヴェータ・トゥクタミシェワ 「バットワニス・ビーク/サンドストーム」。正直、それまではトゥクタミシェワさんのことよく知らなかったんですが、あのエキゾチックな雰囲気とプログラムがドンピシャで引き込まれました。そしてなんと言っても動きのしなやかさと、ジャンプのキレ味。後半のステップでの音楽との混ざり方が忘れられません。この時のSP「ボレロ」も素晴らしかった!

大和田’s choice
● ジェイソン・ブラウン、パパダキス&シゼロン
● 印象に残った演技 …うーん、いっぱいあり過ぎて。2005年全日本選手権 村主章枝FS「ピアノ協奏曲第2番」ラフマニノフ。トリノ出場がかかった気迫、本人が音楽を奏でているような表現力と超高速スピンは今でも忘れられません。2017年世界選手権 カッペリーニ&ラノッテFD「チャップリンメドレー」チャーリー・チャップリン。コミカルな演技をしながらも、きちんと要素をこなしていて、素敵な絵本を1冊読んだような気持ちになりました。

田仲’s choice
● 浅田真央、高橋大輔
● 2014年ソチオリンピック 浅田真央 FS「ピアノ協奏曲第2番」ラフマニノフ。やっぱりこれは外せない! 伝説の名演技だと思います。音が鳴り出す前の、観客まで息をのむ静けさと緊張感、覚悟を決めた真央ちゃんの凛とした佇まいだけで号泣していました。あんなに手に汗握って見た演技はないです。一生忘れません!

“神の領域”に号泣、 ストーリーを感じさせる 演技の素晴らしさ

田仲
フィギュア、たまんないよね。
門井
いつもテレビの前で正座してみてるもん。
大和田
CMの最中にお皿拭いたりしてね。
門井
え、私は子どもたちに邪魔されるの嫌だから、リアルタイムでは観てないよ。録画して夜中にこっそり観るの。あとね、採点時間とか待てないんだよね~。録画で飛ばす!
田仲
いやいや、結果が気になっちゃって無理無理。
大和田
チケットさえ取れれば現地で観たいくらいだもん。
門井
先にニュースとかで結果が流れそうになったら、耳も目も閉じるの(笑)パタッとね。 (※kokoro-Neグループ Lineに大和田・田仲がうっかりリアルタイム速報で盛り上がると門井に激怒されます(笑)。)
田仲
みんな今までで印象に残ってる演技ってある?
大和田
そんな雑な質問されたらこのページに入り切らないよ(笑)。
門井
(爆笑)確かに~!
田仲
じゃあじゃあ、厳選して……私はやっぱり2014年のソチ五輪の浅田真央さん。フリーの演技は今でも目に焼き付いてるよ。音が鳴るまでのあの静けさ。あの人数が見守るなか、あんな緊張感のある静寂ってそうそうないよね。そこからのパーフェクトな演技。プレッシャーとの闘いを越えた神の領域だと思った…止まらないわ(笑)。
門井
あれは号泣したよねー!!それこそリアルタイムが真夜中だったから誰にも邪魔されず、TVの前に正座で号泣したわ。演技見てあんなに泣いたの初めてだったよ。
大和田
ジェイソン*1の『ピアノレッスン』。彼のコレオとかステップは、レベル4じゃ足りないと常に思ってるんだけど、それを織田くん*2が解説で言ってた時に勝手にテレビに向かって会話に入ったわ(笑)。
田仲
あぁ……痺れたね。切ないというか、急にモノクロの世界に連れて行かれた気分になって……世界観に吸い込まれた。
門井
私は大ちゃん*3かな。記憶に新しいところだと、この前の全日本選手権。これでもうシングルは引退しちゃうのか~と思うと……。そして音楽が鳴る直前の眼光の鋭さとか、ホントさすがだと思った! 空気感を作る、観客を引き込むっていうのがね。さすがレジェンドだね!!それから大ちゃんのステップ!
田仲
あのステップは凄いよね! 初めてステップってカッコいいんだって気付かせてくれた選手。あのリズムの中での首回し、普通の人が真似したら病院送りよね……。
大和田
曲を表現するどころか、逆にこれといったメロも起伏もない曲に、ストーリーを感じさせてしまう演技とかね。バンクーバーからソチの間は、そういう面も神がかってたと思う。

「フィギュア」の名前に ふさわしいコンサートを

門井
私たちもフィギュア使用曲に限定したコンサートを2回やったけど、やっぱりお客様には喜んでいただけた印象があるね。
田仲
そうだね! 競技中の冬にやってるっていうのもあるけど、MCなんかでも盛り上がれるしね。
大和田
だからアンケートで「面白かったです。笑」て書かれちゃうんだよ。演奏の中身じゃないの。感想が(笑)。
田仲
スケートファンの皆様にも満足してもらえるようにって、編曲も選曲も厳選したしね。
大和田
「フィギュア」の名前をお借りするに値するか、ってのは考えたよね。ピアソラばっかり、クラシックばっかり、てなると別にフィギュアじゃなくていい、というかkokoro-Neでやらなくていいじゃん……てなるからね。
門井
あ~、私たちの夢は、一度でいいからkokoro-Neの演奏でスケーターに踊ってもらいたいね。子どもたち、今からスケート教室入れてみるか!!
田仲
その手があったか(笑)。もう発表会レベルでいいからリンクで聴きたーい!!
門井
まあ、そんな夢を持つのも良いよね~。ところでさ、選手の皆さまの技術と演技力の向上って、すごいと思わない?15歳で4回転とか跳んじゃうんだよ!
田仲
ほんと……毎年毎年回転数も上げてきてるし、技もどこまで上がっていくのか。そして芸術的。衣装も凝ってるし。
大和田
んー、どうしても音楽家の立場で観ちゃうからね、正直なこと言うと、回転数のupで助走が長くなったり、技の繋ぎで密度が薄くなるほうが気になっちゃうんだよね。その時間は音楽が入ってこなくなる感じで。そういう点では、ほとんど助走なしでカウンターから3A(トリプルアクセル)を跳ぶ羽生結弦選手みたいな感じの進化が観てて楽しいかなぁ。もっと言うと、アイスダンス好きなんだけど(笑)。
田仲
アイスダンス、日本ではあまり……だよね。でもさ、大ちゃんが転向したから地上波でもニュースでも、もっともっと取り上げてくれるんじゃないかな!
門井
これからも、フィギュアスケートの大ファントリオとして、またコンサートやりましょう!

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〈第1回〉映画『ラヴェンダーの咲く庭で』より「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー」
〈第2回〉「愛の讃歌」
〈第3回〉「View of Silence」「Asian Dream Song」
〈第4回〉「ブエノスアイレスの冬」

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