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第4回 |「ブエノスアイレスの冬」

kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

​皆さま、こんにちは!2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。今回は、「ブエノス アイレスの冬」を取り上げます。

『ブエノスアイレスの四季』より「ブエノスアイレスの冬」

1965年にまず「夏」を作曲(南半球は1年が夏から始まる)。ピアソラは当初「四季」にする予定はなかったが後に「秋」「冬」「春」が書かれた。冬らしく重たい雰囲気の中でもメロディは美しく情熱的で、終盤には雪が溶けて、春の日射しが差し込むような穏やかさで締めくくられる。

ピアソラ

タンゴの奇才とフィギュアスケート

のぞみ(以下:の)「ピアソラの曲は情熱的で、しかも哀愁あって、日本人にも馴染みやすい旋律だよね。」
なつき(以下:な)​「お客さんウケも良いしね。【ブエノスアイレスの四季】以外にも【鮫】【アディオス・ ノニーノ】あともちろん【リベルタンゴ】とか…ピアソラの曲はフィギュアで良く使われるよね。」
まゆ(以下:ま)「演奏会でもよく聴くよね。ゆったりした曲調とピリッとスパイスの効いた部分が両方あるからメリハリつくしね。重宝するよね。」
:​「どの曲もいい意味でピアソラ色が出るからフィギュアでも世界観も作りやすいのかもね。」
:「でも基本的にバンドネオンやヴァイオリンのフレーズって、フルートで演奏するにはニュアンスや運指は 難しい。」
:「こういうのね、音引っかかるわ、指やりにくいわ。私無理!笑」
:​「でも、こういうフレーズがあるからフィギュアのステップでゾクゾクしちゃうんだよね~」
:「よし、こういうのは全部のぞみに任せよう!」
:「こら!」

kokoro-Neメンバー×フィギュアスケート

門井のぞみ
【担当】フルート、ピッコロ
【好きなスケーター】高橋大輔、ネイサン・チェン
【ピアソラの曲を使用した好きなプログラムは?】​キム・ヨナ 2013-14 FS 「アディオス・ノニーノ」色白の肌に黒い衣装、そして真っ赤な口紅が色っぽかった(←おじさんみたいだけど。笑)滑りも表現も妖艶で素敵。

 

大和田真由
【担当】​フルート、アルトフルート、作編曲
【好きなスケーター】​ジェイソン・ブラウン、パパダキス&シゼロン
【ピアソラの曲を使用した好きなプログラムは?】パパダキス&シゼロン 2018-19 SD「オブリヴィオン」これについては次回!

 

田仲なつき
【担当】ピアノ
【好きなスケーター​】浅田真央、高橋大輔
【ピアソラの曲を使用した好きなプログラムは?】エフゲニア・メドベデワ2018-2019FS「ムムーキ」~「リベルタンゴ」かわいい…色っぽい…瞳に吸い込まれそうで…たまりません。

「ブエノスアイレスの冬」をkokoro-Ne的に解説

この曲は元々ゆったり美しいメロディと躍動感溢れるパーツが交互に現れ、目まぐるしく展開する曲です。競技で使用されているのはその中のごく一部で、他の曲がMixされていたりします。今回は高橋大輔選手と宮原知子選手のプログラムにスポットをあてたいと思います。

ピアソラ

【高橋大輔選手2010-11FS】
ピアノのカデンツァから始まる斬新な編集。

『ブエノスアイレスの春』に変わり、踊るような美しいステップワークに

アイスショーで観たとき、ヘンなオジサンでも出たのかと思うような悲鳴に近い歓声が起きてました。笑それくらい、演技開始と同時にプログラムの世界観へ会場を引き込んで支配するような表現力。曲に合わせて滑っているというより、演技しながら本人が演奏もしてるように見えてしまいます。ジャンプ前もあからさまな助走に見せない表現だったり、2011-12のSP『イン・ザ・ガーデン・オブ・ソウルズ』やFS『ブルース・フォー・クルック』みたいな特にメロらしいメロも起伏もあまりないような曲まで世界観を作ってしまうのがお見事です。
実は『ブエノスアイレスの冬』が使用されているのは実は冒頭の一部分。演技開始1分ちょっとで『ブエノスアイレスの春』に変わってしまいます。
ですが、「~春」に入ってから氷上でダンスを踊るような美しいステップワークが拝めます。手足がタンゴのアクセントに細かく合っていて、キレも抜群。

【宮原知子選手2018-19FS】

もともと丁寧な演技が好きだったけれど、2017年の怪我で休んだ時に「ジャンプ以外の面を磨いた」と言っていた通り、手足の使い方なんかはもう凄みが増した感じです。平昌五輪をかけた2017年の全日本のSPを会場で観ましたが、瞬間瞬間で手足が数センチ伸びているように見えるくらい美しい表現力でした!
宮原選手のプログラムも緊張感たっぷりのピアノで始まるプログラム。演技序盤の3サルコーや3ルッツ+3トゥループなどを引き立てています。ですが、この部分、実は同じくピアソラの『アディオス・ノニーノ』をピアノアレンジした音源が使用されてます。

演技開始45秒後頃にやっと『ブエノスアイレスの冬』に入ります。アップテンポの部分での両回転スピンも見所です。

左回転から間髪入れずにに右回転に入ります。(興味があれば左回り数回→即右回り、試してみてください。絶対無理です(笑)。元々左利きでみんなと違う方向に回転していて、そこから右回転も習得したためにできる凄技だそうです。そういった宮原選手の真面目さも素敵なところです。

ゆったりとした部分でもタンゴのリズムとステップの融合、上半身の動きまで、宮原選手らしい丁寧さに力強さも加わって何度見ても飽きません。

演技後半過ぎから『AdiosNonino』
『ブエノスアイレスの夏』
ヴィヴァルディ『四季』より「冬」

3曲がMixされて交互に出てくる目まぐるしい編集とともに、連続ジャンプやスピンの山場となります。「冬」は本来f-mollですが、a-mollに音が上がっているのと速度が上がっているので、原曲から回転数を上げて同じくa-mollのブエノスアイレスの夏と違和感少なく繋がるように工夫されているようです。

 

音源の編集としては、他の曲をまぜたり、継ぎ接いでいない島田高志郎選手の2018-19FSが好きです。キスクラ(※1)に登場するランビエール(※2)先生にも萌えます(笑)。


島田高志郎選手とランビエールコーチ
※1 キスクラ(キス・アンド・クライ)
採点結果の発表を待つために、スケートリンク脇に設置された小さなスペース。歓喜のキスや悲しみの涙を流すことが由来とされています。

※2 ステファン・ランビエール
スイスのフィギュアスケート選手(男子シングル)。2006年トリノオリンピック銀メダリスト。世界一と評されたスピンと、男子シングル史上初の演技構成点で9点台を出した高い芸術性で世界中のファンを魅了したスケーター。現在はプロスケーターとしてアイスショーなどで活躍する側、振付師、「イケメンコーチ」として注目を集めている。

 

この2曲にまつわる思い出

:「アレンジ完成まで、結構かかったね」
:「ピアノも音域でかなり悩んでやり直してたね。フルートもかな?」
:「フルートとアルトフルートの音色の違いをどう活かすかとかね。」
:「トリオでバンドの重厚感を再現するのが難しかった。」
:「ピアソラバンドの曲をわざわざフルートとピアノで演奏する意味が見出せるようなアレンジじゃないとね。」
:「そこ大事」
:「アレンジ完成してもテンポでも苦悩したっけね」
:「でも、これだ!って決まってからは迷いなく、全​員で気持ちが乗る演奏が出来るようになったよね」
:「でた!自画自賛トリオだわ。笑」
:「私、YouTubeすごいみてるよ。ココロネの演奏好きなんだもん。笑」
:「やめて。笑」

フルートの楽譜

フルートとアルトフルート(または2本のフルート)ピアノの為の『ブエノスアイレスの四季』より「ブエノスアイレスの冬」/A.ピアソラ

InviernoPorteño
forFlute,AltoFlute(or2Flutes)andPiano/AstorPiazzolla
12月下旬にkokoroneshopより発売開始予定です!!

 

kokoro-Neの楽譜・CDは「kokoroneshop」でお求め頂けます。

 

参考動画 「ブエノスアイレスの冬 / A. Piazzolla」

演奏のポイント

● 1st FLUTE
アップテンポな部分や伴奏はしっかりテンポキープ、ゆったりしたメロディは巻いたりレイドバックしたり、メリハリをつけて譜割り通りから一歩進んだ表現を楽しんでください。指・発音など難しいところは頑張って練習しましょう!笑(のぞみ)

● 2nd FLUTE 
場面転換でのテンポ設定がとても大事です。rit.やaccel.など全てのテンポの変化含めて大きな1曲の流れを作るとより情景が伝わる演奏になると思います。アルトをお持ちの方はスリリングな持ち替えもお楽しみ下さい。​笑(まゆ)

● Piano
イントロは歌い上げてテンポがあまりにも崩れると、次の展開が霞むので、あくまでも情景的に弾くと効果的だと思います。各所のテンポチェンジは思い切ってください。左手に出てくる四分音符の連続は、鼓動のように。ウッドベースのピツィカートをイメージして弾くといいかもしれません。(なつき)

次回予告

さて【フルートで彩るフィギュアスケートの世界】第4回、お楽しみ頂けましたでしょうか。次回の2月号もピアソラの「オブリビオン(忘却)」についてご紹介する予定です。それではまたお会いしましょう!

 

Profile

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「kokoro-Ne/ココロネ」
・2013年「コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「Microcosmos」同収録のオリジナル曲「ミクロコスモス」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「kokoro-Ne Library」を立ち上げ、これまでに10作品を超える楽譜を発表。続々と新作発 表を控えている。
kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/

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